




この記事の解説者

菊田あや子
一般社団法人終活協議会 理事

下関市出身、日本大学芸術学部放送学科卒業。
大学在学中にラジオ生放送の司会でデビューし、20歳からプロとして芸能活動をスタート。ワイドショーのリポーターで全国を飛び回り、90年代のグルメブーム以来、「日本一食べている女性リポーター」となりグルメ・温泉・旅番組で、持ち前の明るいキャラクターで活躍している。近年は「食育」「介護」「話法」「コミュニケーション」「おもてなし」など多岐に渡る内容で全国に講演活動を行っている。著書に「エンジョイ終活」がある。
おひとりさまとは、ジャーナリストの岩下久美子さんが2001年に発刊した『おひとりさま』という著書によって、はじめて提唱された言葉です。おひとりさまというと、一人暮らしをしている生涯未婚の人というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、未婚だけではなく、死別や離別という理由からおひとりさまということもあります。老後に予期せぬおひとりさまになる可能性もあります。
2019年の内閣府「高齢化の状況」によれば、「65歳以上人口は、3,589万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も28.4%となった」
「今後、高齢化率は上昇し、現役世代の割合は低下し、令和47年(2065年)には、65歳以上の者1人に対して1.3人の現役世代という比率になる」とあり、今後さらにおひとりさまは増加していくことが見込まれます。

おひとりさまとして老後を安心して楽しく生きるためには、どのようなことが必要でしょうか?
今回はおひとりさまに必要な老後資金、住まい、疾病時の対応、看取りなど、不安に思うことと、その対策を解説します。
目次
おひとりさまが老後に必要な金額
まずは先立つものは、おひとりさまの老後の貯金です。
おひとりさまを意識するのは若いときよりも、定年が近づく60代が多いですが、50代で老後貯金について真剣に考える人もいます。仕事をしていて定年が近づくおひとりさまもいれば、パートナーと死別や離別をすることで、おひとりさまになる場合もあります。自らの意思ではなく、おひとりさまになってしまう可能性のある60代こそ、老後資金について考えていく必要があります。
しかし世の中には「老後資金は2,000万円、3,000万円、5,000万円あれば大丈夫」など、さまざまな情報があふれています。
※参考資料:老後2,000万円問題のきっかけとなった報告書
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

2013年4月に「高年齢者雇用安定法」が改正され、希望者は原則65歳まで継続して働けるようになりました。とはいっても、厚生労働省「就労条件総合調査」(平成29年)によると、定年制を定めていない企業が4.5%しかありません。まだまだ働いて貯金をしたいと思っていても、その環境が整っていないのも事実です。
ここからは、50歳・60歳独身女性にスポットを当ててみていきます。
50歳独身女性は、定年する60歳まで10年あります。60歳独身女性は、定年後の就労継続を希望すれば、給与が定年前からは下がるとしても、定年からさらに5年長く働くことができるので、安定収入は得られます。さらに、日本年金機構によれば、65歳から年金が支給されるのでその分も収入になるので安心です。
しかしながら、厚生労働省の「簡易生命表(令和3年)」によると、2021年の日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳というデータがあります。50歳独身女性にとって残された時間は37. 57年、60歳独身女性だと27. 57年となり、残された時間は意外と長く、その間を生活していく資金がどうしても必要になってきます。若いときと異なり、元気に働ける期間はそれほど残されているわけではないので、計画的に老後資金を貯めていく必要があります。
おひとりさまの老後資金シミュレーション
50歳と60歳の働く独身女性の、老後資金に必要な金額をシミュレーションをしていきましょう。
総務省統計局によれば、一人暮らしの世帯(単身世帯)の1ヶ月間の支出は約12.6万円です。(内訳は食料3.8万円、住居2.2万円、交通通信1.9万円、娯楽教養1.7万円、その他の支出が2.9万円)
上記の条件で、女性の寿命87.57歳までの老後資金のシミュレーションをしてみたところ、以下の結果になりました。
50歳独身女性 1年151.2万円 10年1,512万円 寿命まで37.57年5,745.6万円
60歳独身女性 1年151.2万円 10年1,512万円 寿命まで27.57年4,233.6万円
また50代、60代それぞれの貯金について、金融広報中央委員会の家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和2年調査結果により以下のようなデータもあります。
平均貯蓄額 | 中央値 | 貯蓄額3000万以上 | 金融資産非保有 | |
---|---|---|---|---|
50代 | 924万円 | 30万円 | 7.6% | 41.0% |
60代 | 1,305万円 | 300万円 | 13.8% | 29.4% |
50代は貯金0円が41.0%と最も多く、60代の平均貯金額は1,305万円と多いものの、貯蓄がある人とない人で二極化しているのがわかります。
おひとりさまの年金暮らし
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」[単身世帯調査](令和2年)によると、年金に対する考え方については「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答した世帯は 52.6%と、前回(61.0%)と比べ低下し、他方「ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる」と回答した世帯は 41.4%と前回(35.0%)と比べ上昇しています。
上記の年金に関する回答からは「ゆとりはないけれどなんとか年金でまかなえる」という考えが増加している傾向にありますが、はたして、おひとりさまは年金だけで本当に暮らしていけるのでしょうか?
