終活では不動産をどう整理すればいい?主な選択肢やトラブル回避のポイント
終活では、財産整理が重要なテーマの一つです。なかでも不動産は金額が大きく、手続きも複雑なため、早めに方針を決めておくことが大切です。
この記事では、終活における不動産整理の方法や必要な準備、トラブルを避けるためのポイントを解説します。自分や家族に合った選択肢を見つける参考にしてください。
目次
終活の財産整理で不動産が重要な理由
終活で取り組むことはさまざまですが、なかでも不動産の整理は優先度が高いといわれています。株式会社NEXERと共同で実施したアンケートでは、終活として取り組んでいること、または取り組む予定のこととして「財産・資産の整理」を挙げた方が約4割にのぼりました。
不動産は、預貯金や有価証券と比べて、整理に時間がかかりやすい資産です。金額が大きいだけでなく、土地や建物をそのまま公平に分けることが難しく、売却や名義変更にも手続きが必要です。
また、不動産は所有しているだけでも固定資産税や維持管理費がかかります。空き家のまま放置すると老朽化が進み、近隣トラブルを招くおそれもあります。さらに、空き家対策特別措置法により、管理が不十分な空き家は固定資産税の優遇措置を受けられなくなる場合もあります。
このように、不動産は金額が大きく分けにくいだけでなく、手続きや維持管理の負担もあるため、終活で優先して整理したい財産です。
整理の方針が曖昧なまま残ると、複数の相続人がいる場合に遺産分割で意見が分かれたり、家族や相続人が手続きや管理で苦労したりする可能性があります。
そのため、元気なうちに不動産をどう扱うか決めておくことが大切です。
出典:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712029.pdf)
アンケート引用元:https://shukatsu-kyougikai.com/news/5028/
こちらの記事では、終活について解説しています。
やることリスト10選や終活をはじめるベストなタイミングも取り上げているため、
ぜひあわせてご覧ください。
終活における不動産の整理方法
不動産をどう整理するかは、ライフスタイルや家族構成、将来の計画によって変わります。ここでは主な選択肢を紹介します。自分に合った方法を検討してください。
不動産を売却する
終活で不動産を整理する際、まず選択肢の一つになるのが売却です。不動産を手放して現金化する方法で、老後資金を確保したい場合や、住み替えを考えている場合に向いています。
ただし、不動産の売却方法にはいくつか種類があり、住み続けたいか、まとまった資金を得たいかによって適した方法が異なります。
ここでは、代表的な方法として単純売却、リースバック、リバースモーゲージを紹介します。
単純売却
不動産を市場価格で売却し、まとまった現金を得る方法です。住み替えや介護施設への入居を考えている場合は、売却資金を老後の生活費や入居費用に充てられます。
不動産を現金化すると遺産分割がしやすくなり、相続人同士のトラブルも起こりにくくなります。また、固定資産税や維持管理費の負担がなくなる点もメリットです。
一方、売却の時期によっては希望どおりの価格で売れないことがあります。売却を検討する際は、不動産の市場価値を把握し、自分のライフプランに合わせて判断してください。
リースバック
リースバックは、自宅を不動産会社などに売却した後、賃貸契約を結んで同じ家に住み続ける方法です。
所有権は買主に移りますが、住み慣れた環境を変えずにまとまった資金を得られ、転居の負担や固定資産税・修繕費などの維持費を抑えられる点がメリットです。
ただし、毎月の賃料がかかるため、長く住むほど総支払額が売却益を上回ることがあります。契約期間が決まっている場合は、更新できないおそれもあるため、契約内容をよく確認してください。
リバースモーゲージ
リバースモーゲージは、自宅を担保にして金融機関から融資を受ける方法です。リースバックとは異なり、所有権は手元に残したまま、毎月または一括で資金を借り入れられます。
住み慣れた自宅に住み続けながら、老後資金を確保できる点が魅力です。ただし、リバースモーゲージは融資のため、借入額に応じて金利がかかります。
契約者が亡くなった後は、自宅を売却して返済に充てるのが一般的です。そのため、配偶者や相続人に自宅を残したい場合には、慎重に検討する必要があります。
また、不動産の評価額が融資額を下回るおそれや、長生きによって融資枠を使い切るリスクもあります。検討する際は、金融機関ごとの条件や仕組みを十分に確認し、家族とも相談したうえで判断してください。
不動産を生前贈与する
生前贈与とは、生きているうちに不動産を特定の方へ譲る方法です。子どもや孫などに不動産を引き継ぎたい場合や、相続時のトラブルを避けたい場合に向いています。
メリットは、誰に引き継ぐかを明確にできる点です。遺産分割をめぐる争いを防ぎやすく、不動産を引き継いでほしい相手が決まっている場合は、確実に譲れます。
ただし、生前贈与には贈与税、登録免許税、不動産取得税がかかる点に注意が必要です。一般的に、贈与税は相続税より負担が重くなりやすく、想定以上の税負担が生じることもあります。
