2024年5月15日

家庭介護、家庭看護とは?家族の役割やメリット・デメリットを解説

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令和6年1月現在、家庭で介護サービスを利用した方は425万人を超えています。超高齢社会が進み、要介護高齢者が増えていくなか、家族の介護を家庭でおこなうか、施設入所を考えるかは、それぞれの家庭で頭を悩ませる点でしょう。

そこで本記事では、家庭介護・家庭看護をする際の家族の役割やメリット・デメリットについて解説しています。サービスの種類や利用までの手順、よくある質問についてもまとめていますので、「家庭での介護や看護をするために必要な準備をしておきたい」方は参考にしてください。

家庭介護、家庭看護とは?

家庭介護とは、在宅介護ともいい、介護施設へは入所せずに、家族が介護者となって自宅で介護することです。家族だけで介護を続けることは難しいため、公的な介護保険サービスを利用しながら介護していくことになるでしょう。介護を受ける高齢者からすると、住み慣れた自宅での生活を継続できる一方、介護する家族にとっては身体的にも精神的にも負担がかかる場合もあります。

家庭看護は、家庭内で病気に困っている際にお互い援助することです。また、家族のなかから病人が出ないよう、互いに健康に気を配り、病気を予防することも含まれます。家庭介護同様、家族だけでおこなうことは難しく、医師や看護師などの専門家にアドバイスをもらいながら看護していきます。

家庭で介護、看護するときの家族の役割

家庭介護・家庭看護では、病気だけでなく、本人を取り巻く環境面にも注意して対応する必要があり、家族は幅広い役割を担います。ここでは、家庭で介護・看護する際の家族の役割を4つにまとめて解説しています。

介護者としての役割

家庭で介護する際、家族は介護者としての役割を担います。食事介助やおむつ交換といった身体介助や、買い物・洗濯のような家事、通院の付き添いや役所での手続きなど、幅広い対応が必要です。

訪問介護のような介護保険サービスを活用し、負担を軽減させることはできますが、介護保険で対応できないこともあるため、以下のように分担して対応する場合もあります。

  • 家族が仕事で家をあけている間にヘルパーが食事を作り、家族が帰宅してから食事介助をする
  • 食事や入浴はヘルパーが対応するが、おむつ交換は羞恥心があるため、家族が対応する

上記のように、本人や家族の状況によって、必要な介護を家族が担います。

看護師のような役割

家族は医療職ではありませんが、看護師のような役割も担います。高齢者は持病を抱えている方が多く、若い人よりも急な体調変化を起こす可能性が高いことが特徴です。

例えば、水分の摂取量が少なくて脱水になったり、糖尿病の方が食事を摂らずに薬だけを飲むことで低血糖状態になったりするなど、日常生活のなかで急変するリスクを常に抱えています。

家庭での介護・看護では、常に医療職が近くにいるわけではありません。一番近くにいる家族が異変に気づき、医師や看護師などの医療職につなぐ役割が求められます。

本人の代理としての存在

家庭で介護・看護をしていくと、ケアの方針や入院をするかどうかなど、大きな判断を必要とする場面があります。本人が意思決定できない場合には、代理として家族が判断しなければなりません。

ときには、看取り期にどこで最期を迎えるかといった重大な意思決定を求められることもあります。これまでの本人の言動や考え方をよく知る家族だからこそ、本人の代理としての役割を担うことになりますが、家族にかかる精神的な負担は大きいものです。

そのため、本人が元気な頃から「食事が食べられなくなったらどうしたいか」「持病が悪化したら治療はどうしたいか」など話し合っておくとよいでしょう。

家族としての役割

家庭介護・看護で家族に求められる役割は多岐にわたりますが、家族そのものとしての関わりも大事な役割のひとつです。本人にとっては、介護や医療の専門家よりも、家族は誰よりも安心できる存在です。

ただし、家族だからといって無理に自分だけで介護しようとしたり、本人からの過度な要求に応えすぎたりすると、家庭での介護・看護を続けられなくなるケースもあるため注意しましょう。

家庭介護、家庭看護のメリット

家庭での介護・看護には、「家族の近くで過ごせる」「施設より費用を抑えられる」といったメリットがあります。

家族の近くで過ごせる

介護を受ける本人にとって、住み慣れた自宅で過ごせるのは大きなメリットになります。環境の変化が少なく、精神的な負担もかかりにくいのが理由です。また、長年ともに暮らしてきた家族が近くにいる安心感はとても大きなものでしょう。

本人が一人暮らしの場合でも、家族が仕事帰りや休日に立ち寄り、短時間でも一緒に過ごせれば本人の様子が把握できます。近所付き合いを続けられれば、これまでの関係性を継続できるでしょう。

