相続手続きは遺言書がある場合どう進める?無効になる場合も解説

相続手続きは遺言書がある場合どう進める?無効になる場合も解説の画像

相続で遺言書があっても、配偶者や子どもには最低限の遺産を受け取る権利があります。遺留分の仕組みや請求方法に加え、遺言書の検認手続きや無効になる原因もあわせて解説します。

遺言書が見つかったとき「まず何をすればいいのだろう」と戸惑う方は少なくありません。遺言書は、故人の想いを託した大切な一通です。しかし、その扱い方には検認や執行といった、法律上の細かな決まりがあります。

本記事では、遺言書がある場合の相続手続きの進め方を、遺言書の種類や検認の要否、無効になるケースを交えて解説します。あわせて、内容が不公平なときの遺留分侵害額請求への対処法や、生前対策のポイントもご紹介します。

相続手続きは遺言書がある場合どう進める?

身内が亡くなったとき、まず確認したいのが遺言書の有無です。遺言書があるかどうかで、その後の手続きの進め方は大きく変わります。

株式会社NEXER Groupと想いコーポレーショングループが共同で実施したアンケート調査(2025年12月25日~2026年1月7日、全国50代以上男女600名、インターネット調査)で「どのような終活を行っているもしくは行う予定か、当てはまるものをすべて選んでください。(複数選択可)」と尋ねたところ、もっとも多かったのは、身の回りの「不用品・生前整理」で67.5%でした。

次いで「エンディングノートの作成」が41.9%、そして「財産・資産の整理」が39.6%と続きます。ところが、同じ質問で「遺言書の作成」を選んだ方はわずか22.7%にとどまりました。身の回りのものは整理していても、いざ財産をどう遺すかという段階になると、多くの方が足を止めてしまうようです。

同調査では「終活を始めた、または始めようと思ったきっかけとして当てはまるものをすべて選んでください。(複数選択可)」とも尋ねています。この設問に対し「家族に迷惑をかけたくないと思った」と回答した人は47.6%に上り、半数近くを占めました。家族への配慮を動機に終活を意識する方が多いからこそ、遺言書の準備の遅れは見過ごせない課題といえるでしょう。

遺言書がなければ、残された方が手続きに戸惑ったり、話し合いに時間がかかったりすることもあります。終活では、身の回りの整理だけでなく、遺言書や身元保証、死後の事務手続きへの備えまで含めて考えておくことが大切です。まずは、遺言書がある場合の手続きの流れから見ていきましょう。

50代以上の7割以上が「終活」に関心あり。きっかけ1位は「年齢と健康」、では実際にやっていることとは? | 終活サポートなら終活協議会
アンケート引用元:50代以上の7割以上が「終活」に関心あり。きっかけ1位は「年齢と健康」、では実際にやっていることとは?

10 通知 〜通知が届きます!〜 | 自筆証書遺言書保管制度
出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度」

遺言書の種類を確認する

遺言書には、大きく分けて「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

自筆証書遺言は、原則として遺言者本人が全文・日付・氏名を自書し、押印して作成する遺言書です。なお、財産目録については、一定の要件を満たせばパソコンなどで作成することもできます。自宅で保管されるほか、法務局に保管を申請できる「自筆証書遺言書保管制度」を利用する方法もあります。

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成し、原本も公証役場に保管される遺言書です。証人2人以上の立ち会いのもとで作成するため、形式面の不備が起こりにくいという特徴があります。秘密証書遺言は、内容を誰にも知られずに作成できる方式ですが、手続きが煩雑なため、実務ではあまり利用されていません。

遺言書には、財産の分け方だけでなく、認知や相続人の廃除など、法律で定められた事項を記載できます。ただし、遺言書に記載した内容のすべてに法的な効力が認められるわけではない点に注意しましょう。

裁判所へ遺言書の検認を申し立てる

自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合、その場で開封してはいけません。家庭裁判所での「検認」という手続きを経る必要があります。勝手に開封すると、5万円以下の過料が科される可能性があるため注意しましょう。

たとえば、宅配便を受け取るときに配達員が状態を写真に残す確認作業に似ています。中身が正しいかどうかを判定するものではなく、届いたときの状態を記録するだけの手続きです。

ただし、すべての自筆証書遺言に検認が必要というわけではありません。法務局(遺言書保管所)に保管されている自筆証書遺言や、公正証書遺言は、家庭裁判所での検認が不要とされています。

検認が必要になるのは、自宅などで保管されていた自筆証書遺言と秘密証書遺言のみです。見つかった遺言書がどちらにあたるのか、まず確認しておきましょう。

遺言書に効力があるかどうかを確認する

先ほど触れたとおり、検認はあくまで状態を記録する手続きにすぎません。だからといって、遺言書が法的に有効だと認められたわけではありません。たとえば、日付の記載がない、署名や押印に不備がある、といった場合は、形式的な要件を満たさず無効になることがあります。

