2023年4月4日

おひとりさまの老後にはどの様なリスクがあるのか業界関係者が解説

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 「高齢化社会」という言葉が頻繁にマスメディアで使われますが、日本社会は現在「高齢化社会」を通り越し、1994年に高齢社会、2007年から65歳以上の人口が21%を超える「超高齢社会」に突入しています。

引用:健康長寿ネット「日本の超高齢社会の特徴」

同時に少子化も進行し、一人暮らしの高齢者である「おひとりさま」が急激に増加しています。内閣府調べによると、65歳以上の一人暮らしは、

昭和55(1980)年には「男性約19万人」「女性約69万人」、65歳以上人口に占める割合は「男性4.3%」「女性11.2%」

であったのに対し、

平成27(2015)年には「男性約192万人」「女性約400万人」、65歳以上人口に占める割合は「男性13.3%」「女性21.1%」

高齢者の数は年々大幅に増加しており、今後さらに増えると予想されています。

引用:内閣府「第一章高齢化の状況(第1節3)」


その中で、一人暮らしの高齢者の増加に伴い、孤独死や犯罪に巻き込まれる等の様々な社会問題が発生しています。

そこで本記事では、おひとりさまの老後には「どんなリスクがあるのか」「どの様にリスクを回避すればいいのか」について詳しく解説していきます。

おひとりさまの老後リスクとは?

年を重ねると、同居家族が居たとしても生活するうえで様々な不便が生じますが、一人暮らしの高齢者の場合、さらに多くのリスクに気を付けなければなりません。そこで、一人暮らしの高齢者に潜む様々なリスクについて説明します。

経済的リスク

おひとりさまにとって最も重要な問題は、「老後資金をどうするか」です。資金が尽きてしまう様な場合に備え、経済面で頼りになる人が居ない場合は、自分で資金を用意しておかなければなりません。

気になるおひとりさまの老後資金と人生の楽しみ方

健康面のリスク

当然の事ですが、高齢になれば病気になるリスクは増大します。おひとりさまの場合、
急病時にサポートしてくれる人が居ない場合が多いです。

近年、冬になると「ヒートショック」によって亡くなる高齢者が増加しています。ヒートショックとは、急激な温度変化が原因で血圧が上昇し、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす事です。ヒートショックは入浴中によく起こり、浴槽の中に倒れてそのまま溺死するケースが増加しています。

消費者庁の調査によると、2008年から2019年の約10年間で入浴中の事故で亡くなった高齢者は1,000人以上も増加しています。
※2008年は約3,800人に対し、2019年は4,900人

2019年に「入浴中の溺死及び溺水事故で亡くなった高齢者の人数(4,900人)」は、2019年に交通事故で死亡した人数(3,215人)を大幅に上回っています。

また、高齢になると認知症も心配です。一人暮らしでは、認知症になっても誰にも気付かれずに症状が悪化し、最悪の場合そのまま孤独死する可能性もあります。

防犯・防災面のリスク

警視庁「令和3年の刑法犯に関する統計資料」によると、一人暮らしの場合、夫婦世帯に比べて空き巣に狙われやすくなります。空き巣だけではなく、在宅中に侵入される居空き(いあき)や忍び込みも心配です。
※居空きとは「日中住民が活動中に侵入されること」で、忍び込みとは「寝ている間の侵入」を指します。

また、大きな地震で家財などの下敷きになった場合、一人暮らしでは救助されないリスクも増加します。

身元保証人のリスク

入院や手術をする場合、医療機関から身元保証人を求められます。家族がいれば問題ありませんが、おひとりさまの場合、引き受けてくれる人を探すのは大変です。

身元保証人とは?~保存版~

住まいのリスク

高齢になると、今まで普通にできていた家事や動作ができなくなります。家の中のちょっとした段差につまずいて転倒したり、火の消し忘れにより火事を起こしてしまう恐れもあります。

また、賃貸物件を新たに契約しようとしても、高齢者の場合断られるケースが問題となっています。事故や孤独死、経済面での問題から不動産会社が二の足を踏んでしまう様です。

老後リスクを回避するために生前すべき事

老後の様々なリスクを回避する為には、日頃からの準備が重要です。若いうちから備えるに越した事はありませんが、高齢になってからでも終活として対策を講じておく事で安心できるでしょう。

老後の資金計画を立てる

老後に備えて十分な貯蓄をする為には「資金計画」を立てましょう。「老後の生活に掛かる費用」と「貰える年金」のシミュレーションを行う事をおすすめします。出費に比べて収入が少ない様であれば、節約を心掛けて貯金しなければなりません。

また、資産運用も選択肢の一つです。積立NISAやiDecoは老後の備えにふさわしい金融商品で、どちらも運用益は非課税です。長期を見据えて安全で効率的な資金運用を検討しましょう。