また、2024年1月1日以後の贈与からは、課税対象に加算される期間が従来の3年から7年へ段階的に延長されます。贈与の時期や税制の影響は、慎重に検討する必要があります。
一方で、贈与する相手や条件によっては、税負担を軽減できる特例を使える場合もあります。たとえば、配偶者への贈与には「おしどり贈与」の特例があります。
婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、居住用不動産またはその購入資金について、2,000万円まで非課税で贈与できます。生前贈与を検討する際は、税理士などの専門家に相談してください。
出典:国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm)
出典:国税庁「財産をもらったとき」
(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm)
不動産を相続させる
生前に不動産を手放さず、将来家族へ残したい場合は、相続によって承継させる方法があります。代表的な方法としては「遺言書」の作成があります。
遺言書を作成する
遺言書は、自分の財産を誰にどのように分けるかを示す文書です。不動産のように分けにくい資産は、遺言書がないと相続人同士で意見が対立しやすく、手続きが長引く原因になります。
とくに子どもがいない夫婦では、遺言書がないと法定相続人が配偶者だけでなく、兄弟姉妹や甥・姪にまで及ぶ場合があります。
その結果、相続手続きが複雑になることがあります。遺言書を作成しておけば、こうしたトラブルを避けながら、自分の意思を反映しやすくなります。
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。それぞれ特徴は異なりますが、確実性を重視するなら、公証人が作成に関わる公正証書遺言が向いています。
予備的遺言を検討する
予備的遺言とは、遺言書で指定した受遺者が自分より先に亡くなった場合に備え、代わりに財産を受け取る方を定めておく条項です。
たとえば、配偶者に不動産を相続させると遺言書に書いていても、配偶者が先に亡くなると、その内容はそのままでは実現できません。
その場合、法定相続人による相続となり、想定していなかった形で話が進むおそれがあります。予備的遺言を記載しておけば、次に誰へ引き継ぐかをあらかじめ明確にできます。
子どものいない夫婦や、相続人が限られている場合は、とくに重要です。遺言書を作成する際は、将来起こり得るケースも見据え、予備的な内容まで盛り込んでおくと安心です。
遺贈寄付を検討する
遺贈寄付とは、遺言書によって自分の財産を公益団体や慈善団体などに寄付する方法です。子どもがおらず相続人がいない場合や、社会に役立てたいと考えている場合に向いています。
不動産を遺贈寄付すれば、空き家の発生を防ぎながら、自分の意思を社会に生かせます。
ただし、寄付先によっては不動産を受け取れないこともあるため、事前に相談し、受け入れの条件や手続きを確認しておくことが必要です。
不動産を賃貸として貸し出す
不動産を手放さずに活用したい場合は、賃貸として貸し出す方法があります。自宅や所有する不動産を賃貸物件にすれば、定期的な賃料収入を得られるため、老後の生活資金として活用できます。
賃貸のメリットは、不動産を手放さずに収益を得られることです。将来的に自分や家族が住む可能性も残せます。
一方で、賃貸として貸し出す場合は、空室によって収入が得られないリスクがあります。建物の維持管理や修繕費、確定申告などの事務手続きも必要になるため、収益だけでなく管理の負担も踏まえて判断することが大切です。
自分で対応するのが難しい場合は、不動産管理会社に委託する方法もあります。
終活で不動産を整理する際に必要な準備・手続き
不動産整理を進めるには、事前に確認しておきたいことや必要な手続きがあります。
ここでは、実際に進める際の基本的なステップを解説します。
不動産の所在地や面積、評価額を把握する
不動産整理の第一歩は、所有している不動産の情報を正確に把握することです。まずは固定資産税の納税通知書を確認し、次の内容を整理しましょう。
- 所在地
- 地番
- 土地や建物の面積
- 固定資産税評価額
固定資産税評価額や路線価は、不動産の価値を把握する目安になります。ただし、実際の売却価格とは異なることがあるため、売却を考えている場合は不動産会社に査定を依頼し、市場価値を確認するとよいでしょう。
また、古い土地では、登記簿上の面積と実際の面積が一致しないことがあります。必要に応じて測量も検討してください。正確な情報を把握しておくと、売却や相続の手続きを進めやすくなります。
出典:国税庁「土地家屋の評価」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm)
必要に応じて名義を変更しておく
不動産の名義が古いままになっている場合は、早めに変更しておくことが重要です。
たとえば、親から相続した不動産の名義が親のままだと、自分が亡くなった際の相続手続きが複雑になりやすくなります。
名義変更には登記申請が必要で、手続きは法務局で行います。登録免許税もかかりますが、そのまま放置して相続が重なると、権利関係が複雑になり、将来の負担が大きくなるおそれがあります。