年金の支給開始は65歳からですが、厚生労働省が発表する「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金の平均受給額は、国民年金が約5.6万円、厚生年金が約14.4万円です。
国民年金の受給額は「保険料の納付月数」で決まります。20歳〜60歳までの40年間、毎月欠かさず保険料を納めていれば、令和2年4月分からの年金受給額は最大で65,000円(年間で781,700円)となります。
さらに働いている人は、国民年金に加えて、厚生年金をもらうことができます。厚生年金の受給額は「保険料の納付月数」と「収入額」によって決まるので、給与所得が多ければ多いほど年金の受給額も増加します。
しかも、50代・60代になれば住居ローンの支払いが終わる方も多く、子供からも手が離れるなどし、家計の支出は減る傾向にあります。
しかし、住環境(都会や田舎など)の違い、さらには世界情勢や金融情勢の変化による物価高のリスク、また、病気や介護などで、想定外の高額出費も予想され、それらの費用すべてを年金でフォローできるとは限りません。
ここからは、おひとりさまの老後資金をつくる方法を、いくつかご紹介していきます。
老後資金の作り方
日本には公的年金があるので、ある程度の老後の生活をカバーすることはできます。しかしながら、いつなんどき不測の出費があるかもしれません。年金を生活費のベースにすることはもちろんですが、年金とは別に、老後資金を自分の力で確保しておく必要はありそうです。
老後資金の作り方について、代表的なものをご紹介します。それぞれのメリットとデメリットを見て、老後資金づくりのヒントに役立ててください。
預貯金で貯める
預貯金とは、預金者が預けたお金に対して、金融機関が定期的な利息の支払いと将来の元本の支払いを保証している金融商品です。
メリット
元本割れがないため、安全に資産作りができます。
デメリット
超低金利のため利息には期待ができません。(現在、メガバンクの定期預金の金利は0.002%しかなく、例えば100万円を1年間預けても、わずか20円ほどの利息しか受け取れません)
金利による資産形成が難しい銀行ですが、提供するサービスである自動積立定期預金や財形貯蓄制度を利用して先取り貯金をすることで、自動的に資産が積み上がっていく仕組みを作るのがおすすめです。
ちなみに自動積立定期預金は、ある程度の金額が貯まってきたら、ネット銀行の定期に振り返るなど工夫することで、さらに効率よく貯蓄を増やすことも可能です。
※2022年10月現在、新生銀行の「スタートアップ円定期預金」(新規口座開設者限定、口座開設月を含む3ヵ月目の末日までの預け入れが対象。1口30万円以上)は、1年定期の金利は0.3%。メガバンクと比べ、150倍の利息を受け取ることも可能です。(メガバンク20円【税抜後16円】、新生銀行3000円【税抜後2400円】)
NISAとつみたてNISA
国が老後の資産作りとしての投資を後押ししてくれる制度の中に、「NISA」や「つみたてNISA」があります。一般的に株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、その売却益や配当益などに対して、約20%の税金がかかります。NISAやつみたてNISAはその税金が非課税になる制度です。(※一定の投資金額、限られた期間など条件があります)便利な制度として近年注目されています。
NISAには一般NISA、つみたてNISAの2種類があり、どちらか一方しか選べません。それぞれの特徴を知り、最適な方法を選んでください。
※NISAとつみたてNISA共通の注意点は、以下のとおりです。
- 1人当たり1口座に限定(ただし一定の手続きにより、一年単位で金融機関を変更は可能)
- 売却するとその分の非課税投資枠は減額、非課税投資枠の再利用は不可
- 残った非課税投資枠の、翌年への繰越は不可
NISA
メリット
- 小額から投資可能で始めやすい
- 一般NISA口座で年間120万円の範囲内で購入した金融商品から得た利益(配当金、譲渡益等)が非課税(5年間)、例えば資産運用で1年間で10万円の利益が出たとしても、非課税対象なのですべて受け取れるということです。(通常の証券口座では税金2万円を支払う必要があります。※その時点での税率で変わります)