気になるおひとりさまの老後資金と人生の楽しみ方

エンディングノートをつける

終活を何から始めていいか分からない人は、エンディングノートの作成をおすすめします。エンディングノートを作成する事により、終活でやるべき項目をチェックする事ができる様になります。

財産・医療・介護・お墓等の項目を埋めて行く事によって、現在の問題点が整理されて今後やるべき事が明確になるでしょう。

エンディングノートおすすめの書き方を業界関係者が解説

かかりつけ医を決める

健康面の不安を解消する為には、身近に信頼できる「かかりつけ医」がいると安心です。日常の健康管理についてのアドバイスや、大きな病気に罹った場合は専門病院を紹介してくれます。病気の早期発見・早期治療の為にも、健康なうちにかかりつけ医を持つ事をおすすめします。

断捨離を実行する

一人暮らしの場合、亡くなった後の家財の処分が残された人にとっては大きな負担となります。

大きな家財を捨てたり多くの物を捨てるには体力や時間が必要である為、気力・体力の充実している元気なうちから少しずつでも良いので不用品の整理を始めて、シンプルな生活を心掛けましょう。

身元保証人を決める

家族が居ない人は、突然の入院等に備えて日頃から身元保証人になってくれる人を探しておきましょう。

しかし、身元保証人は相手が入院費用を払えなかった場合、代わりに支払わなければいけない為、親しい間柄であってもなかなか頼み辛い問題です。

金銭面の問題を解決するには、生命保険の受取等で保証人の負担を無くす事はできますが、それでも頼める人が居ない様であれば、身元引受サービスの利用も選択肢の一つです。

身元保証サービスを考えている方へ「サービス内容」「サービスの選び方」を業界関係者が紹介

終の住処(ついのすみか)を決める

おひとりさまで持ち家にそのまま暮らす場合、バリアフリー対策が必要になる事もあります。あるいは、高齢者向けの住宅に引っ越す事も検討しなければなりません。「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、高齢者が安心して暮らせる様にバリアフリー設計で安否確認のサービス等が付いた賃貸住宅なので、おすすめです。

見守りサービスを利用する

単身高齢者世帯の増加に伴い、多くの見守りサービスが登場しています。定期的な安否確認や体調急変時にボタン一つでスタッフが駆けつけてくれる等サービス内容は様々で、おひとりさまにとっては、大変心強いサービスです。

積極的に他人と関わる

一人暮らしの場合は、特に近所の人や友人・知人と積極的に交流する事を意識しましょう。近所に友人や知人が居ない場合は、自治体や自治会等の「地域で行うイベント」に参加すれば、それをきっかけに新たな友人ができるかもしれません。

また、地域の趣味に関わるサークルに参加する事もおすすめです。何かあった時にサポートしてくれるだけではなく、他人と交流する事で充実した生活を送れる様にもなり、老後の新たな楽しみも期待できます。

死後手続きの対応について

おひとりさまの場合、生前だけでなく亡くなった後にも様々な問題が生じる可能性があります。以下に述べる6つの問題に対応する為、「遺言書」と「死後事務委任契約」を作成しておくと安心です。

死後に発生する6つの問題

身寄りのない一人暮らしの人が亡くなることによる6つの問題を紹介します。

1.残った財産の処分

生前に何も意思表示していない場合、残った財産は法定相続人に相続されます。法定相続人の範囲は民法で決められており、亡くなった方の配偶者と子供、親・祖父母、兄弟姉妹までです。

もし、法定相続人の居ない人が遺言を残さずに亡くなった場合は、残った財産は民法952条等に基づく手続きを経て国庫に帰属します。法定相続人以外に財産を譲りたいのであれば、遺言書を作成しなければなりません。

2.遺品の整理

終活の一環として断捨離を実行していれば、残る家財はそれほど多くないかもしれませんが、断捨離前であれば長い間暮らしている中で、沢山の生活用品や趣味のコレクションを所有しているかと思います。

もし、貴重品を特定の人に託したいのであれば、生前に意思表明しておかなければなりません。

3.ペットの引き取り

おひとりさまの中には、ペットを飼っている方が数多くいます。もし自身が亡くなった場合、長年連れ添ってきたペットがどうなってしまうのかは大きな気掛かりです。

そのため、もしもの時に備えて、ペットを大事に飼ってくれる引き取り先を考えておかなければなりません。飼い主に万が一のことがあった時の為に、「ペット信託」という仕組みがあります。入院して世話ができなくなった時に代わりに世話をしたり、亡くなった後に確実に新しい飼い主に引き渡すサービスです。