施設より費用を抑えられる

家庭での介護や看護は、必要なサービスのみを受けるため、施設入所と比べて費用が安い傾向にあります。生命保険文化センターの「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」によると、在宅介護にかかる費用は平均4.8万円で、施設入所の場合の平均は12.2万円です。

施設の場合、種類にもよりますが、介護サービスの費用の他にも食費や居住費、その他の日常生活費がかかるため費用は高くなります。

参考:生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査

家庭介護、家庭看護のデメリット

家庭での介護や看護には、メリットだけでなくデメリットもあります。ここでは、介護者目線でのデメリットについて、以下の3点を解説します。

  • 同居する家族に負担がかかる
  • 身体的な疲労が蓄積する
  • 精神的ストレスがたまる

それぞれ見ていきましょう。

同居する家族に負担がかかる

家庭での介護や看護では、一緒にいる時間が長いことから、どうしても同居している家族に負担が偏ってしまいます。特に徘徊や火の不始末などの認知症の症状があると目が離せず苦労するでしょう。

結果的に介護離職に発展するケースもあります。ショートステイやデイサービスなどの介護サービスの利用や、家族内での役割分担など、同居している家族が休息するための対策が必要です。

身体的な疲労が蓄積する

移乗介助やおむつ交換などの身体介助は中腰の姿勢が続くため、介護者の体に負担がかかります。トイレに行く回数が多かったり、徘徊につきそいながら一緒に歩き続けたりする場合も疲労はたまってしまいます。

老老介護で「同居している家族も高齢者」というケースも珍しくありません。ケアマネジャーに相談しながら、無理しすぎないようサービスをうまく利用しましょう。

精神的ストレスがたまる

家庭介護や看護は24時間続きます。自分の時間をとれず介護に追われてしまうと、常に介護のことを考えている状態で精神的なストレスがたまり、気分がめいってしまうことがあります。

ストレスがたまると、本人のちょっとした言動にイライラして、つい手が出てしまい、高齢者虐待と認定されてしまうことも考えられます。適切にサービスを利用して、介護から離れられる時間を作りましょう。

家庭介護、家庭看護で受けられるサービス

ここでは、家庭介護で受けられるサービスを以下の6つに分類しまとめています。

  • 訪問型サービス
  • 通所介護型サービス
  • 宿泊型サービス
  • 小規模多機能型サービス
  • 福祉用具レンタル・購入、住宅改修費の補助
  • 自費サービス

ひとつずつ見ていきましょう。

訪問型サービス

自宅で生活しながら受けられるサービスです。介護職員や看護師などが自宅に訪問してサービスが提供されます。介護保険で利用できる訪問型サービスは以下のとおりです。

サービス種別内容
訪問介護介護職員が自宅を訪問し、身体介護や家事の援助をおこなう
訪問入浴介護職員、看護師が浴槽を持参し、入浴介助をおこなう
訪問看護主治医の指示のもと、看護師がバイタルサインの測定や医療的ケアなどをおこなう
訪問リハビリ理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが自宅を訪問し、必要なリハビリをおこなう
夜間対応型訪問介護夜間帯に受けられる訪問介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護定期的な訪問以外でも、転倒時の対応のような必要なタイミングで介護職員や看護師が訪問する

通所型サービス

自宅から介護施設に日帰りで通って利用するサービスです。原則送迎つきで、家庭よりも設備の整った施設でサービスを受けられます。

通所型サービスの内容は、以下の表のとおりです。

サービス種別内容
(地域密着型)通所介護デイサービスとも呼ばれ、食事や排泄、入浴などの介助やリハビリを受けられる。地域密着型の場合は、住んでいる市区町村にある施設のサービスを受けられる
通所リハビリデイケアとも呼ばれ、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士からリハビリを受けられる。病院や老人保健施設に併設されている
療養通所介護難病や認知症、脳卒中などによる重度の要介護者やがん末期の患者を対象にした通所介護
認知症対応型通所介護認知症のある方を対象にした通所介護

宿泊型サービス

あらかじめ期間を決めて、一時的に施設に宿泊するサービスです。施設の入居者と同じような介護を受けるため、将来的に施設への入所を考えている方が施設に慣れる目的で利用することもあります。また、家族の負担軽減や旅行、冠婚葬祭の際に利用する場合もあります。

宿泊型サービスは、サービスを提供する施設によって以下の2種類があります。

  • 短期入所生活介護:ショートステイとも呼ばれ、単独もしくは特別養護老人ホームがサービス提供している
  • 短期入所療養介護:医療機関や介護医療院、介護老人保健施設がサービス提供している