- 確定申告不要(非課税のため)
- 購入回数に制限がないため、投資リスクを分散できる
デメリット
- 一般NISAで非課税で同時に保有できる金融商品は、最大で600万円まで(毎年投資した分の非課税期間はそれぞれ5年経つと順に終了していくため)※2024年以降、一般NISAが新・NISAになる予定で、非課税対象および非課税投資枠が変わります。詳しくは財務省「新NISA(令和2年度改正)」をご覧ください。
- 新規での投資が対象で、現在保有している株式や投資信託をNISA口座に移すことはできません。
- NISA口座内で発生した利益または損益と、他の口座(特定/一般)で発生した利益または損益を損益通算ができません。同様に、損失の繰越控除もできません。
つみたてNISA
メリット
- 少額投資できる(100円から可能)
- 1年間で40万円の非課税枠を20年間活用できる
- 金融庁が長期積立にふさわしいと認めた銘柄が購入できる(信託報酬に基準があるため、つみたてNISAで販売されている商品は、低コストで効率よく運用できる商品)
- 対象商品(公募株式投資信託)は、すべて購入時手数料が無料
- いつでも引出し(換金)できる
- 積立投資だから買うタイミングを悩まない
デメリット
- 積立投資でないと利用できない(年間投資金額が40万円なので、一度に多くの金額を投入不可能)
- 決められた投資信託、ETF(上場株式投資信託)でしか運用できない(金融庁が発表した2022年10月現在、つみたてNISAの対象商品は215本)
- 短期投資には向かない(コツコツと資産を増やす長期投資向けの制度であり、短期間で売買を繰り返して利益を狙いたい人は向かない)
- 損失が出た場合の税金対策ができない(つみたてNISA口座で出た損益は全て非課税になるため、損益通算も繰越控除もできません)
一般NISA | つみたてNISA | |
非課税投資期間 | 最長5年(ロールオーバー可) | 最長20年(ロールオーバー不可) |
非課税投資枠 | 120万円/年 | 40万円/年 |
投資方法 | 制限なし | 積立形式 |
投資対象商品 | 個別株式、投資信託、ETF、REIT | 投資信託、ETF |
投資可能期間 | 2023年まで(2024年からは新しいNISAに以降) | 2042年まで |
投資希望額 | 多めの人向き | 小額から始めたい人向き |
短期で資産形成を行いたい方は一般NISA、長期で資金形成したい方はつみたてNISAをおすすめします。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoとは、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に給付を受けられる私的年金制度の一つです。 公的年金と異なり加入は任意で、加入の申込、掛金の拠出、掛金の運用の全てを自分で行い、掛金とその運用益との合計額をもとに給付を受け取ることができます。
メリット
3つの税優遇制度があります。
- 掛金が全額所得控除
- 運用益が非課税
- 受け取る時に税負担を軽減する仕組みがある
iDeCoは「元本確保商品」と「投資信託」の運用商品が用意されていて、元本割れが心配な人は「元本確保商品」である定期預金などを選ぶことができます。また、iDeCoの運用商品にあるほとんどの投資信託は購入手数料がかかりません。
iDeCoから企業型確定拠出年金に、企業型確定拠出年金からiDeCo、iDeCoから他のiDeCoに移管処理が可能です。
デメリット
- 加入年齢が60歳未満
iDeCoは老齢給付金として受け取ることを目的としているため、積み立てた資産は原則、60歳以降まで引き出すことができません。(60歳時点で加入していた期間が10年以上あれば、60歳時点で受け取る権利があります)
- 掛け金に限度額がある(上限額は個人の属性によって異なります)
iDeCoに加入する場合、iDeCoを取り扱う金融機関(運営管理機関)を1社選ぶ必要があり、開設すると手数料がかかります(金融機関によって手数料が異なります。※三井住友銀行の場合、毎月260円(年間3,120円))
