2023年4月4日

おひとりさまの老後に潜む7つのリスク|身寄りがない場合の対策と死後の手続きを業界関係者が解説

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日本の高齢化率は令和5年10月1日現在で29.1%で、65歳以上の人口が21%を超える「超高齢社会」に突入しています。同時に少子化も進行し、一人暮らしで身寄りがない「おひとりさま」が急激に増加しています。

内閣府の調べによると、65歳以上の方の一人暮らしは、昭和55(1980)年には88万人だったのに対し、令和2(2022)年では672万人です。また、65歳以上の人口に占める一人暮らしの方の割合は、男性4.3%、女性11.2%だったものが、男性15.0%、女性22.1にまで上昇しています。

65歳以上の一人暮らしの者の動向

引用:令和6年版高齢社会白書第1章第1節高齢化の状況 3家族と世帯

一人暮らしの高齢者の増加にともない、孤独死や犯罪被害といった社会問題も発生しています。

そこで本記事では、おひとりさまの老後には「どんなリスクがあるのか」「リスクに対する備え」について詳しく解説していきます。

おひとりさまの老後に潜む7つのリスク

おひとりさまの老後に潜む7つのリスク

年齢を重ねると、同居家族がいたとしても生活するうえでさまざまな不便が生じますが、身寄りがない高齢者の場合、さらに多くのリスクに気を付けなければなりません。ここでは、おひとりさまの老後に潜むリスクを7つ説明します。

1.経済的リスク

おひとりさまの老後で最も懸念されるのが経済的リスクです。

家族と同居する場合、一人暮らしに比べ、住居費・光熱費・食費などの負担が大きくなります。
また、身寄りがない場合、緊急時に頼れる家族もいないため、十分な老後資金の準備が不可欠です。年金だけでは不足する可能性も高く、自身で計画的に貯蓄する必要があります。
予期せぬ出費や長生きのリスクも考慮し、余裕のある資金計画を立てることが重要です。

なお、おひとりさまの老後に必要な資金に関する詳しい解説は、以下の記事を参照してください。
関連記事:気になるおひとりさまの老後資金と人生の楽しみ方

2.健康面のリスク

高齢になると健康面に不安を抱えたり、持病が悪化するリスクが高まるものの、身寄りがない方は急病時にサポートしてくれる人がいない場合が多いのが現状です。
特に入浴中の事故が顕著で、消費者庁の調査によると、2019年の入浴中の事故死(4,900人)は、交通事故死(3,215人)を上回っています。

また、認知症のリスクも無視できません。
一人暮らしでは症状の進行に気付かれにくく、誰にも知られないまま孤独死する可能性もあります。

3.孤立のリスク

高齢になると社会から孤立し、孤独を感じる傾向があります。

年齢を重ねるなかで、退職や近親者との死別などの喪失体験が増えることが原因のひとつです。
仕事がなくなり、話をする相手が少なくなると、地域や社会から孤立してしまいがちです。

さらに、令和2年に東京都区内で自宅で亡くなっているのを発見された単身者の数は約9,000人おり、そのうち65歳以上の方は6,300人を超えています。

身寄りがないおひとりさまの老後には、孤立や孤独死のリスクがあることがわかります。

4.防犯・防災面のリスク

おひとりさまの老後において、防犯・防災面のリスクも看過できない問題です。

警視庁の統計によると、一人暮らしの場合、夫婦世帯に比べて空き巣の標的になりやすいことがわかっています。
さらに、在宅中の侵入被害である居空きや、就寝中の忍び込みのリスクも高まります。

防災面でも、大地震のような災害で家具の下敷きになった場合、一人暮らしでは発見が遅れ、救助されるまでに時間がかかる可能性があります。

これらのリスクに備え、防犯対策の強化や地域コミュニティとの連携が重要です。

5.身元保証人のリスク

身寄りのない方の身元保証人に関するリスクは、入院したり施設へ入所したりする際に問題となります。

入院の手続きや手術の同意、高齢者施設への入所に必要な契約などの際に身元保証人を求められますが、家族がいない場合はその確保が困難です。
また、賃貸住宅への入居でも、孤独死や火災などのリスクがあることから、おひとりさまの入居は断られるケースが多くなっています。

