大切な親が亡くなったときには、悲しみのあまり、身の回りのことが手につかなくなってしまうこともあるでしょう。しかし、そんな状況をよそに、さまざまな手続きが待ちうけています。なかには期限つきの手続きもあるため、悲しみを抱えたまま不慣れな手続きをする必要に迫られる状況になってしまうこともあるでしょう。
本記事では、親が亡くなったらすることを時系列にそって解説しています。また、税金や相続に関する手続きや、準備しておいたほうがよいことも説明しています。
「親が亡くなってどのような手続きをすればよいかわからない」「将来に備えて今からできる準備をしておきたい」という方には、本記事がきっと参考になるはずです。ぜひ最後までお読みください。
目次
親が亡くなったらすること一覧
親が亡くなったときにしなければならない手続きは多岐にわたります。主な手続きのタイミングと内容について以下にまとめているので確認してください。
タイミング | 内容 |
当日中 |
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1週間以内 |
|
2週間以内 |
|
1ヵ月以内 |
|
以下で詳しく解説していきます。
親が亡くなったらすぐにすること:当日中
親が亡くなった直後は落ち着かない時間が続きますが、すぐにしなければならない手続きがあります。当日中に必要な手続きは以下の4点です。
- 死亡診断書の受け取り
- 近親者への連絡
- 葬儀社の選定と打ち合わせ
- 遺体の安置
ひとつずつ見ていきましょう。
死亡診断書の受け取り
死亡診断書は、人が亡くなったことを医学的・法律的に証明する大切な書類で、死亡確認後、医師が作成します。書類を受け取ったら、氏名や生年月日、死因などを確認しましょう。持病がない、死因が不明、突然死や事故死などの場合は死体検案書が作成されます。
死亡診断書は、死亡届の提出や火葬許可書の受け取りのために役所に提出します。また、保険請求のような手続きにも必要になります。複数枚コピーをとっておくとよいでしょう。
近親者への連絡
親が亡くなった際は、近親者や故人と縁深かった人へ速やかに連絡を取ります。葬儀やお墓について相談が必要な場合もあるため、連絡すべき人をリストアップし優先順位をつけて連絡するようにします。
伝え方は電話やメールなど、相手にあった方法を選びましょう。まだ気持ちの整理がついていない段階です。死亡の事実を伝える際は難しく考えずに簡潔に伝えるだけでかまいません。遠方の親戚には、葬儀の際の交通手段も確認できると、その後の調整がスムーズです。
職場や職属していたコミュニティにも連絡が必要な場合もありますが、葬儀の予定が決定してから、訃報の連絡と葬儀の予定をまとめて連絡するのもひとつの方法です。
葬儀社の選定と打ち合わせ
葬儀社は遺体の安置や葬儀の準備や進行など、諸々の手配をしてくれます。病院や介護施設で亡くなった場合は、施設で提携していることもありますが、親の生前の希望があれば、それに沿った葬儀社を選びましょう。費用の目安や宗派、葬儀のプランなど、希望に沿った葬儀をできる業者を選べるとよいですが、当日は慌ただしくなるため、生前から決めておくのもひとつの方法です。
葬儀社が決まったら、葬儀の日程や形式、費用などについて打ち合わせをします。また、僧侶の手配や会場のレイアウト、料理なども検討します。葬儀社の方からいろいろな打診がありますが、予算に合わせた計画を立てていくことが大切です。
遺体の安置
日本の法律では、死亡後24時間以内の火葬は禁止されています。そのため、火葬するまでの間はどこかで遺体を保管する必要があります。
安置場所は自宅や葬儀社の安置所になりますが、葬儀場に移動するまでの間、温度管理や衛生面に配慮が必要なため、葬儀社の安置所で安置することが多いです。葬儀社の安置所は、葬儀に来られない近親者や知人が対面することも可能です。
親が亡くなったらすること:1週間以内の重要手続き
親が亡くなったときに、1週間程度でおこなう手続きは以下のとおりです。
- 死亡届の提出
- 火葬許可証の取得
- 葬儀・告別式の準備と実施
それぞれの手続きについてひとつずつ見ていきましょう。
死亡届の提出
死亡届は、人の死亡を法律的に証明する書類です。戸籍法第86条によると、“死亡を知ってから7日以内”に提出する必要があるとされています。
死亡届を提出する際は、死亡診断書もしくは死亡検案書を添付しなければなりません。また、提出するのは、亡くなった方の本籍地か死亡地の市区町村役場、届出人の所在地などです。
提出が遅れると、5万円以下の科料に処される場合があるため注意しましょう。
火葬許可証の取得
死亡届を提出する際に、同時に火葬許可申請書を提出することで、火葬許可証が発行されます。火葬許可証は故人を火葬するために必要な書類です。役所から受け取り、葬儀の日程が決まってから火葬場へ提出します。火葬許可証がない場合、火葬はおこなえません。
