生前墓とは、「高齢者本人が生前のうちに建てるお墓のこと」をいいます。今までお墓は亡くなった後に建てることが一般的でしたが、近年では終活の認知度が高まってきたことに加え、お墓を建てることに対する考え方も変わってきたため、生前墓を検討するケースが増えています。
そこで今回は、生前墓を建てるメリットやデメリット、建てる際の注意点、生前墓を準備する流れを紹介します。
目次
生前墓を建てる目的
お墓を建てることは、故人の霊を封じ込めることや、装飾品などを一緒に埋葬し、故人を弔うことなどが主な目的です。その中で、生前墓は生前中にお墓を建てるため、従来のお墓を建てることに加えた新たな目的があります。生前墓は高齢者本人が亡くなった後の遺族に対して、精神的な負担をかけたくない、金銭的な負担を減らしたい、相続税を軽減することができる、などのメリットがあります。こうした理由から、遺された家族を思い遣る方々に、生前墓が選択肢の一つとして選ばれるようになってきました。
生前墓の建立が増えた背景
超高齢社会を迎えるにつれて、生前からお墓について語る機会が増え、お墓を建てる目的を考える時間が増えてきています。お墓を建てることについて話し辛かった風潮は過去のもので、生前にお墓を建てることを前向きにとらえ、亡くなる前にお墓について考える流れが積極的に広まってきています。生前墓が増えた背景には現代の社会構造や、生前のうちにお墓を建てることに対する価値観の変化があります。
生前墓を建てるメリット
生前墓を建てるメリットを紹介します。生前にお墓を建てることには、「死後の不安を軽減できる」「本人の意向をお墓に反映できる」「遺族の精神面や金銭面での負担を軽減できる」といったメリットがあります。
1:高齢者本人の精神的な安堵感
高齢者本人は自身が亡き後、どのように埋葬されるのか、無下に扱われないかなどの不安を感じることもあるでしょう。生前墓は本人の希望に基づいてお墓を建てることができるため、死後の不安を取り去り、精神的な安堵感を得ることができます。
2:遺族の精神的な安堵感
高齢者本人の故郷が遠隔地にあり、遺族が墓参りに行くことが大変などの理由で、遺骨が自宅に置かれたままというケースがあります。そのため、故人のお墓をどうするのか早い段階から決めておかないと、遺族にとっては多大な精神的な負担を与えてしまいます。しかし、生前にお墓を準備しておくことで、故人を適切な形で供養できます。
3:遺族の費用面を軽減
お墓の建設は、それなりの費用がかかります。墓地やお墓の様式によっては100万円を超える費用が必要になることも考えられます。従来は故人のお墓の費用を「遺族の誰がどの位負担するのか」を没後に決めることが一般的な考えでした。しかし、生前お墓を建てるのであれば、高齢者本人が自分で費用を調べて負担することができるため、遺族への金銭的な負担を軽減することができます。
4:相続税対策になる
お墓は非課税財産になりますが、死後にお墓を建てるために現金を遺贈する場合、その金額に相続税がかかってしまいます。生前にお墓を建てておくことで、親族が遺産を受け取った際の相続税を軽減することができます。
5:自分の納得いくお墓選びができる
高齢者本人が元気なうちに生前墓を建てることで、本人が好きな場所の霊園を選ぶことができ、好きなデザインのお墓を建てることができます。なお、あまりに突飛なデザインは墓地によっては断られる可能性があるため、デザインの自由度がどの位あるのか事前に調べておきましょう。
生前墓を建てるデメリット
生前墓を建てるデメリットを紹介します。「一度建ててしまうと後戻りしにくい」「お墓の維持にお金や労力が要る」といったものが主なデメリットです。そのため、生前墓を建てる際には「本当に今お墓を建てる必要性があるのか」ということを、気を遣わずに家族で話し合うことが、デメリットを避けるための大切な要素になります。
1:墓地管理費の発生
お墓を建てた後、遺骨をお墓に納めていない場合でも、墓地によっては墓地管理費を継続して払う必要があります。墓地管理費を支払うお墓を購入した場合、年間で数千円~数万円ほどかかります。現在、最も普及している一般墓の墓地管理費は、年間で1万円前後が相場になります。
2:定期的なメンテナンスが必要
墓石は丈夫とはいえ、時間とともに劣化します。お墓は屋外に設置されていることが多く、土やほこりで汚れてしまうほか、周りに雑草が生えることもあるため、定期的な掃除や除草が必要になります。さらに経年劣化による変色や破損のリスクや、地震による墓石のズレや倒壊といった可能性もあるため、定期的に墓地を訪れてメンテナンスをする必要性が生じます。
3:遺骨がないと購入できない場合がある
墓地によっては緊急の必要がある人を先に考慮して、遺骨がないとお墓を購入できない場合があります。そのため、お墓を前もって購入することができるのか、霊園や寺院墓地に確認することが重要です。
生前墓を建てる際の注意点
生前墓を建てるにあたって、事業者と契約をする際、いくつか注意しなければいけない点があります。購入方法、維持管理の注意点、事業者の信頼性を事前にしっかり確認しましょう。
1:分割購入時の注意
