「終活」という言葉が少しずつ認知されてきていることで、自分の死後について考えるようになった人が増えてきていると思います。
しかし、自分の身の回りの物を整理する「生前整理」は、「実施した方が良いのは分かっているけど、先のことだし面倒だから」と、先送りしている方が多い様に感じます。
また、生前整理に取り組もうと決心しても、「どこから手を付け、どのように進めれば良いのか」わからないことも多いものです。
そこで今回は、生前整理とはどういったもので、なぜ必要なのかを説明し、生前整理はいつから始めるのが良いか、具体的な進め方を解説します。
生前整理とは?
生前整理とは何かを簡単に説明すると、高齢者本人が亡くなった後に遺族へ迷惑を掛けないために、「生前のうちに自分の持ち物や財産を整理すること」です。
生前整理が必要な理由
家族であっても、どこに何があるのか全く分からない状態の遺品を整理するのは、かなり骨が折れる作業です。高齢者本人の大切なコレクションや、写真などの思い出の品は、処分して
良いものか判断がつかないでしょう。また、手紙や日記などの中には、家族にも見られたくないものが残っているかもしれません。
そこで、生前整理をすることによって死後の遺品整理をする家族の負担を減らし、家族にも
見られたくないものを事前に整理しておくことで、安心した老後を過ごしていくために、
生前整理は必要なのです。
遺品整理との違い
生前整理と似た言葉で、遺品整理があります。
遺品整理とは亡くなった後に、高齢者本人の「身の回りの物や財産」を、遺族などで整理することです。一方、生前整理は、生きているうちに高齢者本人が整理することを言います。遺品整理と生前整理では、誰がいつ行うのかの違いがあります。
老前整理との違い
似た言葉に老前整理というものもありますが、生前整理と同様、生前に身の回りを整理することを指します。
生前整理と老前整理は、どちらも生きているうちに自分の物を処分するということは同じですが、老前整理は高齢者本人の老後を快適に過ごすため、若いうちに身の回りの整理を行うことを指します。一方、生前整理は高齢者本人が亡くなった後に、家族の遺品整理の負担を減らすために整理を行うことを指します。
生前整理の5つのメリットを紹介
生前整理をしておくことで、終活として5つのメリットが挙げられます。
1:遺品整理の負担を軽減
高齢者本人が亡くなった後は、一般的には遺族が遺品の整理をします。しかし、どこに何がどのくらいあるのか全く分からない状態から着手するとなると、全ての遺品を整理し終わるまでには、多大な労力と時間がかかります。
同居している家族であっても大きな負担ですが、離れて暮らしている家族の場合は使える時間も限られており、家族だけで整理・処分しきれないことも珍しくありません。
高齢になるほど身の回りの物が増えていく傾向があります。生前に不要なものを処分し、必要なものだけにしておくことで、遺品整理をする家族の負担を大きく軽減できます。
2:相続トラブルを避ける
遺族の間で相続の手続きが行われる中、まずやらなければいけないのが、相続の対象となる全ての財産を明確にすることです。整理されていない状態で高齢者本人が亡くなってしまった場合、相続の対象となる財産の内容に漏れが生じてしまう可能性があります。
遺産分割協議を行った後に新しく相続の対象となる財産が見つかった場合、遺産分割をやり直す必要が生じてしまい、遺族間で揉める原因となります。
そのため、生前整理を行い「重要書類や必要書類の保管場所」を明らかにして「誰に相続してほしいか遺言書などへ希望を記しておくこと」で、相続の手間を省き、相続人同士のトラブルを防ぐことができます。
3:部屋が快適になる
不要な物を処分し、身の回りの物を必要最小限にすることで、室内がすっきりして広く
使える様になります。生前整理が終わった後も、この状態を保ちたいと思うようになり、
余計な物を買わなくなります。
また、部屋が整理されることで頭の中も整理されて、気持ちも前向きになっていきます。
4:もしもの時に備えることができる
生前整理は、急な病気やケガで入院する必要が生じた場合や、認知症にかかり施設へ入居することになった場合にも役立ちます。
病院への手続きや、施設への入居時に必要な書類等をまとめて、すぐに取り出せる場所へ保管することで、手続きを迅速かつスムーズに進めて行くことできます。生前整理は、もしもの時にお世話をしてくれる人の負担を軽減してくれます。
5:大切な物を引き継げる
自分が大切にしていて、家族に引き継いでもらいたい物があれば、生前整理時に仕分けする
ことで、不用品に紛れてしまうのを防げます。
趣味のコレクションや、思い出の品などは、他の人にとっては価値が分かりにくいものです。そのため、不用品と一緒に処分されることがなくなります。
生前整理の2つのデメリットを紹介
生前整理には多くのメリットがあることを紹介しましたが、デメリットもあります。
1:時間と労力がかかる