では、具体的にどのような場合に無効となってしまうのでしょうか。次の見出しで詳しく見ていきましょう。

遺言執行者の有無に沿って手続きを進める

遺言書のなかには、あらかじめ「遺言執行者」が指定されている場合があります。遺言執行者とは、遺言の内容を実現する手続きを行う方のことです。指定されている場合は、その方が遺言の内容を実現するため、必要な手続きを進めます。

遺言執行者が指定されていない場合は、相続人などが必要な手続きを進めることになります。遺言の内容や手続きによっては、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることもできます。遺言を確実に実行したいなら、あらかじめ信頼できる方を遺言執行者に指定しておくと安心です。

自分で手続きを進めるのが難しい、あるいは負担を減らしたいときは、第三者の専門機関に依頼する方法もあります。

遺言書へ記載のない財産は別途協議が必要

遺言書の作成後に新たに取得した財産や、記載が漏れていた財産には、遺言書の効力が及びません。そのため、これらの財産については、相続人全員による遺産分割協議をあらためて行う必要があります。

こうした事態を防ぐには、遺言書に「その他一切の財産を〇〇に相続させる」といった、残りの財産の帰属先を定める条項を入れておくとよいでしょう。包括的な条項があれば、記載漏れによる協議の手間を減らせます。

遺言書が無効となる主な原因

遺言書は、正しく作成しなければ無効になってしまうことがあります。無効となる原因を知っておくことは、これから遺言書を作成する方にとっても、生前対策の第一歩になります。

遺言能力のない人が作成している場合

遺言書を作成するには、満15歳以上であり、かつ「遺言能力」を備えていることが必要です。遺言能力とは、遺言の内容とその結果を理解できる判断能力のことです。認知症や精神疾患があるからといって、一律に遺言が無効になるわけではありません。

遺言作成時の心身の状況や医師の診断、遺言内容の複雑さなどを総合的に考慮して判断されるのです。判断能力がしっかりしているうちに遺言書を作成し、医師の診断書を残しておきましょう。こうした備えが、後々のトラブルを防ぎます。

利害関係者による影響が疑われる場合

特定の親族が遺言者に手を添えて書かせたり、詐欺や強迫によって本人の意思に反する内容を書かせたりした疑いがある場合、無効や取消しの対象になることがあります。

こうした疑いを周囲に持たれないためにも、特定の親族と2人きりで作成するのは避けたいところです。弁護士や司法書士などの専門家、あるいは公証人の立ち会いのもとで作成すると安心です。

不適切な内容が含まれる場合

遺言書の内容が不明確な場合も、無効となる原因のひとつです。「財産はすべて任せる」といったあいまいな表現では、誰にどの財産を残すのか特定できません。あいまいさは禁物です。不動産の地番や口座番号など、財産と受け取り方を明確に記載しましょう。

また、民法90条が定める公序良俗に反する内容も無効とされます。たとえば、不倫関係の維持を目的とした遺贈は、相続人の生活を脅かすものであれば無効と判断される可能性があります(最高裁判所昭和61年11月20日判決)。感情に任せず、誰が見ても納得できる内容を心がけましょう。

<公序良俗違反(1) | 有斐閣Online>
出典:有斐閣Online「公序良俗違反(1)—不倫な関係にある女性に対する包括遺贈—最一小判昭和61・11・20」

<無効にしないための遺言書の書き方|意外と知らない5つの注意点とよくある質問を解説 | 終活コラム | 終活サポートなら終活協議会>
無効にしないための遺言書の書き方|意外と知らない5つの注意点とよくある質問を解説</a>

遺言書の内容が不公平な場合の対処法

遺言書の内容によっては、一部の相続人にとって不公平だと感じられることもあるでしょう。そのような場合に知っておきたいのが「遺留分」の制度です。

遺留分侵害額の請求調停 | 裁判所
出典:裁判所「遺留分侵害額の請求調停」

遺留分侵害額請求とは?