お墓を購入する際に分割払いの契約をした場合、費用を完済する前に万が一契約者が亡くなってしまうと、連帯保証人や遺族が残債を支払うことになります。そして、残債は債務控除の対象外になります。そのため、生前墓は一括払いでの購入が望ましいですが、分割での購入を考えている場合は、契約者以外の人間が、残債を支払う可能性があることを把握しておきましょう。
2:お墓の管理者を決めておく
お墓を建てる際には、墓の維持管理を担当する「墓守」の存在が不可欠です。そのため、生前墓を建てる場合は、必ず墓守と将来の管理方法をはっきりさせておくことが必要です。また、墓守が不在となり継承者がいなくなってしまった場合、無縁墓になるリスクが生じ、墓じまいの検討などをする必要性が出てきます。そのため、将来の管理計画をしっかりと立てて、整えておくことが重要です。
3:事業者の情報を事前に確認
生前墓を建てる際、民間墓地の場合、事業者が将来経営難に陥ることも考えられます。万が一事業者が経営破綻しても、法律の規定により墓地は移動することができないため、お墓自体は存続できます。ただし、経営が他の事業者に変わることで、墓地管理費が値上がりしたり、管理方法のルールが突然変わるかもしれません。将来の不安を取り除くために生前墓を建てたにも関わらず、結果的に大きな不安を残してしまう恐れがあります。そのため、事業者の経営状況は、事前に調べておきましょう。
生前墓を準備する流れ
生前墓を準備する流れを解説します。大きく分けると、「契約前の準備」「事業者との契約」「お墓の引き渡し」の3つになりますので、順にお伝えします。
ステップ1:契約前の準備
生前墓を建てる際に、家族に生前墓を建てることについて意思表示をして、家族からの理解を得ることが大切です。家族からの理解を得ることができたら、生前墓の資料請求をします。インターネットや専門誌などで資料請求ができるため、複数社から資料を取り寄せてみましょう。そして、気になる墓地へ見学にいき、自分の希望に合っているかを確認しながら、最も自身に合った事業者を選びましょう。
ステップ2:事業者との契約
事業者を選定したら、お墓を建てるための打合せを行います。自分の希望するデザインや、墓石の種類、料金内容などを改めて確認して、事業者と生前墓の計画を固めます。
内容が決まったら、事業者との契約を進めていきます。サービス内容や費用、支払方法について認識の相違がないように、疑問点があれば契約前に必ず確認しましょう。事業者との契約が完了したら、お墓の工事が始まります。お墓を建立するための工事期間は、おおむね1~3ヶ月程度です。
ステップ3:お墓の引き渡しと開眼供養
工事が完成したら、お墓の引き渡しとなり、開眼供養の法要を施します。開眼供養は仏教の儀式で、この儀式を行うことで、墓石を礼拝の対象と見なします。多くの宗派では開眼供養を行わないと納骨などは行えないとしていますが、宗派によっては行わない場合もあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。なお、開眼供養を行う場合、僧侶や親族などの関係者が参集する儀式となるため、お布施やお供えもの、会食の料理代など、おおむね10万円程の費用が必要となります。
生前墓についての疑問やお悩みを専門家が誠心誠意お答えします
生前墓について、建てるメリットやデメリット、注意点、生前墓を準備するための流れについて解説しました。従来、生きている人が自分のお墓の話をすることは避けられる傾向にありました。しかし、終活の人気が高まり、お墓に対する認識も変わってきたことから、生前墓を検討する人が増えています。終活の中でも大きな意味合いを持つ、お墓について、生前墓の認識を深め、お墓を建てる選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。
最後に、生前墓について疑問や悩みがございましたら、一般社団法人 終活協議会へ、お電話からお問合せください。当社専門スタッフが生前墓について、誠心誠意ご相談にお答え致します。生前墓に関するサービスを、無理矢理契約させる様な営業は一切行いませんので、まずはお気軽にご連絡ください。お電話は365日(受付時間10:00~17:00)全国対応しています。また、会社やサービスについて資料請求をご希望の方は、下記ページより資料請求が可能です。24時間365日受け付けておりますので、お問い合わせください。
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監修
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1969年生まれ、大阪出身。
2012年にテレビで放送された特集番組を見て、興味本位で終活をスタート。終活に必要な知識やお役立ち情報を終活専門ブログで発信するが、全国から寄せられる相談の対応に個人での限界を感じ、自分以外にも終活の専門家(終活スペシャリスト)を増やすことを決意。現在は、終活ガイドという資格を通じて、終活スペシャリストを育成すると同時に、終活ガイドの皆さんが活動する基盤づくりを全国展開中。著書に「終活スペシャリストになろう」がある。
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