なお、死亡届の提出や火葬許可証の申請は、葬儀社が代行してくれるケースが多いです。火葬後、火葬許可証は火葬場から返却され、遺骨を墓地に納める際に必要な「埋葬許可証」として使用するため、大切に保管しておきましょう。
葬儀・告別式の準備と実施
葬儀・告別式は、故人を偲び、送るための大切な儀式です。形式は宗教、宗派や家族の意向によって異なります。
火葬場の空き状況や親族の都合などを考慮し、葬儀社が日程を調整します。同時に、会場の手配や参列者への連絡、祭壇・供物・返礼品の準備など、さまざまな準備が必要です。葬儀社が手配してくれることが多いですが、内容や進捗の確認は必要です。
告別式のあとに火葬をおこない、葬儀は終了します。
なお、葬儀の準備に関する詳しい解説は、以下の記事を参照してください。
葬儀の準備に必要なことや流れについて業界関係者が解説
親が亡くなったらすること:2週間以内におこなうべき手続き
親が亡くなり、葬儀を終えたあとも、さまざまな手続きが待っています。特に、2週間以内におこなうべき手続きは、相続手続きや生活の再スタートをスムーズにするうえで非常に重要です。ここでは、2週間以内に済ませておきたい手続きについて詳しく解説します。
年金受給停止手続き
故人が年金を受給していた場合、死亡後は年金の支払いを停止する必要があります。死亡を知った日から10日以内(国民年金は14日以内)に、年金受給権者死亡届を年金事務所へ提出します。必要な書類は、死亡診断書のコピー、故人の年金証書などです。手続きは窓口、郵送、オンラインなどでおこなえます。
提出が遅れると、過払いとなる場合があるため、期限内に手続きをおこないましょう。また、故人が亡くなる前に受け取れなかった年金がある場合は、未支給年金の請求手続きも必要です。
健康保険・介護保険の資格喪失届
故人が加入していた健康保険・介護保険の資格は、死亡により喪失します。そのため、死亡を知った日から14日以内に、資格喪失届を各保険組合または市区町村役場に提出しなければなりません。必要な書類は、資格喪失届、死亡診断書のコピー、健康保険証などで、手続きは窓口、郵送、オンラインで可能です。
年金同様、提出が遅れると過払いとなる場合があるため、期限内に手続きをおこないましょう。未払い保険料がある場合は、相続人が支払う責任があるため注意が必要です。
世帯主変更手続き
世帯主が亡くなった場合、14日以内に世帯主変更の手続きをおこないます。手続きはお住まいの市区町村役場でおこない、世帯主変更届、故人の戸籍謄本、新しい世帯主の本人確認書類などを提出します。
新しい世帯主は、同一世帯内にいる人でなければなりません。手続きを怠ると、5万円以下の科料が課される場合があります。世帯主変更は、住民税や固定資産税などの賦課や、各種手続きの際に必要となるため、忘れずにおこないましょう。
公共料金・各種サービスの解約または名義変更
故人が利用していた電気、ガス、水道などの公共料金や、携帯電話、インターネットなどの各種サービスの契約は、解約または名義変更が必要です。手続きは各サービス提供会社に連絡し、必要な書類を確認しましょう。
手続き方法は、電話や郵送、窓口、オンラインなど、会社によって異なります。解約手数料が発生する場合や、未払い料金がある場合は相続人が支払うことになります。手続きしない場合、利用料や基本料金などの支払いが続いてしまうこともあるため、早めに手続きをおこないましょう。
親が亡くなったらすること:1ヵ月以内の手続き
親が亡くなったあと、1ヵ月以内におこなう手続きには「雇用保険受給資格者証の返還」と「金融機関への連絡と手続き」があります。以下でひとつずつ解説します。
雇用保険受給資格者証の返還
親が雇用保険の受給者だった場合、死亡から1ヵ月以内に雇用保険受給資格者証を返還する必要があります。最寄りのハローワークに死亡診断書のコピーとともに提出しましょう。
郵送か窓口持参で手続きが可能で、遺族が代理でおこないます。返還を怠ると不正受給とみなされる可能性があるため、期限内に手続きする必要があります。不明点はハローワークに問い合わせましょう。
金融機関への連絡と手続き
取引のある金融機関に連絡し、口座凍結や残高確認をおこないます。死亡診断書や戸籍謄本を準備し、相続人の確認後、口座解約や名義変更の手続きを進めます。
自動引き落としの停止やクレジットカードの解約も忘れずにおこないましょう。借入金や住宅ローンがある場合は対応を相談し、必要に応じて相続手続き専用口座を開設します。
親が亡くなったらすること:税金関連の必須手続き
親が亡くなったあと、税金関連の手続きは避けて通れません。特に重要なのが所得税の準確定申告と相続税の申告・納税です。これらの手続きは適切に対応しないと、ペナルティとして追徴課税を受ける可能性があります。
以下では、それぞれの手続きの概要と注意点を説明します。
所得税の準確定申告の方法(4ヵ月以内)
相続人は、親の死亡後4ヵ月以内に準確定申告をおこなう必要があります。これは故人の1月1日から死亡日までの所得に対する申告です。