遺留分とは、一定の法定相続人に法律上保障されている、最低限の遺産の取り分のことです。遺留分が認められるのは、配偶者、子どもや孫などの直系卑属、親や祖父母などの直系尊属です。被相続人の兄弟姉妹や、その代襲相続人にあたる甥・姪には、遺留分は認められていません。

遺留分を侵害する内容の遺言があった場合、侵害された相続人は、遺贈や贈与を受けた方に金銭の支払いを請求できます。これを「遺留分侵害額請求」といいます。なお、令和元年7月の民法改正により、以前のような不動産の共有化ではなく、金銭での支払いに一本化されている点にも注意が必要です。

遺留分侵害額請求を行う際の流れ

遺留分侵害額請求は、一般的に次のような流れで進みます。まず、内容証明郵便によって、相手方に意思表示を行います。話し合いで合意できれば、合意書を作成して終了です。

合意に至らない場合は、家庭裁判所へ「遺留分侵害額の請求調停」を申し立て、調停委員を交えて話し合いを進めます。それでも解決しなければ、訴訟に発展することもあります。

ここで注意したいのは、家庭裁判所へ調停を申し立てるだけでは、相手方への意思表示にはならないという点です。調停の申立てとは別に、内容証明郵便などで明確な意思表示をしておく必要があります。

遺留分侵害額請求の期限に注意

遺留分侵害額請求権には、厳格な期限が設けられています。相続の開始および遺留分の侵害を知ったときから1年が経過すると、時効によって権利が消滅します。知らなかった場合でも、相続開始のときから10年が経過すると請求できなくなります。1年という期間は、決して長くありません。

期限が迫っている場合は、できるだけ早く内容証明郵便で意思表示をしておくことが重要です。不安があれば、早めに専門家へ相談しましょう。

知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】 | 政府広報オンライン
出典:政府広報オンライン「知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】」

遺言書がある相続に関するFAQ

最後に、遺言書がある相続についてよく寄せられる質問にお答えします。

遺言書がとくに必要になるケースはどういうものですか?

遺言書がとくに重要になるのは、大きく2つのケースです。ひとつは、法定相続人ではない方に財産を残したい場合です。婚姻関係を結んでいない内縁関係にある方や、生前お世話になった方は、法律上の相続人にはあたりません。遺言書がなければ、その意思を実現できないのです。

もうひとつは、相続人同士の関係が複雑になりやすい場合です。相続人となる親族が多い、あるいは日頃の交流が少ない親族が含まれるケースでは、遺産分割協議が長引きがちです。こうしたケースにあてはまるときは、早めに遺言書を準備しておくと安心です。

遺言書作成は誰に依頼すべき?メリットと選び方を解説 | 終活コラム | 終活サポートなら終活協議会
遺言書作成は誰に依頼すべき?メリットと選び方を解説

遺言書の内容は変更できますか?

遺言書は、一度作成したら変更できないわけではありません。何度でも書き直すことができます。複数の遺言書が見つかった場合は、日付がもっとも新しいものが優先されます。心境や家族環境、財産状況の変化に応じて、内容を見直していけるのです。

遺言書がない場合の遺産相続はどうなりますか?

遺言書がない場合は、民法で定められた法定相続分を目安に、相続人全員で「遺産分割協議」を行い、遺産の分け方を決めなければなりません。相続人が一人でも欠けたり、話し合いがまとまらなかったりすると、預貯金の解約や不動産の名義変更が進められなくなります。最悪の場合、調停や訴訟に発展することもあるでしょう。

こうした話し合いが長引くと、不動産の相続登記が遅れるおそれもあります。2024年4月1日からは相続登記の申請が義務化されており、正当な理由なく期限内に登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があるため注意しましょう。

法務省:相続登記の申請義務化について
出典:法務省「相続登記の申請義務化について」

まとめ

遺言書がある場合の相続手続きは、種類や検認の要否によって進め方が異なります。正しく作成されていなければ、無効になることもあるでしょう。流れを知っておけば、落ち着いて対応できます。

とはいえ、遺言書の作成や遺留分への対応は、弁護士や司法書士といった専門家の領域です。その前段階にある「終活として何をし、誰に何を託すか」を一人で整理するのは、簡単ではありません。

そこで頼りになるのが、一般社団法人 終活協議会の「心託(しんたく)サービス」です。専門のコンシェルジュが窓口となり、生前の「法人の身元保証サービス」としての「身元保証人」の引き受けから、もしものときの「死後事務委任契約」の代行まで、幅広くサポートします。

全国47都道府県対応、20年以上の実績があります。まずは無料の資料請求・説明会からご相談ください。

資料請求はこちら

一般社団法人 終活協議会では、終活に関する相談を受け付けております。

お困りの際にはぜひお問い合わせください。

監修

竹内義彦
竹内義彦一般社団法人 終活協議会 理事
1969年生まれ、大阪出身。
2012年にテレビで放送された特集番組を見て、興味本位で終活をスタート。終活に必要な知識やお役立ち情報を終活専門ブログで発信するが、全国から寄せられる相談の対応に個人での限界を感じ、自分以外にも終活の専門家(終活スペシャリスト)を増やすことを決意。現在は、終活ガイドという資格を通じて、終活スペシャリストを育成すると同時に、終活ガイドの皆さんが活動する基盤づくりを全国展開中。著書に「終活スペシャリストになろう」がある。

この記事をシェアする

資料請求 矢印 電話相談 矢印