2024年4月からは相続登記が義務化されました。相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しない場合、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
そのため、名義変更が必要な不動産がある場合は、早めに対応しておきましょう。
出典:法務局「不動産登記申請手続」(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/touki1.html)
出典:法務省「相続登記の申請義務化について」
(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html)
境界を確定させておく
不動産を売却するときや相続後に管理・活用するときは、隣地との境界を明確にしておくことが重要です。境界が曖昧なままだと、売却時に買主とトラブルになったり、相続後に隣地所有者との争いが起きたりするおそれがあります。
境界を確定するには、土地家屋調査士に依頼して測量を行い、隣地所有者と立ち会いのうえで境界を確認します。時間や費用はかかりますが、確認した内容を「境界確認書」として残しておくことで、売却時や相続後のトラブル防止につながります。
不動産整理を考えている場合は、早めに対応しておきましょう。
出典:国土交通省関東地方整備局「道路との境界確定申請」
(https://www.ktr.mlit.go.jp/road/sinsei/road_sinsei00000001.html)
終活の不動産整理でトラブルを避けるためのポイント
不動産整理を進める際は、事前に押さえておきたいポイントがあります。
ここでは、トラブルを防ぎながら進めるための注意点を紹介します。
今後のライフプランや希望を明確にする
不動産をどう整理するかは、これからどのように暮らしたいかで大きく変わります。
自宅に住み続けるのか、住み替えるのか、施設への入居を考えるのかなど、今後の生活設計を明確にしておきましょう。
あわせて、医療や介護が必要になった場合の資金計画や、配偶者が一人になった後の暮らしについても考えておくことが大切です。
親族や相続人の意向も考慮する
不動産整理は、自分だけでなく家族や相続人にも影響します。独断で決めるのではなく、配偶者や親族の意向を確認し、理解を得ておくことが重要です。
たとえば、自宅を売却する場合、配偶者が住み慣れた環境を離れることに不安を感じるかもしれません。また、相続人がすでに自宅を持っているなら、不動産より現金を望むこともあります。
家族と率直に話し合い、考えを共有しておくことで、トラブルを防ぎやすくなります。
ローンが残っている場合は残高を確認する
住宅ローンが残っている不動産を売却する場合は、売却代金でローンを完済できるかを確認する必要があります。
売却価格がローン残高を下回ると、不足分を自己資金で補わなければならず、売却が難しくなることもあります。
また、相続時にローンが残っていると、相続人はローンを引き継ぐか、不動産を売却して返済するかを判断する必要があります。
ローン残高や返済計画を把握し、早めに対策を考えておきましょう。
必要に応じて専門家に相談する
不動産整理では、法律、税金、登記など、専門的な知識が必要になる場面が少なくありません。自分だけで判断が難しい場合は、弁護士、税理士、司法書士、不動産会社などの専門家に相談しましょう。
専門家の助言を受けることで、状況に合った方法を選びやすくなり、手続きも進めやすくなります。また、相談先を確保しておくことは、精神的な安心にもつながります。
まとめ
終活における不動産整理は、老後の生活設計や円滑な相続に大きくかかわる重要なテーマです。売却、生前贈与、相続、賃貸などの選択肢があり、自分や家族の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
不動産を整理する際は、所在地や評価額の把握、名義変更、境界確定などの準備を進め、家族とも十分に話し合っておきましょう。専門家のサポートを受けることで、手続きも進めやすくなります。
一般社団法人 終活協議会が提供する「心託(しんたく)サービス」は「法人の身元保証サービス」をはじめ「死後事務委任契約」「行政手続きなどの代行サービス」など、終活に関わる幅広い支援を提供しています。
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監修

- 一般社団法人 終活協議会 理事
-
1969年生まれ、大阪出身。
2012年にテレビで放送された特集番組を見て、興味本位で終活をスタート。終活に必要な知識やお役立ち情報を終活専門ブログで発信するが、全国から寄せられる相談の対応に個人での限界を感じ、自分以外にも終活の専門家(終活スペシャリスト)を増やすことを決意。現在は、終活ガイドという資格を通じて、終活スペシャリストを育成すると同時に、終活ガイドの皆さんが活動する基盤づくりを全国展開中。著書に「終活スペシャリストになろう」がある。
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