認知症予防のための実践ポイント5選!

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日本では、2010年をピークに人口が減少に転じ、65歳以上の高齢者人口は2045年ごろまで増加すると予測されています。この高齢化の進行にともない、認知症患者の増加が懸念されています。認知症の最大のリスク要因は「加齢」です。65歳から69歳の有病率は1.5%ですが、90歳以上では64.2%にまで達します。そのため、認知症予防や物忘れ防止は高齢者にとって重要な生活課題となっています。

日常生活のなかで物忘れが増えてくると、「認知症にはなりたくない」と不安に感じることもあるでしょう。そこで本記事では、認知症に関する具体的な予防策を紹介します。生活習慣の改善や趣味活動の活用など、日常生活で実践できるポイントを詳しく解説し、将来への備えとして役立つ情報を提供します。

認知症とは

認知症とは

認知症とは、なんらかの病気によって、記憶や判断力といった認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。勘違いされやすいのですが、認知症はそういった「症状」のことを指し、病名ではありません。

また、認知症は少しずつ進行していく病気とされていますが、その進行を遅らせたり緩和させたりと、現時点では根本的な治療法が確立されていません。そのため、そもそも認知症を防ぐための「予防」が非常に重要です。

認知症の症状

認知症の症状は主に「中核症状」と「周辺症状」に分けられます。

中核症状
  • 認知症のある方に共通して現れる
  • 新しいことを覚えられなくなる「記憶障害」や、時間や場所の見当がつかなくなる「見当識障害」、「判断力の低下」や着替える・書くといった「実行機能の障害」など
  • 症状は徐々に進行する
周辺症状
  • 個々人の疾患や環境によって症状が異なる
  • 徘徊、失禁、自傷・他害、うつ、不安、焦燥、幻覚、妄想、作話、意欲低下、意欲亢進など
  • 実際の症状は個人差が大きい

これらの症状は生活の質に大きな影響を与えてしまいます。早期の認知症対策が求められます。

認知症の種類

認知症を引き起こす病気は約70種類あるといわれています。そのなかでも特に多いのが以下の4つです。

アルツハイマー型認知症

認知症の中で最も多い原因とされ、長い時間をかけて脳に特定のタンパク質がたまることで発症すると考えられています。
症状は、記憶障害(もの忘れ)から始まることが多いですが、言葉が出にくくなる「失語」、見えているものを正しく認識できない「失認」、動作はできても普段の動作が難しくなる「失行」などが現れることもあります。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で発症する認知症です。
これらの障害により、脳の一部の神経細胞に栄養や酸素が届かなくなり、認知機能が低下します。症状は脳血管障害が発生した部位によって異なりますが、麻痺などの身体的な症状を伴うことがよくあります。

レビー小体型認知症

脳にαシヌクレインというタンパク質が蓄積することで発症すると考えられる認知症です。
特徴として、記憶障害を含む認知機能の障害が日によって変動しやすい点が挙げられます。さらに、実際には存在しないものが見える「幻視」や、転びやすく歩行が困難になるパーキンソン症状、睡眠中に夢を見ながら叫ぶなどの異常行動が現れることがあります。これらの症状がどの順番で現れるかは人によって異なります。

前頭側頭型認知症

脳の前頭葉と側頭葉が主に影響を受けて進行する認知症です。特徴的な症状として、同じ行動を繰り返す、周囲の刺激に過剰に反応するといった行動の変化が目立つ「行動障害型」と、言葉を話すことや理解することが難しくなる「言語障害型」があります。

これらの認知症の種類を理解することで、それぞれの特徴に応じた適切な対応や予防策を考えることができます。次に、認知症と物忘れの違いについて見ていきましょう。

認知症と物忘れの違い

加齢による物忘れはしばしば認知症と混同されますが、この2つには以下のような違いがあります。

 認知症加齢
体験したこと体験したこと全体を忘れる
(食事をしたこと自体を忘れる)
体験したことの一部を忘れる
(食事はしたが、メニューを思い出せない)
自覚ない(初期にはある)ある
日常生活での支障あるない
進行進行する緩やかに進行する


物忘れは体験したこと自体は覚えているものの、その一部を忘れる傾向があります。一方で、認知症では体験そのものを忘れてしまいます。また、物忘れの場合はヒントを与えられると思い出せることが多いですが、認知症ではそうした手助けがあっても思い出せません。この違いを理解することで、不必要な不安を軽減し、適切な対応策を講じることができます。

認知症予防、物忘れ防止のための5つのポイント

認知症予防、物忘れ防止のための5つのポイント

認知症予防や物忘れを防止するためには、以下のような5つのポイントがあります。

  1. 生活習慣病を予防する
  2. 運動する
  3. 他者と交流する
  4. 趣味活動に取り組む
  5. 自分の考えをまとめる習慣をつける

ひとつずつみていきましょう。

1.生活習慣病を予防する

生活習慣病の予防は認知症予防の基本です。生活習慣病は脳の萎縮や脳卒中を引き起こし、認知機能低下のリスクを高めます。特に高血圧、糖尿病、高脂血症は主要なリスク因子と考えられています。

定期的に健康診断を受け、減塩やバランスの取れた食事を心がけましょう。また、禁煙・節酒に加え、規則正しい生活リズムを維持することも重要です。認知症リスクを低減できるよう、生活習慣病の予防に取り組みましょう。

2.運動する

定期的な運動は認知機能の維持・向上に効果的です。運動することによって、脳の血流の改善、筋力や体力の維持に役立ちます。ウォーキング、水泳、ジョギングなどの有酸素運動やラジオ体操、太極拳がおすすめです。一人で活動するのが苦手であれば、グループでおこなう体操教室への参加もよいでしょう。無理なく継続的な運動習慣を築くことが認知症や物忘れの予防につながります。