- 年金を受け取る際は課税される(iDeCo・確定拠出年金を年金として受け取る場合、65歳以上なら、公的年金等の収入が110万円以下であれば課税されることはありません。110万円を超える場合は、確定申告で税額を精算することになります。)
財形貯蓄制度
財形貯蓄制度は簡単に言えば、給料から天引きをして強制的に貯蓄に回す方法です。
財形貯蓄制度には、一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄の3種類があり、利子等に対する非課税措置や財形持家融資を利用できるなどのメリットがあります。
<勤労者財産形成貯蓄(一般財形貯蓄)>
勤労者が、金融機関などと契約を結んで3年以上の期間にわたって、定期的に賃金からの控除(天引)により、事業主を通じて積み立てていく貯蓄のことです。契約時の年齢制限はなく、複数の契約もできます。
<勤労者財産形成年金貯蓄(財形年金貯蓄)>
55歳未満の勤労者が金融機関などと契約(1人1契約)を結び、5年以上の期間にわたって、定期的に賃金からの控除(天引)により、事業主を通じて積み立て。60歳以降の契約所定の時期から5年以上の期間にわたって年金として支払いを受けることを目的とした貯蓄のことです。利子等に対する非課税措置があります。
<勤労者財産形成住宅貯蓄(財形住宅貯蓄)>
55歳未満の勤労者が金融機関などと契約(1人1契約)を結んで、5年以上の期間にわたって定期的に賃金からの控除(天引)により、事業主を通じて積み立てていく持家取得又は持家の増改築(リフォーム)などを目的とした貯蓄のことです。利子等に対する非課税措置があります。
メリット
- 目的に合わせた資産形成ができる(例えば「老後資金目的のお金を、車を買うのに使ってしまった」というような事態が防げる)
- 目的外でも引き出しできる(突発的な事情によりお金が必要になっても引き出し可能)
- 550万円までは利子が非課税(目的外に利用した場合は、5年間にさかのぼって利子が課税される)
- 財形年金貯蓄については、年金の支払いが終わるまで非課税措置が継続される
- 賃金からの控除(天引)のため、自動的に貯まる仕組みを作れる
デメリット
- 退職や役員になるなど、勤労者でなくなった場合に新たな積立が不可
- 財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄においては、退職後一定期間が経過すると、課税扱い(解約等については、その財形貯蓄契約における定めによる)
- 金融商品によっては元本割れする可能性
- 引き出し、解約の手続きのハードルが高く、不測の際に手続きしにくい
- 金利が低く、利子による利益は見込めない
- 財形貯蓄制度は、働いている間にコツコツと貯めていくほうが向いているという人におすすめ
投資
投資とは、利益を見込んで事業に資本を出すことです。株式や投資信託などの購入がこの投資に当たります。投資は短期間では損をする可能性がありますが、長期的に投資を続けると利益を出しやすい傾向にあるので、資産形成に役立てることができます。
投資の種類は、以下のとおりです。
- 株式投資
- 不動産投資
- FX
- 投資信託
- 債券
メリット
- 銀行に預けるよりも資産形成できる期間が短くなる
- 金銭面以外にもリターンが得られる(株主優待など)
- 自分でリスクとリターンを選べる
デメリット
- 元本割れするリスク
- 投資はよほどの知識がないと短期間に大きく稼ぐことは困難
投資は初心者でも始めることはできますが、知識がないと損をする可能性が高いです。(自分で運用する株式投資やFXなどは勉強は必須です。プロに運用してもらえる投資信託も知識がないと損をする可能性もあります)
商品によって大きいリターンも狙えますが、すべて自己責任になりますので、慎重に検討する必要があります。
上記でご紹介したそれぞれの特徴、メリット・デメリットを理解したうえで、老後資金を作るヒントにしてください。
老後の資産運用状況データ
高齢者は、老後の資金運用をどのようにしているのでしょうか?