これらの問題に対処するため、身元保証代行サービスの利用を検討し、そのための資金を準備しておくことが重要です。

6.住まいのリスク

加齢にともない、日常的な家事や動作が困難になってくると、家庭内事故のリスクが高まります。
段差での転倒や火の不始末による火災など、安全面での懸念が増してくるでしょう。

さらに、賃貸物件の新規契約においても、おひとりさまの場合は不利な立場に置かれがちです。
孤独死や経済的不安定さへの懸念から、不動産会社が契約に二の足を踏んでしまうケースが多く見られます。

これらのリスクに備え、バリアフリー化や見守りサービスの利用、保証人確保などの対策が重要となります。

7.死後の手続きに対するリスク

身寄りがない方の場合、死後の手続きに対するリスクに関しても準備が必要です。
通常、死後に発生する諸手続きは、残された遺族がおこなうものですが、おひとりさまの場合はその手続きが滞ってしまう可能性があります。

財産や遺品の整理やその他の手続きについて、遺言書を作成したり、身元保証代行サービスとの死後事務委任契約を結んだりするなどしておくと安心です。

身寄りのない方の死後の準備に関する詳しい解説は、以下の記事を参照してください。
関連記事:身寄りのない高齢者が終活でするべきことを業界関係者が解説

おひとりさまの老後のリスクに対する備え

おひとりさまの老後のリスクに対する備え

おひとりさまの老後に生じるリスクを回避するためには、事前の備えが大切です。
ここでは、若いうちからしておくものだけでなく、高齢になってからでも終活としておこなえる対策を紹介します。

老後の資金計画を立てる

老後の経済的安定のためには資金計画を立てましょう。
老後にかかる生活費と受給可能な年金額をシミュレーションすることで、収支のバランスを把握できます。不足が見込まれる場合は、節約を心がけて早めに貯金しなければなりません。

また、資産運用も選択肢のひとつです。
積立NISAやiDeCoなどの非課税金融商品は、長期的な視点で老後の備えに適しています。

リスクと収益性のバランスを考慮し、安全で効率的な運用方法の選択が大切です。
関連記事:おひとりさまの老後資金を貯める方法を業界関係者が紹介

エンディングノートをつける

おひとりさまの老後の備えについて、何から手をつければいいかわからない人は、エンディングノートの作成から始めるのもよいでしょう。

エンディングノートは、財産や医療、介護、お墓など、人生の終わりに向けた項目を埋めていくことによって、終活でやるべき項目をチェックできるようになります。
たとえば、財産欄を記入することで資産状況を把握でき、医療欄では今後の治療方針を考えるきっかけになります。

定期的にノートを更新することで、老後への備えがどの程度進んでいるのかを確認でき、必要に応じて計画を調整できます。
関連記事:エンディングノートおすすめの書き方を業界関係者が解説

かかりつけ医を決める

健康面の不安を解消するためには、身近に信頼できる「かかりつけ医」がいると安心です。

かかりつけ医は、日常の健康管理から緊急時の対応まで、幅広くサポートしてくれます。
たとえば、定期的な健康相談や内服薬の処方、適切な生活習慣のアドバイスなどです。
また、重大な病気の場合は適切な専門医を紹介してくれます。

病気の早期発見・早期治療のためにも、今は病気がなくても、健康なうちにかかりつけ医を見つけておくことがおすすめです。

断捨離を実行する

身寄りがない方の場合、亡くなったあとの家財の処分が残された人にとっては大きな負担となるため、今のうちから断捨離をするのがおすすめです。

不要な物を整理し、シンプルな生活を心がけることで、単に物を減らすだけでなく自分の人生を整理する機会にもなります。
たとえば、思い出の品を整理しながら人生を振り返ったり、本当に必要なものを見極めたりすることで価値観を再確認できます。

体力と気力が充実している今のうちから少しずつ不用品の整理を始めましょう。
生活空間が整理されるだけでなく、心の整理にもつながり、より充実した老後生活を送れるでしょう。

見守りサービスを利用する

おひとりさまの増加にともない、多くの見守りサービスが登場しており、一人暮らしで起こる諸問題の不安を大きく軽減させています。
具体的には、定期的な安否確認や緊急時にボタンひとつでスタッフが駆けつけるサービスなどです。