死亡診断書や源泉徴収票などを準備し、税務署で手続きをおこないます。還付金がある場合は、申告すれば受け取れます。大切な手続きなので、期限や手続きが複雑で対応できない場合は、税務署に相談するか専門家に依頼することも考えましょう。
相続税の申告・納税の手順(10ヵ月以内)
相続税は、被相続人の死亡日から10ヵ月以内に申告・納税する必要があります。まず相続財産を評価し、基礎控除額を超えた場合に課税対象となります。
戸籍謄本や遺産目録などの書類を準備し、申告書を作成して税務署に提出しましょう。配偶者の税額軽減特例もあるため、計算が複雑な場合は税理士のような専門家への相談をおすすめします。
親が亡くなったらすること:相続に関する重要手続き
親の死後、相続に関する手続きは複雑で時間がかかります。相続人の確定から遺産分割まで、法的な知識と細心の注意が必要です。以下では、主要な手続きについて詳しく説明します。
相続人と相続財産の調査方法
相続人と相続財産の調査は、相続手続きの第一歩です。調査は以下のステップでおこないます。
- 戸籍謄本を取得する
- 法定相続人を確認する
- 故人の財産を洗い出し、財産目録を作成する
不動産は登記簿で、預貯金は金融機関で調査します。また、有価証券や負債も忘れずに確認します。財産が複雑な場合は、弁護士や税理士などの専門家への相談がおすすめです。その後の手続きをスムーズにするためにも、調査は正確におこないましょう。
遺言書の確認と検認手続き
自宅や貸金庫、法務局で遺言書の有無を確認します。発見された場合、自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必要です。検認の申立てには、遺言書原本と死亡診断書などが必要になるため、あらかじめ用意しておくとスムーズです。
検認では、裁判官が遺言書の内容を確認し、相続人が立ち会います。公正証書遺言の場合は検認不要です。遺言執行者の指定があれば、その人物が相続手続きを進めることになります。
相続放棄・限定承認の検討と手続き(3ヵ月以内)
相続放棄や限定承認は、故人の債務が資産を上回る可能性がある場合に検討します。これらの手続きは、相続開始を知ってから3ヵ月以内におこないます。
相続放棄は相続権を完全に放棄し、限定承認は相続財産の範囲内で債務を弁済します。手続きは家庭裁判所でおこない、申述書や戸籍謄本などの提出が必要です。
他の相続人への影響も考慮し、判断は慎重におこないましょう。期限が迫っている場合は、まず家庭裁判所に相談することをおすすめします。
遺産分割協議の進め方
遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分け方を決める重要な協議です。まず、遺産の評価をおこない、各相続人の希望を確認します。
遺産の分割方法には以下の方法があります。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
協議が整ったら、遺産分割協議書を作成します。意見が対立した場合は、調停や審判を検討します。
未成年者や不在者がいる場合は、別途対応が必要なため、専門家へ相談するとよいでしょう。遺産の分配については相続税へも影響します。公平で円滑な分割を目指しましょう。
相続の手続きに関する詳しい解説は、以下の記事を参照してください。
知っておきたい相続手続きの基礎知識|期限の目安や必要書類を紹介
親が亡くなる前に準備しておくこと
親の死後、遺族がスムーズに手続きをするために、エンディングノートや遺言書を作成しておくのもひとつの方法です。
エンディングノートは、財産の管理方法や医療・介護方針、埋葬に関する意向などを記載しておくノートです。法的効力はありませんが、作成しておくと遺族が死後の対応をする際に、本人の意向に沿った対応ができます。
一方、遺言書は死亡後の財産をどのように分配したいかを記しておく書類です。こちらは法的な効力があるため、遺産相続でのトラブルを防げます。
他にも親が亡くなる前に準備しておくとよいことがあります。詳しい解説は、以下の記事を参照してください。
身寄りのない高齢者が終活でするべきことを業界関係者が解説
親が亡くなったらすることリストを活用しよう
親が亡くなると、悲しい気持ちを抱えながらも、さまざまな手続きをしなければなりません。期限を過ぎてしまうと思いがけず科料されてしまうこともあるため、することリストを参考にして、必要な手続きをすすめましょう。
複雑で多岐にわたる手続きを遺族だけで対応するのは難しいため、専門家の助けを借りるのもひとつの方法です。
一般社団法人 終活協議会は、弁護士をはじめ、司法書士や行政書士、税理士など、多くの専門家とネットワークを構築しています。一人ひとりのニーズにあわせた専門家の紹介が可能なため、手続きにお困りの際はお気軽にご相談ください。
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