2022年11月7日

おひとりさまの老後資金を貯める方法を業界関係者が紹介

おひとりさまの老後資金を貯める方法を業界関係者が紹介の画像

おひとりさまとは、ジャーナリストの岩下久美子さんが2001年に発刊した『おひとりさま』という著書によって、はじめて提唱された言葉です。おひとりさまというと、一人暮らしをしている生涯未婚の人というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、未婚だけではなく、死別や離別といった理由からおひとりさまになるケースもあります。
老後に予期せぬことからおひとりさまになる可能性があるため、老後のさまざまなことに不安を感じている人も多くいます。
その中でも特に気になるのが、老後資金の問題です。老後の資金問題では、どのような事態を想定しなければならないのか、1ヶ月にかかる生活費はどれくらいなのかなどを考える必要があります。そこで今回は、おひとりさまは老後どれくらいの資金が必要なのか、どのようにして資金を貯めれば良いのかを解説します。最後まで読んで、安心した老後を送るための参考にしてください。

おひとりさまの老後リスクについて

今は家族と同居していても、子供が独立したり伴侶と死別したりして、最後にひとりになる可能性は誰にでもあります。子供や兄弟がいなければ、金銭面で頼れる人が身近にはいません。

その中で、老後のさまざまなリスクに備えて、できるだけ早くから資金面での対策を講じておく必要があります。老後の資金計画を考える上で、以下4つの老後リスクを考慮しましょう。老後リスクを回避し解決していくためには、トラブルが起きた際に対応するための資金を蓄えておく必要があります。

1:健康面でのリスク

人は加齢とともに体が衰え、筋力や反射能力の低下から、今まで苦労せずにできていたことが、いずれできなくなってきます。

ちょっとした段差につまずくことも多くなり、転倒しても咄嗟に手が出ず顔面や頭部を強打して大怪我につながるケースもあります。

転倒しても同居家族がいればすぐに対応が可能ですが、おひとりさまの場合、発見が遅れて事態が悪化するケースは十分に考えられます。

一人暮らしの高齢者は、同居人のいる場合に比べて病気・ケガに対し迅速な対応ができないリスクが高くなることを覚悟しなければなりません。入院や通院が必要になった際にはお金も必要となってくるため、資金面の余裕が非常に重要になってきます。

2:孤独によるリスク

おひとりさまの場合、身近にコミュニケーションを取る相手がいないため、人と話す機会が極端に少なくなることがあります。社会との繋がりが乏しくなることは、心身共に不調をきたす原因にもなります。さらには、認知症の悪化や、体調の悪化に対して対応行動を取ることができず、孤独死に至るケースも考えられます。
そうならないためには、他の人とのコミュニケーションなど、何らかの社会活動が有効ですが、社会活動には幾ばくかのお金が必要になることもあります。

3:経済面でのリスク

一人暮らしの場合、家族と同居するのに比べて一人当たりの金銭的負担は多くなる傾向があります。特に住居費・光熱費・食費はその傾向が顕著です。

また、独居であっても離れて暮らす子供や兄弟がいれば、いざという時に資金面での援助をお願いすることもできますが、身近に血縁者がいなければ金銭面でも頼れる人はいません。

4:身元保証のリスク

病気になって入院したり高齢者施設に入所する際に、身元保証人を求められることがあります。そこで、もしおひとりさまであれば、身元保証人を頼める人がいない可能性を考慮する必要性があります。また、賃貸住宅に入居する場合、高齢者だけでは断られるケースがあります。特に同居する親族がいない場合は孤独死のリスクが高まるため、断られるケースが多いようです。
孤独死のあとに入居する借り手が見つかりにくいことや遺品の整理・処分も貸し手にとっては大きな問題です。そのため、身元保証代行サービスを利用するための資金を蓄えておく必要も生じてきます。

おひとりさまの老後リスクについて対策方法を知りたい方は、以下コラムを参照ください。
おひとりさまの老後にはどの様なリスクがあるのか業界関係者が解説

おひとりさまの老後にかかる1ヶ月あたりの生活費

2022年に総務省が行った調査に基づくと、65歳以上のおひとりさまの1ヶ月当たりの生活費は、平均で約143,000円です。もちろん、都市部と地方部では異なります。
また、持ち家の場合は基本的に住居費は必要ないため、賃貸の場合とは大きな差が出ます。一方、2022年に総務省が行った調査に基づくと、実収入から税金や社会保険料を引いた可処分所得は平均で約123,000円のため、この計算に基づくと毎月2万円程度の赤字です。
このことから、老後のために早くからお金を貯めることが非常に重要になってきます。