3.他者と交流する

社会的な交流も、運動と同様に脳を活性化する作用があり、認知機能の維持につながります。会話や交流が脳に新しい刺激を与え、ストレス軽減にも効果的です。地域サークルやボランティア活動に参加し、家族や友人との食事や買い物、映画鑑賞といった外出を楽しみましょう。積極的に社会参加し、他者とコミュニケーションをとることが脳への良い刺激となります。また、新しい友人との出会いや異なる世代との交流も視野を広げる良い機会です。

4.趣味活動に取り組む

趣味活動に取り組むことも、認知症や物忘れの予防に効果的です。新しい学習や技能習得が脳への刺激となり、達成感が精神的健康に良い影響を与えます。

  • 園芸
  • 料理
  • 楽器演奏
  • 合唱
  • 絵画
  • 工芸
  • 写真撮影
  • 俳句

これ以外にも、興味にできる活動はたくさんあるため、興味のある活動を継続的に楽しめると良いでしょう。

5.自分の考えをまとめる習慣をつける

思考をまとめ表現する習慣も認知症や物忘れの予防につながります。考えることで脳の前頭葉を活性化し、記憶力と思考力の低下を予防します。日記を書く、読書後に感想文を書く、クロスワードパズルを解く、旅行の計画を立てるなど、日常的な思考と表現の習慣化が認知症予防に有効です。

認知症を予防する10ヵ条

公益財団法人認知症予防財団では、認知症予防の10ヵ条を提唱しています。これらは、日常生活で簡単に取り入れられる習慣や考え方をまとめたものです。先ほど紹介した5つのポイントに加え、この10ヵ条をチェックリストとして活用し、日々の生活に取り入れてみましょう。

  1. 塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事を
  2. 適度に運動をおこない足腰を丈夫に
  3. 深酒とタバコはやめて規則正しい生活を
  4. 生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防・早期発見・治療を
  5. 転倒に気をつけよう 頭の打撲は認知症招く
  6. 興味と好奇心をもつように
  7. 考えをまとめて表現する習慣を
  8. こまやかな気配りをしたよい付き合いを
  9. いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに
  10. くよくよしないで明るい気分で生活を

引用:公益財団法人認知症予防財団「認知症予防の10ヵ条

これらの項目は、日常生活で意識的に取り組むことで、認知症予防だけでなく全体的な健康促進にもつながります。ぜひ毎日の習慣として取り入れてください。

認知症予防には3つの段階がある

認知症予防には3つの段階がある

認知症予防の基本的な考え方は「認知症にならない」ということではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」ということです。また、予防には以下のように一次予防から三次予防までの3段階があります。

一次予防
  • 活発な高齢者を対象に、認知機能を含む生活機能の維持・向上を目指す取り組みを実施
  • 精神的健康、身体的活動、社会的つながりの3側面で活動性を保ち、向上させることを重視
  • 疾病の発症を遅らせたり、リスクを低減することを目的とする
二次予防
  • 要支援・要介護状態のリスクが高い高齢者を早期に見つけ出し、迅速に対応して状態の改善を図る
  • 軽度認知障害や初期認知症の高齢者に対して、早期発見と適切な対応を行い、要支援や要介護状態への進行を遅らせる
  • 「早期発見・早期対応」による状態悪化の防止
三次予防
  • 要支援・要介護状態の高齢者を対象に、現状の改善やさらなる重度化を防ぐ取り組みを実施
  • 認知症と診断された高齢者に対し、要介護度の悪化防止や生活機能の維持を目指す
  • 「重度化予防」「機能維持」「行動・心理症状の予防・対応」を重点的に進める

これら3つの段階を意識して取り組むことで、認知症による影響を最小限に抑えながら、より良い生活を送ることが可能になります。

認知症の症状に気づいたら

認知症の症状に気づいたら

認知症の症状に気づいたら、早期に対応することが非常に重要です。初期段階での発見は、進行を遅らせる治療や対策を講じるための鍵となります。まずは、家族に協力を求めましょう。家族が症状を理解し、日常生活でのサポートを提供することで、本人の不安を軽減し、適切なケアが可能になります。

次に、かかりつけ医や介護の専門家に相談することが大切です。専門医による診断を受けることで、具体的な治療や日常生活に関するアドバイスを受けられます。また、地域包括支援センターなどの専門機関の活用も有効です。地域包括支援センターでは、介護に関する全般的な相談が可能です。これにより、本人と家族が安心して生活できる環境を整えられるでしょう。

さらに、成年後見制度の利用を検討することもひとつの方法です。この制度は、判断能力が低下した場合でも、財産の管理や介護サービス利用時の契約などについて、法的に支援を受けられる仕組みです。成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度がありますが、任意後見制度を利用すれば、判断能力があるうちに支援の準備を整えておくことができます。これらのステップを踏むことで、認知症への適切な対応と将来への備えが可能になります。

認知症予防に関する相談は、一般社団法人 終活協議会 / 想いコーポレーショングループへ

本記事では、認知症予防に関する具体的な方法を紹介しました。生活習慣の改善や趣味活動の実践、他者との交流など、日常生活で取り組めるポイントを意識することで、認知症リスクを軽減できます。

認知症に備えるためには、早めの準備と専門家への相談が重要です。一般社団法人 終活協議会 / 想いコーポレーショングループでは、心託サービスの一環として任意後見制度利用のサポートを提供しています。判断能力が低下した際にも安心して生活できるよう、また、将来への不安を解消するために、ぜひお気軽にご相談ください。

一般社団法人 終活協議会 / 想いコーポレーショングループの資料請求はこちらから

監修

一般社団法人終活協議会

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