金融広報中央委員会の家計の金融行動に関する世論調査」[単身世帯調査](令和2年)によれば、以下のようなデータが出ています。
預貯金 | (うち 定期性) | 金銭信託 | 生命保険 | 損害保険 | 個人年金保険 | 有価証券 | (債権) | (株式) | (投資信託) | 財形貯蓄 | その他 | (参考) 一般NISA保有額(注) | |
2017年 | 47.3 | (25.1) | 0.5 | 6.6 | 0.8 | 6.6 | 34.5 | (6.8) | (18.8) | (8.9) | 1.8 | 1.8 | 157 |
2018年 | 41.7 | (23.5) | 2.6 | 9.6 | 0.9 | 9.1 | 30.9 | (3.7) | (17.8) | (9.3) | 1.1 | 4.1 | 168 |
2019年 | 44.2 | (22.9) | 0.8 | 8.4 | 0.8 | 7.7 | 34.0 | (5.0) | (16.2) | (12.7) | 1.3 | 2.8 | 181 |
2020年 | 42.2 | (19.9) | 0.7 | 8.5 | 1.0 | 7.9 | 36.6 | (5.7) | (20.6) | (10.3) | 1.4 | 1.9 | 176 |
2019年実額(万円) | 468 | (243) | 8 | 89 | 8 | 82 | 360 | (53) | (172) | (135) | 14 | 30 | |
2020年実額(万円) | 441 | (208) | 7 | 89 | 10 | 82 | 382 | (59) | (215) | (108) | 15 | 20 |
- 金融資産保有世帯の金融資産保有額の平均値は 1,044 万円と前回(1,059 万円)比減少
- 預貯金が 42.2%と前回(44.2%)比低下
- 有価証券(債券、株式、投資信託)は 、36.6%と前回(34.0%)比上昇
- 一般 NISA を保有している世帯における平均保有額は、176 万円と前回(181 万円)比減少
- 金融資産保有世帯において、金融資産構成を前年と比較して「現金や流動性の高い預貯金から、長期運用型やリスク資産に振り向けた」とした世帯は 16.4%と前回(11.7%)比上昇
- 「長期運用型やリスク資産から、現金や流動性の高い預貯金に振り向けた」とした世帯は 5.6%(前回 5.5%)と横ばい
出典並びに一部引用:金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査」[単身世帯調査](令和2年)
データから、預貯金だけではなく、さまざまな投資をする人が増えてきていることがわかります。NISA、つみたてNISAやiDeCoなどのローリスクで、比較的に安全な投資から始めてみてはいかがでしょうか?
おひとりさまの住まい事情
住宅販売のチラシの謳い文句でよく見かける「終のすみか」という言葉。
おひとりさまは、老後を考えてマンションを購入すべきなのでしょうか?それとも、おひとりさまでも充実して過ごすために、多くの人たちと交流できる、シェアハウスや施設を選ぶべきなのでしょうか?それぞれのメリットとデメリットについて確認していきましょう。
終の棲家(すみか)
「終のすみか」とは、これから死を迎えるまで生活する住まいを意味する言葉です。
では、おひとりさまにとって、最後まで安心して住める環境というのは、どのようなものなのでしょうか?実際の住環境だけではなく、メンタル面でも充実したいところ。ここでは老後のマンション、一軒家、シェアハウス、老人ホームなどの住環境のメリットとデメリットについて説明します。
マンション
メリット
- 鉄骨造、鉄筋コンクリート造のため、耐震性や自然災害にも強い構造
- ゴミ出しや周辺環境の掃除が充実(※マンションごとにルールがあります)
- 宅配ボックス、キッズルームや友人や両親などを泊めることのできるゲストルーム完備(※施設によって異なります)
- 気密性や断熱性が高く、暮らしやすい環境
- 防犯対策が万全(マンションによっては24時間体制で有人管理してくれるところもあります)
- 資産価値が高い(立地によっては購入時以上の資産価値が出る場合もあり、老後に売却して高齢者施設への入居一時金などにすることも可能)
デメリット