項目月平均額(円)
食費37,485
住居12,746
光熱・水道14,704
家具・家事用品5,956
被服及び履物3,150
保険・医療8,128
交通・通信14,625
教養娯楽14,473
その他消費支出31,872
合計143,139

参照:2022年(令和4年)家計調査報告(総務省統計局)

おひとりさまが老後に受け取れる年金額の確認方法

老後に受け取れる年金額は、収入や年金などの要件によって大きく異なります。例えば、年収300万円で20年間保険料を納付した場合、受け取れる厚生年金額は年間でおよそ33万円です。詳しくは以下3つの方法で確認してください。

1:ねんきん定期便を確認する

毎年誕生月に送られてくるねんきん定期便には、年齢によって多少異なりますが、保険料納付額・年金加入期間・これまでの加入実績に応じた年金額などが記載されています。
35歳・45歳・59歳には、さらに詳しい情報が記載された封書版のねんきん定期便が送られます。

2:ねんきんネットにアクセスする

ねんきんネットを利用することで、オンラインでいつでも自分の年金記録や将来受け取る見込額を確認できます。ねんきんネットへの登録には、マイナポータルから登録する方法とねんきんネットのユーザIDを取得する方法の2種類があります。ユーザIDの取得には、基礎年金番号とメールアドレスが必要です。
ねんきんネットは以下リンクからアクセスできます。
ねんきんネット

3:公的年金シミュレーターで試算する

厚生労働省の公的年金シミュレーターは、利用者登録などの面倒な手続きなしで将来の年金を試算できます。入力する条件を変えることによって様々なシミュレーションが可能です。
公的年金シミュレーターは以下リンクからアクセスできます。
公的年金シミュレーター

おひとりさまの老後資金を貯める方法

老後に必要となる費用と受け取れる年金額のシミュレーションによって、老後の大まかな収支状況がわかります。毎月の収入・支出に加えて、預貯金やその他の金融資産も含めて、老後の資金に不足が生じる可能性がある場合は、資金を増やす方法を考えなければなりません。そこで、老後を安心して過ごすために資金を増やす方法を紹介します。

1:年金を増やす

少しの工夫をすることによって、受け取る年金を増やすことが可能です。

1-1:年金を繰り下げて受給する

年金は65歳から受給することができ、60~75歳の間で「繰り上げ(65歳より前に減額された年金を受け取る方法)・繰り下げ(66歳以後に先送りして増額された年金を受け取る方法)」による受給方法があります。
受け取る年齢を先に延ばす (繰り下げ)ほど、毎年受け取れる年金の額は増えます。繰り下げ・繰り上げは1ヶ月単位での設定が可能で、増額率の計算式は以下の通りです。

増額率=0.7%×(65歳に達した月から繰り下げ申請月の前月までの月数)

例えば、ちょうど70歳まで繰り下げた場合、65歳から70歳になるまでの月数は(70-65)×12で60ヶ月になります。

増減率は0.7%×(70-65)×12 = 42%

つまり、65歳でもらえる額に比べて年金が42%増える計算です。繰り下げは最大75歳までなので、増税率は最大84%です。

0.7%×(75-65)×12 = 84%もし当面の生活費に困らないようであれば、年金受給の繰り下げを検討することをおすすめします。

1-2:60歳以降も働く

最近は定年延長や定年後の再雇用が増えており、60歳以降でも働く方が増えています。会社員として働く場合、70歳まで厚生年金に加入できます。上記で解説した年金の繰り下げ受給はもちろん可能です。

2:手持ち資金を運用する

もし手持ち資金がある場合は、資金運用も選択肢の一つです。ただし、あくまでも老後に必要となる資金を確保するのが目的のため、リスクの高い投資は避けなければなりません。