生前整理は1日2日で終わるものではありません。資産を明確化して、リスト化していくだけでも大変ですが、長年溜め込んだ身の回りの物を仕分け、不要なものを処分し、残しておきたい物を片付ける作業は、相当な時間が必要になります。また、整理するためには体力も必要です。日常生活を送りながら、作業をしていくのは、簡単なことではありません。
2:お金がかかる
不要になって捨てると決めた粗大ごみや家電製品などは、処分するのに費用がかかります。また、自分だけでは生前整理がやり遂げられず専門業者に作業を依頼する場合、業者に支払うお金が必要になります。ただ、作業量が多い場合には、業者へお願いした方がコストパフォーマンスの高い場合が多々あるため、生前整理をはじめる前に見積もりを取ることをおすすめします。
生前整理の進め方
生前整理の進め方を3つの手順に分けて、以下で解説します。
1:仕分けと処分
生前整理は、不用品の仕分けと処分をすることから始まります。家具や家電製品などの
「身の回り品」、銀行口座・カード・不動産・有価証券など「資産に関する物」、パソコンやスマートフォンなどの「デジタルデータ類」や、「思い出の品」の4つに分けて仕訳と処分をしていきます。
身の回り品
身の回りにある家具、家電製品、書籍、衣類、食器類などで、使わずに家の中で眠っている物が数多くあると思います。部屋が散らかってしまう人の多くは、物を捨てるのが苦手です。「あると便利だから」「そのうち使うから」と理由をつけて保管しておきながら全く使わず、そのままになっていることが多いようです。
そこで、何年も使ってない物は、この先も使わない可能性がとても高いため、「何年使っていなかったら処分する」といったルールを決めるなどして、不用な物を仕分けていきましょう。
一気に仕分けを行うと作業量の多さで大変なため、日を分けて計画的に進めていきましょう。
また不用品の処分については中古品として買取りしてもらえる物もあるため、まとめて査定してもらうと良いでしょう。業者によっては、買取りの際に値段がつかなかったものを処分してくれる場合もあります。
不用品処分業者に依頼する場合は、複数社の見積もりをとって各業者の料金を比較することをおすすめします。
資産に関するもの
利用していない銀行口座、カード類は早めに解約しておくことがおすすめです。作ったことを忘れていたクレジットカードを紛失して、気付かないうちに使われてしまっていたというケースもあります。口座やカードの解約は、本人以外が手続きをするとなると大変なため、本人で解約手続きを済ませておきましょう。
また、不動産や有価証券などに関わる重要書類は、書類種類ごとに分けてファイリングしてまとめておきましょう。
デジタルデータ類
不要なデータを大量に取っておくと、デジタル機器の性能低下につながることがあります。不要なデータを仕分けして、こまめに消去しましょう。また、あまり利用していないデジタルサービスやサブスクリプション等は、この機会に解約しておきましょう。
人に見られたくないデータがある場合は、パソコンを一定期間起動しなかった場合に、自動的にファイルを消去してくれるソフトなどがあるため、必要であればそういったものの使用を検討しても良いかもしれません。
趣味の物、思い出のある物
趣味のコレクションや、思い出の写真、手紙などは、処分に悩むものです。本当に残しておきたいもの以外は、デジタル化してデータで残し、実物は廃棄するケースも増えています。
ただ、趣味で集めたコレクションの中には、データに残すのが難しいものもあります。
そういった大切なコレクションを「処分するか?しないか?」家族の間で問題になった場合、どうしても残したい物があれば、生活の邪魔にならないことを条件に、残すことの許可をもらいましょう。それ以外の物はトランクルームなどの自宅外の保管場所を借りて保管するか、
思い切って処分するかは家族と話し合い、最適な選択肢を見つけてください。
2:整理をする
不用品を廃棄した後は、残す物を整理します。
身の回り品
日常生活でよく使う優先順位の高い物は、引き出しやクローゼットの奥にしまうと取り出しづらくなるため、取り出しやすい場所へ置くのがおすすめです。
また、仕分けした物を整理する際には、高い場所に置くのはなるべく避けたほうが良いでしょう。高い所から物を取り出そうとした際に、踏み台から落ちて怪我をする恐れがあります。
さらに、地震で物が落ちてくる恐れもあるため、手の届く低い場所へ置くことをおすすめします。
資産に関する物
通帳やカードなど、お金に関する物は盗難リスクがあるため、自宅の金庫へ保管するのがおすすめです。
明らかに貴重品が入っているであろうことが分かりやすい金庫よりも、自宅の目立たない場所や意外な場所に隠した方が良いとも言われますが、金庫に保管する方がおすすめです。
押入れの中や食器棚、洋服ダンスの中など分かりづらい場所へ保管すれば万が一空き巣に入られても見つからないだろうと思っていても、泥棒は意外な場所に貴重品を隠す心理を理解した上で
入ってきます。そのため、上手く隠したと思っていても見つかってしまう可能性が高いです。