- 管理面に制約があり、ペットが飼えない(飼えても動物が限定されている)
- 生活音など、音のルールが厳しい
- 騒音トラブルが発生しやすい
- 管理費や修繕積立金がかかる
- 駐車場代が別途かかる
- 近隣住民との関係が希薄になりやすい
- リフォームやリノベーションが自由にできない
一軒家
メリット
- 外観や内装、間取りの自由度が高い
- 自由にリフォーム可能
専用の庭、専用の駐車場を持つことができるのも一戸建てならではのメリットです。専用の庭があれば、ガーデニングや家庭菜園もできます。
デメリット
- 一軒家は木造建築が多く、耐震性や台風、大雨といった自然災害に弱い
- 防犯性が低い
- 外壁補修、屋根のメンテナンスなどの建物の維持管理はすべて自己責任で行う必要があり、その都度、大きな出費がかかる
- 建物の老朽化によって資産価値が下がる可能性がある。
シェアハウス
若い人に流行しているシェアハウスですが、老後に高齢者向けシェアハウスを検討する人も増えています。配偶者が亡くなったり、子供が巣立ったり、いま住んでいる家が一人で暮らすには広すぎて手入れが行き届かない、老後の一人暮らしが不安だという人の注目が集まっています。
メリット
- 費用が安い
- キッチンやバス、トイレは共同で使うため、共益費や食費など含めても国民年金のみで暮らせる場合がある
- 入居金(入居一時金)不要な場合が多い
- 孤独感が無い
デメリット
- 共用部分の管理や掃除を分担しなくてはならない
- 共同生活が苦手な人はコミュニケーションがストレスになる
ちなみに、高齢者向けシェアハウスは一般的な介護施設とは異なり、介護スタッフが常駐していません。認知症や介護が必要になった場合、退去しなければいけないという物件が多いのもデメリットの一つです。
老人ホーム
老人ホームには、公的施設と民間施設があります。
公的施設の老人ホームは以下のとおりです。
特別養護老人ホーム | 介護保険サービスが適用される公的施設の1つで、介護保険制度上は「介護老人福祉施設」と呼ばれています。常時の介護を必要とし、居宅で介護を受けることが困難な高齢者に対し、入所サービスを提供する施設です。要介護3以上の人が対象。 |
介護老人保健施設 | 退院後、在宅復帰を目指して看護や介護、リハビリを中心とした医療ケアと生活サービスを受けるための施設です。要介護1以上の人が対象で、入所期間は原則3ヶ月程度などの条件があります。 |
介護療養型施設 | 治療が終わった後も、長期療養が必要な人が医療や介護、機能訓練などを受けるための病院です。要介護1以上の人が対象。*2024年3月31日の廃止予定。 |
軽費老人ホーム | 低額で利用できる福祉施設。家庭環境、住宅事情等で在宅での生活が難しい高齢者に対し、生活相談や食事が提供されます。 |
ケアハウス | 自立型と介護型があります。自立型は60歳以上の高齢者が入居できます。食事や掃除、洗濯などの生活支援のサービスが受けられ、自立的な生活に不安のある方が快適に暮らすことが可能です。介護型は65歳以上かつ要介護度1以上の高齢者を対象にした施設です。介護型では、食事などの生活支援に加えて、入浴や排泄の介助といった特定施設入居者生活介護サービスを受けることが可能です。 |
メリット
- 民間施設に比べて費用が安い
デメリット
- 人気が高いので入居待ちが長く、入居が難しい
- 民間施設と比べて、レクリエーションなどのイベントや娯楽等が比較的少ない
民間施設の老人ホームは、以下のとおりです。
サービス付き高齢者向け住宅 | 60歳以上の高齢者向け賃貸住宅で、バリアフリー化、見守りサービスと生活相談サービスがあります。食事サービスや生活支援サービス(清掃、洗濯など)を提供している施設もあります。 |
介護付き有料老人ホーム | 介護・看護スタッフが常駐し、介護保険を利用した介護サービスを24時間受けることができます。重度の要介護状態でも利用でき、施設によっては「看取り」まで可能なところもあります。サービス内容によっては費用も高額になります。医療法人が経営する医療対応型の介護付き有料老人ホームもあります。要支援1から利用することができます。 |
住宅型有料老人ホーム | 60歳以上の元気な人が入居でき、家事負担などを減らして暮らせます。介護サービスを受ける場合は、外部の事業者を利用します。 |