実際にこれらのサービスを利用することで、体調不良や事故の早期発見につながり、深刻な事態を防いでいます。
見守りサービスの導入により、おひとりさまでも安心して自立した生活を続けられ、家族がいる場合もその負担を軽減できるでしょう。

積極的に他人と関わる

おひとりさまの老後においては、特に近所の人や友人と積極的に交流することを意識しましょう。
他人との積極的な関わりは孤独を防ぎ、充実した生活を送ることにつながります。

たとえば、自治体や自治会が主催する地域イベントへの参加は、新たな人間関係を築く絶好の機会となります。
また、趣味に関連するサークル活動も、共通の興味を持つ人々との交流を深める効果的な方法です。

これらの活動を通じて、単に非常時のサポート体制を整えるだけでなく、心身の健康維持にも寄与し、日々の生活に新たな楽しみや刺激を見出すことができるでしょう。

身元保証人を決める

突然の入院や施設入所などに備え、事前に身元保証人を決めておきましょう。

身元保証人は、入院や施設に入所する際の手続きだけでなく、費用が払えなくなった場合に代わりに支払わなければならないこともあります。
そのため、親しい間柄であっても依頼が難しい場合もあるでしょう。

金銭面の問題を解決するために、生命保険の受取人に指定するなど、保証人の負担を軽減する方法もあります。
しかし、それでも適切な人が見つからない場合は、身元保証サービスの利用を検討するのもひとつの選択肢です。

身元保証サービスについての詳しい解説は、以下の記事を参照してください。
関連記事:身元保証サービスとは?選び方や注意点を業界関係者が紹介

終の住処(ついのすみか)を決める

おひとりさまの老後の住まいについては、人生の終わりの時期をどこで過ごしたいか考えておくことが大切です。

持ち家での生活をつづける場合、バリアフリー化が必要となる可能性があります。

また、高齢者向け住宅への引っ越しも選択肢のひとつです。
たとえば、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、安全性と生活サポートを兼ね備えた理想的な選択肢といえます。

しかし、おひとりさまの場合、施設入所を検討するにしても、身元保証人が立てられずに困ることもあるでしょう。

一般社団法人終活協議会では、老後の不安を取り除く「心託サービス」を提供しており、身寄りがない方の身元保証人を引き受けています。
元気なうちから終の住処について共に考えたい方は、まずは資料請求をしてみるのもよいでしょう。
一般社団法人終活協議会の資料請求はこちらから

身寄りがない場合の死後の手続きやその他の対応

身寄りがない場合の死後の手続きやその他の対応

身寄りがない方の場合、生前だけでなく、亡くなったあとにも多くの問題が生じることがあります。
ここでは、死後に発生する6つの問題と、死後の問題に対する2つの解決策について解説します。

死後に発生する6つの問題

身寄りのない方が亡くなることで発生する問題には、以下のようなものがあります。

  1. 残った財産の処分
  2. 遺品の整理
  3. ペットの引き取り
  4. 残った住居の処分・手続き
  5. 葬儀・供養の実施
  6. 行政の手続き・契約の解約・費用の生産

ひとつずつ解説します。

1.残った財産の処分

生前に何も意思表示していない場合、残った財産は法定相続人に相続されます。
法定相続人の範囲は民法で決められており、亡くなった方の配偶者と子供、親、祖父母、兄弟姉妹までです。
法定相続人のいない人が遺言を残さずに亡くなった場合は、残った財産は民法に基づく手続きを経て国庫に帰属します。
法定相続人以外に財産を譲りたいのであれば、遺言書を作成しなければなりません。

2.遺品の整理

生前の断捨離が十分でない場合、長年の生活で蓄積された膨大な家財や趣味のコレクションが残される可能性があります。
特に貴重品や思い入れのある品を特定の人に託したい場合は、生前に明確な意思表示をしておくことが重要です。
残された人々の負担を軽減するためにも、事前の準備をしっかりしておくことが、死後の混乱を防ぎます。

3.ペットの引き取り

おひとりさまのなかには、ペットを飼っている方が数多くいます。
もしものときに備えて、ペットを大事に飼ってくれる引き取り先を考えておかなければなりません。
飼い主に万が一のことがあったときのために「ペット信託」という仕組みがあります。
入院して世話ができなくなったときに代わりに世話をしたり、亡くなったあとに新しい飼い主に引き渡すサービスです。