あとは、複雑な場所へ隠すことで、カードや通帳などが細かい隙間に転がり落ちてしまい、探すのに一苦労する場合があります。
結果的にセキュリティが一番しっかりしている金庫に保管するのが最も安心です。
また、不動産や有価証券などの重要書類も金庫への保管が良いと思います。ただ、書類関係は、重要であっても普段使用することが少ないため、自宅に置いていても確認する習慣が薄れてきます。
そこで、セキュリティの万全な貸金庫などを利用して、家に重要書類を置かないようにするという選択肢もありかと思います。
趣味の物・思い出の物
趣味で集めたコレクションや思い出深い物は、インテリアとして見せる収納を考えるのがおすすめです。好きな物を目に見える場所へ置いておくことで、生活空間を充実させて、
「老後を楽しく過ごそう」といった気持ちへと繋がります。ただし、日常生活を妨げない様な収納方法を第一にしましょう。
3:記録を残す
仕分けと処分、整理が終わったら、最後に記録を残しましょう。記録を残すことで死後に家族が遺品整理をしやすくなり、家族間での相続問題で揉めごとを回避したり、家族へ想いを伝えることができます。
エンディングノートに残す
本人の死後について要望や想いを書き記し、記録を残しておくのがエンディングノートです。エンディングノートには、遺品の扱い方や、財産の継承についても
記しておくことができます。
⇒エンディングノートおすすめの書き方を業界関係者が解説
遺言書を作成する
相続に関しては、エンディングノートに記載しても法的な効力はありません。そのため、遺産分割をして継承したい場合は、遺言書を作成する必要があります。
遺言書の作成には、相続財産のリストアップが重要です。生前整理で身の回りを綺麗にすることで、保有している財産を整理する時間と気持ちの余裕ができるため、遺言書の作成が
スムーズになります。
⇒意外と知られていない遺言書の「知っておきたい事」「注意点」について業界関係者が紹介
生前整理を始めるのに最適な時期
生前整理をはじめるのに最適な時期はいつなのか、考えてみましょう。
1:思い立った時
生前整理はどのタイミングから始めても良いものですが、ある日突然、動けなくなる時が来るかもしれません。そう考えると、思い立ったらすぐに生前整理をしておいたほうが良いでしょう。
自分の持ち物の整理は、自分で行うのが一番です。何を残し、何を捨てるのか判断できるのは自分しかいません。体が自由に動き、気力があるうちに生前整理をすることをおすすめします。
2:子供が家を出た時
進学や就職、結婚などで子供が家を出たタイミングは、部屋が空くことで整理した物を置く新たなスペースができるため、生前整理に取り組む良い機会といえるでしょう。
また、自分の死後に、葬儀や事務手続きで心身ともに疲弊している状況で遺品整理まで行うのは、子供にとって大きな負担となります。そのため、生前整理をしておくことで遺品整理に取り組みやすい環境を作るのは、家族の負担を少しでも和らげるためにはとても大切なことです。
3:定年退職した時
生前整理に取り組むためには、まとまった時間が必要になります。そこで、自由に時間が
取れるようになる定年退職の後は、生前整理をスタートするには良いタイミングです。仕事に
追われることなく、集中して生前整理に取り組むことができます。
生前整理はこれからの人生を前向きに見直す大切なきっかけ作り
生前整理は身の回りのことや、これまでに積み重ねてきたことを振り返り、整理することで、残りの人生を充実させていくための重要な活動です。
生前整理に取り組み、これからどのように生きていくか、考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
生前整理についてお悩み事やご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。専門知識の豊富な当社スタッフが生前整理について、迅速かつ誠心誠意ご相談にお答え致します。365日 (受付時間10:00~17:00) 対応していますので、お気軽にお電話ください。
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監修
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1969年生まれ、大阪出身。
2012年にテレビで放送された特集番組を見て、興味本位で終活をスタート。終活に必要な知識やお役立ち情報を終活専門ブログで発信するが、全国から寄せられる相談の対応に個人での限界を感じ、自分以外にも終活の専門家(終活スペシャリスト)を増やすことを決意。現在は、終活ガイドという資格を通じて、終活スペシャリストを育成すると同時に、終活ガイドの皆さんが活動する基盤づくりを全国展開中。著書に「終活スペシャリストになろう」がある。
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