以下の運用方法は手堅く資金を増やす方法として、下記2つの資金運用の利用者が最近増えています。

2-1:NISA/つみたてNISA

NISA(ニーサ)とは「少額投資非課税制度」のことで、個人投資家のために株式や投資信託で得られた利益を非課税にする制度です。

通常、株式や投資信託を売買して利益が出た場合20%の税金がかかりますが、NISAでは毎年一定金額までは非課税となります。

つみたてNISAは少額からの長期・積立・分散投資に適した制度です。一般のNISAに比べて1年間に運用できる金額が少ない代わりに、非課税期間が長期に設定されています。

2024年には制度が拡充されて、非課税限度額や非課税保有期間が増えてさらに使いやすくなる予定です。

もちろん元本割れする可能性もありますが、分散投資を長期間続けることによってリスクを大幅に軽減できるとされています。

2-2:iDeco

iDeCo(イデコ)とは個人型確定拠出年金のことで、自分で運用方法を選んで運用して、掛金と運用益の合計額を将来年金に上乗せして受け取ることが可能です。

iDecoもNISAと同様に、受け取る時に税制上の優遇措置があります。

3:支出を減らす

終活という言葉も定着し、実践している人も少しずつ増えてきました。
終活の中で重要な活動に断捨離があります。老後のお金の使い方も、断捨離の考えのもとで支出の無駄を見直してみましょう。特に以下の項目は要チェックです。

3-1:通信費を見直す

スマホの料金プランはかけ放題やパケット定額制などのプランが出来上がり、年々安くなっているキャリアもあります。契約内容を見直すことで、現在契約しているキャリアや端末はそのままで料金が安くなる可能性もあります。

スマホの料金プラン以外にも、契約しているサブスクリプションサービスを一度整理することで、利用していないサービスが見つかるかもしれません。また、電気・ガス代とインターネットをセットにするとお得になるプランもあるため、現状よりインターネット代のコストを削減ができるプランがあれば、契約の切り替えを検討してみてください。

3-2:地方に移住する

物価の高い都市部を離れて地方へ移住するのも、生活費を大きく削減させる手段の一つです。豊かな自然に囲まれて充実したセカンドライフを送りながら支出を抑えられれば、一石二鳥です。移住のための支援制度や補助金を設定している自治体もあります。ただし、移住のためにはある程度の資金と行動力が必要です。
また、地方特有のしきたりになじめずにトラブルに見舞われるケースもあります。
そのため、移住前に十分下調べすることや、移住希望先で短期間生活してみるなど、移住先のことを事前に理解しておくことが非常に重要です。

3-3:リバースモーゲージ/リースバックを利用する

リバースモーゲージとは、持ち家に住み続けながら自宅を担保にして毎月の生活資金を借りる仕組みです。借り入れていたお金は、死亡時に担保にしていた不動産の売却によって清算されます。

リースバックは、持ち家をいったんリースバック業者に売却して代金を受け取り、リースバック業者に賃料を払ってそのまま住み続ける仕組みです。リバースモーゲージとは異なり、売却代金を得ることができますが毎月家賃を支払わなければなりません。

相続人がいないおひとりさまにとっては、どちらも手持ちの不動産を有効に活用できる方法です。

老後の資産計画と資金対策は、計画性と迅速な行動が重要

おひとりさまに必要な生活費や老後資金を貯める方法について解説しました。安心・安全で快適な老後を過ごすためには「老後の収支をシミュレーションする」「様々なリスクを考慮して資金計画を立てる」「必要に応じて収入を増やし、支出を減らす方法を考える」の3つが重要です。また、前もって老後の計画を立てることも大切です。終活を始めるのに早すぎることはありません。可能な限り早めに老後の対策を始めることが、豊かな老後を送るための第一歩です。

監修

竹内義彦
竹内義彦一般社団法人 終活協議会 理事
1969年生まれ、大阪出身。
2012年にテレビで放送された特集番組を見て、興味本位で終活をスタート。終活に必要な知識やお役立ち情報を終活専門ブログで発信するが、全国から寄せられる相談の対応に個人での限界を感じ、自分以外にも終活の専門家(終活スペシャリスト)を増やすことを決意。現在は、終活ガイドという資格を通じて、終活スペシャリストを育成すると同時に、終活ガイドの皆さんが活動する基盤づくりを全国展開中。著書に「終活スペシャリストになろう」がある。

この記事をシェアする