4.残った住居の処分・手続き

住まいを所有しているのであれば、遺産分割協議に則って処分されるため、法定相続人全員でどのように分割するか話し合う必要があります。
また、賃貸住宅であれば、賃貸契約の解除や残された家財道具の処分が必要です。
場合によっては、原状回復の費用を支払わなければならないケースもあります。

5.葬儀・供養の実施

身寄りのないおひとりさまの場合、遺体の引き取りや喪主の選定など、あらかじめ決めておかなければならないことが多くあります。
「一日葬で済ませる」「火葬だけにする」など、葬儀の規模や形式もさまざまです。
本人の意向を反映させた葬儀を実施したいのであれば、「死後事務委任契約」も有効です。

また、お墓をどうするのかも重要で、供養する人がいない場合は、宗派にこだわらない霊園や樹木葬など、従来の墓地以外の選択肢を考慮する必要があります。

6.行政の手続き・契約の解約・費用の清算

身寄りのない方に限らず、誰かが亡くなるといくつもの行政手続きが必要になります。

  • 死亡届の提出
  • 火葬許可証の申請
  • 健康保険・介護保険の解約
  • 公共料金や銀行口座、各種サービスの解約など

これらの手続きについても「死後事務委任契約」を結んでおくと、残された遺族の負担を軽減するのに役立ちます。

死後の手続きについての詳しい解説は、以下の記事を参照してください。
関連記事:家族が亡くなった後の手続き一覧や対応すべき内容を業界関係者が解説

死後の問題に対応する2つの解決策

残った財産に関しては「遺言書」で本人の希望どおりに処理できますが、葬儀やお墓をどうするかは、たとえ遺言書に記載しても効力はありません。
遺言書でできることは民法で厳密に規定されています。
それ以外の手続きを確実に実行してもらうためには「死後事務委任契約」が必要です。

遺言書の作成

遺言書は、法定相続人以外への財産譲渡(遺贈)を希望する場合に作成が不可欠です。
しかし、その作成には法律的な知識が必要で、素人が作成すると無効になるリスクがあります。
たとえば、相続と遺贈のように、細かな法律上の用語の使い分けが必要です。
そのため、遺言書の作成には法律の専門家に相談することをおすすめします。

遺言書の書き方については、下記の記事を参照してください。
関連記事:無効にしないための遺言書の書き方|意外と知らない5つの注意点とよくある質問を解説

死後事務委任契約の締結

死後事務委任契約は、財産以外の死後手続きを確実に実行するために重要です。
通常の委任契約は委任者の死亡で終了しますが、この契約は死後も有効です。
具体的には、ペットの引き取り先の選定、住居の解約、葬儀やお墓の手配、各種手続きや契約解除など、幅広い内容が含まれます。

身寄りがない方や家族と疎遠な方、独身の方の場合は特に有用です。

老後のリスクに不安がある方はお気軽にご連絡ください

老後のリスクに不安がある方はお気軽にご連絡ください

おひとりさまの老後にはさまざまなリスクがありますが、適切な準備で多くの不安を解消できます。
超高齢社会の日本では、身寄りがない状況で、老後リスクを実感している方が増えています。
終活に「早すぎる」ことはなく、早期に始めることで充実した人生を送れます。

一般社団法人 終活協議会は、老後の不安を取り除く「心託サービス」を提供しています。
日常生活サポートから死後の手続き代行まで、幅広いサービスを一生涯利用できます。
専門スタッフが誠心誠意、あなたの終活をサポートいたしますので、老後への不安をお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
一般社団法人終活協議会の終活サービスについて

監修

竹内義彦
竹内義彦一般社団法人 終活協議会 理事
1969年生まれ、大阪出身。
2012年にテレビで放送された特集番組を見て、興味本位で終活をスタート。終活に必要な知識やお役立ち情報を終活専門ブログで発信するが、全国から寄せられる相談の対応に個人での限界を感じ、自分以外にも終活の専門家(終活スペシャリスト)を増やすことを決意。現在は、終活ガイドという資格を通じて、終活スペシャリストを育成すると同時に、終活ガイドの皆さんが活動する基盤づくりを全国展開中。著書に「終活スペシャリストになろう」がある。

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