4.残った住居の処分・手続き

住まいを所有しているのであれば、遺産分割協議に則って処分される為、法定相続人全員でどの様に分割するか話し合うことが必要となります。

また、賃貸住宅であれば、賃貸契約の解除や残された家財道具の処分が必要です。場合によっては、原状回復の費用を支払わなければならないケースもあります。

5.葬儀・供養の実施

身寄りのないおひとりさまの場合、「誰が遺体を引き取るのか」「誰が喪主になって葬儀をするのか」を予め決めなければなりません。葬儀の規模や形式も様々です。宗教・宗派に則って執り行うのか、音楽葬の無宗教葬にするのか等、本人の意向を反映させた葬儀を確実に実施したいのであれば、後に述べる「死後事務委任契約」が必要です。

また、お墓をどうするのかも重要な問題です。先祖代々のお墓があったとしても、供養する人がいなければ意味がありません。

6.行政の手続き・契約の解約・費用の清算

人が亡くなると沢山の行政手続きが必要となります。死亡届の提出・火葬許可証の申請、健康保険・介護保険の解約等。さらには公共料金や銀行口座、各種サービスの解約と様々な
清算をしなければなりません。

死後の問題に対応する2つの解決策

残った財産に関しては「遺言書」で本人の希望通りに処理できますが、葬儀やお墓をどうするかは、たとえ遺言書に記載しても効力はありません。遺言書でできる事は、民法で厳密に規定されています。それ以外の事を確実に実行してもらう為には「死後事務委任契約」が必要です。

遺言書の作成

財産を法定相続人以外に譲る事を「遺贈(いぞう)」と言います。もし、遺贈をしたいのであれば、遺言書の作成が必要です。遺言書の様式も民法によって厳密に定められています。

偽造防止の為とはいえ、素人が自分で遺言書を作成するのは大変です。例えば、ボランティア団体に財産を譲りたいと思い、遺言書に「ボランティア団体に相続する」と書いた場合、無効になる可能性があります。“相続”と“遺贈”は法律上厳密に区別されています。法定相続人に財産を譲る場合は“相続”、それ以外に譲る場合は“遺贈”です。

この様に、遺言書の不備によって無効になるケースはよくある為、法律の専門家に相談する事をおすすめします。

死後事務委任契約の締結

財産以外の死後の手続きについては、死後事務委任契約が必要です。生前に様々な委任契約を結んでいたとしても、民法653条一号の規定により委任者が死亡した時点で契約が終了します。

死後事務委任契約は、法律で禁止されている様な行為でなければ比較的自由に内容を決められます。具体的には、上記でも説明した「ペットの引き取り先の選定」「賃貸住宅の解約・退居手続き」「葬儀・お墓の手配」「行政の手続き・契約の解約・費用の清算」等です。

家族と離れて暮らしていたり、疎遠で頼めない場合やパートナーと正式に婚姻していない場合は、死後事務委任契約を検討しましょう。

身寄りがなければ親しい友人を受任者に指定する事もできますが、頼む方も頼まれる方もかなりの負担になります。もし知り合いに頼む人がいなければ、専門的なサービスの利用をおすすめします。

死後事務委任契約とは?ご逝去の手続きで「親族に迷惑をかけたくない方・おひとりさまの方」でも安心

老後のリスクに不安がある方はお気軽にご連絡ください

おひとりさまの老後に潜むリスクとその対処法を中心に解説しました。

当社では、日々おひとりさまからの終活相談を数多く受けております。高齢化社会が加速している日本では、実際に老後リスクを実感する方が増えています。

終活を始めるにあたって早すぎる事はありません。逆に「〇〇歳以上ではもう遅い」と言う事もありません。思い立った時から始められます。

早い時期から終活を始める事で、老後リスクを事前に回避でき、より充実した人生を送る事ができると思います。そのため、できるだけ早く終活を始める事がおすすめです。

一般社団法人 終活協議会は、老後の不安を取り除く「心託サービス」を提供しています。日常生活・入退院のサポート、緊急時の対応や死後の各種手続きの代行等、様々なサービスを
ご用意しています。

「心託サービス」は価格が明確に定められており、一生涯サービスが利用できるため、早めに検討することをお勧めします。詳しくはお電話でも問合せできます。専門スタッフが誠心誠意終活のご相談にお答え致します。

監修

竹内義彦
竹内義彦一般社団法人 終活協議会 理事
1969年生まれ、大阪出身。
2012年にテレビで放送された特集番組を見て、興味本位で終活をスタート。終活に必要な知識やお役立ち情報を終活専門ブログで発信するが、全国から寄せられる相談の対応に個人での限界を感じ、自分以外にも終活の専門家(終活スペシャリスト)を増やすことを決意。現在は、終活ガイドという資格を通じて、終活スペシャリストを育成すると同時に、終活ガイドの皆さんが活動する基盤づくりを全国展開中。著書に「終活スペシャリストになろう」がある。

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