小規模多機能型サービス

訪問・通所・宿泊の介護サービスを一体的に提供しています。

介護保険のサービスを受けるには、訪問介護や通所介護など、利用したいサービス事業者ごとに契約をしなければなりません。ですが小規模多機能型サービスでは、ひとつの事業所と契約するだけでそれぞれのサービスを組み合わせて受けられるようになります。

家庭での生活を中心に、訪問・通所・宿泊を組み合わせて利用する「小規模多機能型居宅介護」と、訪問看護も組み合わせた「看護小規模多機能型居宅介護」の2種類があります。

福祉用具レンタル・購入、住宅改修費の補助

家庭での介護・看護を続ける際には、介護サービスだけでなく、福祉用具の利用や住宅改修など、環境面を整えることで負担を軽減できる場合があります。

  • 福祉用具レンタル:ベッドや車椅子、歩行器、杖、手すり、徘徊感知器など、必要な福祉用具を貸与するサービス。介護保険給付の対象となるが、介護度によって利用できる品目が決められている
  • 特定福祉用具販売:ポータブルトイレや簡易浴槽のような排泄・入浴で利用するものなど、衛生上、他の方へのレンタルになじまない品目を販売する
  • 住宅改修:手すりの取り付けや段差の解消、和式便器から洋式便器への取り替え工事費用が20万円まで支給される

自費サービス

介護保険のサービスは、法律で提供できるサービスが決まっています。介護保険でまかなえない部分を補うために、各自治体が介護保険外で提供しているのが自費サービスです。

たとえば横浜市の場合、草むしりや電球交換などの介護保険では受けられないサービスや電話機のレンタル、おむつの給付などをおこなっています。

自費サービスの内容や要件は各自治体によって異なります。お住まいの地域にどのようなサービスがあるか確認したい場合は、地域包括支援センターや市町村の窓口へ相談してみましょう。

家庭介護・家庭看護のサービスを利用するまでの流れ

家庭で介護サービスを利用するまでの流れは以下のとおりです。

  1. 要介護認定の申請後、認定調査を受ける
  2. 認定調査や主治医が作成した意見書をもとに認定を受ける
  3. ケアプランを作成し、サービスの利用がはじまる

介護保険のサービスを受けるには、まずは要介護度の認定を受けることが必要です。市町村の窓口で申請すると、後日調査員が自宅へ訪問し、日頃の様子や心身の状態について聞き取る認定調査をおこないます。

市町村は、認定調査の結果や主治医が作成した意見書をもとに介護認定審査会を開き、要介護度の判定をします。その後、通知書と介護保険被保健者証が郵送されるため、判定結果を確認しましょう。

必要なサービスをケアマネジャーと相談し、ケアプランを作成します。作成後は、ケアプランに基づいてサービスの利用が開始されます。

家庭介護・家庭看護に関するよくある質問

ここでは、家庭介護や家庭看護に関するよくある質問についてまとめています。

家庭介護と施設、どちらを選ぶべき?

なるべく家庭介護を継続したいと考えている場合でも、排泄や自宅内の移動が難しくなったり、家族の睡眠が十分にとれなかったりするときは、施設入所を検討するタイミングといえます。

家庭介護と施設入所のどちらにもメリットとデメリットがあるため、本人や家族の希望や生活スタイル、経済状況などを考慮して検討しましょう。

家庭で介護するにはどのくらいお金がかかる?

家庭での介護にかかる費用は月額平均4.8万円です。この金額はあくまで平均であり、実際の金額は要介護度や利用するサービスの種類によって大きく異なります。

サービスごとの費用相場を知りたい方は、以下を参照してください。

参考:厚生労働省「介護サービス概算料金の試算

家庭介護に限界を感じた場合はどうすればいい?

家庭での介護や看護に限界を感じた場合は、まずは担当のケアマネジャーに相談しましょう。「自分が頑張れば」と我慢を続けていると、介護疲れによって介護者が心身の不調に陥る可能性があります。施設入所を考えるタイミングかもしれません。

ケアマネジャーとよく相談し、サービスの量を増やしたり、ショートステイを活用したりするなどして、休息をとれるようにすることが大切です。

まとめ

家庭介護・家庭看護は、住み慣れた自宅で家族とともに過ごせ、施設入所と比べて費用も抑えられます。一方で、対応する家族にとっては負担が大きく、身体的な疲労や精神的なストレスがたまりやすくなります。

家庭内での役割分担や、外部のサービスをうまく活用することで介護に対する負担は軽減されるでしょう。介護に限界を感じる前に、施設入所を考えるのもひとつの方法です。

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