グループホーム | 要支援2以上の認知症高齢者が利用できます。介助を受けながら、できる範囲で家事を分担することで認知症の進行を遅らせます。施設によって入居の要件や費用も異なります。 |
健康型有料老人ホーム | 自立している60歳以上の高齢者を対象としており、介護度の高い人は対象外です。もし入居後に介護が必要になったら退去しなければなりません。看取りケアや認知症の受け入れには応じておらず、終身利用も対応していません。 |
高齢者向け分譲マンション | バリアフリー設計がしてあり、安否確認の見守り、フロントでの来客対応などのサービスもあり、高齢者の人が暮らしやすいマンションです。マンション側では介護サービスはしていないので、介護サービスを受けたい場合は外部の業者に委託することになります。 |
メリット
- 高齢者のニーズを満たす点に重きが置かれ、公的施設よりもサービスが充実している
デメリット
- クオリティの高い生活を送ることができますが、公的施設よりも費用が高くなる
終のすみかになる住居選びは、老後の生活に直結します。それぞれの特徴やメリット・デメリットを知り、慎重に選びましょう。
老人ホームに入るときの注意点
おひとりさまの住まいについて見てきましたが、ここで気になるのは老人ホームでの生活や費用に関してではないでしょうか。老人ホームに入るときの注意点について合わせて確認していきましょう。
老人ホームにかかる費用
老人ホームには前述のように、公的施設と民間施設の2種類があります。
東急リバブルによれば、公的施設と民間施設の費用の相場は、以下のとおりです。
【公的施設】
初期費用 | 月額費用 | |
---|---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 不要 | 8〜13万円 |
介護老人保健施設 | 不要 | 7〜13万円 |
介護医療院 | 不要 | 10~15万円 |
ケアハウス | 0~1千万円 | 6~17万円 |
【民間施設】
初期費用 | 月額費用 | |
---|---|---|
介護付き有料老人ホーム | 0~数千万円 | 15~50万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0~数千万円 | 15~50万円 |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 0~数千万円 | 10~30万円 |
グループホーム | 0~20万円 | 10~30万円 |
老人ホームには身元引受人や保証人が必要?
基本的には、身元引受人や保証人が必要な老人ホームが多いです。
※ただし、公的施設である特別養護老人ホームの中には、身元引受人や保証人が必要ない場合があります。
身元引受人や保証人に求められるもの
- 緊急時の連絡先
- 入居者が治療を受ける際の、治療方針の判断や入院する際の手続き
- 月額費用の支払いが滞ったときに、債務履行を負う連帯保証
- 入居者が亡くなったときの、身柄の引き取りや未払債務の清算など
老人ホーム側は上記の内容でリスク回避を行なっているため、独身で身寄りがない人には、身元保証サービスに申し込み、保証をしてもらいます。身元保証サービスを選ぶ際には、身元保証会社を複数社比較し、それぞれの契約内容、料金、サービスの内容を調べて理解することが大切です。
老人ホームの入り方
老人ホームに入居する流れは「施設検索」「見学・体験入居」「契約」の3つの行程になります。老人ホームを探すときには、以下のサービスを利用することをおすすめします。
- オンラインで完結できる紹介サービス
- 対面で相談できる紹介センター
- 地域包括支援センター
- 高齢者総合相談センター(福祉事務所)
- 担当のケアマネジャー
気に入った施設が見つかっても、必ず複数の施設を見学して比較検討することが、老人ホーム選びを失敗しないコツです。体験入居ができる場合はぜひ試してみましょう。
入居先となる老人ホームを決めたら、施設側と契約を締結します。仮押さえの期間に準備する必要がある書類としては、診療情報提供書や健康診断書があります。書類を提出したあと、施設職員と面談、審査と続きます。
契約時に必要なものは、以下のものです。
- 印鑑
- 印鑑証明(施設による)
- 連帯保証人・身元引受人の印鑑
- 連帯保証人・身元引受人の印鑑証明(施設による)
- 戸籍謄本
- 住民票
施設側と入居契約を締結したら、実際に入居する日を決定します。
健康状態が著しくないと入居を断られる場合もありますので、元気なうちに老人ホームに入る人もいます。判断力があり、健康で元気がある今のうちに、自分に合う老人ホームを見つけましょう。
病気や入院する必要が出たとき
入院すると、緊急連絡先や身元保証人が求められます。入退院時の書類手続き、必要な物品購入、入院費の支払い、亡くなったときの対応などが必要なためです。
本人が認知症などにより判断が難しかったり、病気が急変し意思疎通が困難となったとき、病院側が判断に困ります。そのため、身元保証人を求められることがあります。
おひとりさまで身元保証人がいない場合は、次のような手段があります。
行政に相談する
お住まいの自治体の社会福祉協議会では、「日常生活自立支援事業」を行っています。ただし、サポートがメインで代わりに手続きはしてくれません。
身元保証サービスを利用する
身元保証サービスは会社によって、費用・サポート内容が異なります。身元保証サービスは身元保証人に代わり、病院・介護施設入居時の身元保証・生活支援・死後事務委任契約など、保証会社と契約を結ぶことにより、必要なサービスを利用することが可能です。
今のうちからしておくべきことは、困ったときに相談できる相手を探しておくことです。友人やお住まいの地域の人たちと、積極的に交流をして人間関係を築いておくと安心です。※身元保証サービスについては後述します。
おひとりさまの看取り
元気なときは問題はありませんが、病気になって寝込んだり、急変したら必ず誰かの手助けは必要になります。自宅で最期を迎えたいと思っていても、天涯孤独で頼る人がいないという人はどうしたら良いでしょうか?
おひとりさまの看取りでは、死後の事務的手続きや整理を考えておく必要があります。それらの対策として考えておきたいのが、死後事務委任契約や身元保証人サービスです。
おひとりさまの死後事務委任契約
死後事務委任契約は、死後に行わなければならない事務や整理を、生前に第三者に依頼する契約です。
人が亡くなったときには、関係者への連絡、葬儀の主宰、役所に対する行政手続き、病院代や施設費用などの支払い、公共料金やカード会社などの各種契約の解約、自家用車の名義変更や廃車など、多くの事務手続きがあります。さらに葬儀の後には、納骨や自宅の片付けなども必要です。
おひとりさまの場合は、死後事務委任契約を第三者に依頼しておくと、安心して老後の生活を送ることができます。詳しくは死後事務委任契約についての解説記事をご覧ください。
おひとりさま向けの身元保証人サービス
身元保証サービスは身元保証人に代わり、病院・介護施設入居時の身元保証・生活支援・死後事務委任契約など、保証会社と契約を結ぶことにより、必要なサービスを利用することが可能です。身元を保証してくれる人がいない場合は身元保証人サービスと契約を締結しておけば、さらに手厚いサービスを受けることができます。
身元保証人については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
身元保証人サービスの種類については、以下の記事をご参照ください。
おひとりさまの人生の楽しみ方
これまでおひとりさまの老後の備えを中心に解説してきました。お金のこと、健康のこと、不安や悩みは尽きませんが、前述の方法を参考に、しっかり準備を整えていくことで、不安や悩みもきっと軽減できるはず。
しかし、おひとりさまにとって何より重要なのは、老後をどのように楽しみながら暮らせるのかということでしょう。歳を重ねたとしても、気持ちはいつまでも若々しく、人生を楽しみたいところです。
例えば、今までやってみたいと思っていたけど、仕事で忙しくできなかったことや、新しいことにチャレンジしたり、積極的に人との交流を増やして、気の合う仲間たちと多く出会い、毎日を楽しむ生活も刺激的でしょう。
他にもボランティアをすることで今まで得られなかった生きがいを感じ、充実感溢れる老後が送れるかもしれません。もしかしたら、趣味を楽しむことを通じて、新しいパートナーが見つかるなんてこともあるかもしれません。
ポジティブに行動をしていけば、きっと老後の人生を豊かにしてくれます。この記事を参考に、ご自分の老後の資金と備え、そして人生の楽しみ方を計画されてみてはいかがでしょうか。