2023年5月13日

無効にしないための遺言書の書き方|意外と知らない5つの注意点とよくある質問を解説

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相続によるトラブルは年々増加しています。裁判所の司法統計によると2000年に8,899件だった遺産分割調停件数は、2023年には13,872件へ増加しました。現在の日本は超高齢社会のため、相続の件数は増加しており、その分トラブルも増えていることがわかります。相続のトラブルを回避するには「遺言書をきちんと作成すること」がひとつの方法です。

そこで本記事では、相続によるトラブルを回避していくために重要な遺言書について、内容や種類、書き方を解説していきます。また、作成時の注意点やよくある質問を紹介しているため、遺言や相続に関してお悩みの人はぜひ参考にしてください。

※遺産分割調停
被相続人が亡くなり、その遺産の分割について相続人の間で話合いがつかない場合に、家庭裁判所に対して申立てをおこない、調停や審判を受けること。

遺言書とは死亡後の財産を「誰にどのように分配するか」書き記したもの

遺言書は様式が法律によって厳密に決められています。遺言書は本人が亡くなったあとに効力を発揮するため、実際に遺言を執行する際に本人の意思を確認することは不可能です。遺言の内容を確実に実行するには、法律で規定された様式に則って作成する必要があります。

遺言書に似た言葉に遺書がありますが、両者は全く別の物です。遺書は自分の気持ちを伝える手紙で、法律上の効力はありません。

遺言書に記載する内容

遺言書に書く内容は自由ですが、法的な効力を有する事項は、民法やその他の法律によって定められています。詳細は以下の表をご確認ください。

項目内容
相続に関する事項・誰にどの程度の財産を相続させるのかを指定
・法定相続人以外への遺贈
・法定相続分とは異なる相続割合の指定
・特別受益の持ち戻し免除の記載
・相続人の廃除や廃除の取り消し
財産の処分に関する事項・遺産相続の割合や分割の方法
・相続人以外への財産譲渡
身分に関する事項・婚姻関係にないパートナーとの間にできた子の認知
・残された未成者の後見人の指定
遺言執行に関する事項・遺言執行者の指定

法的な効力を有するのは、以上の様な事項に限られますが、それ以外の内容を書いてはいけないわけではありません。たとえば、遺産分割の内容に関する理由や遺言者の思い、希望を具体的に記した補足事項を「付言事項」として記載することは一般的です。

遺言書が必要な場合

ここでは、遺言書が必要な場合について、以下の3つの場面について解説します。

  • 財産の分配方法を指定したい場合
  • 法定相続人以外に財産を譲渡したい場合
  • 法定相続人がいない場合、行方がわからない場合

ひとつずつ見ていきましょう。

財産の分配方法を指定したい場合

相続関係が複雑な場合や遺産のなかに不動産がある場合は、遺産協議で相続人同士がトラブルとなる可能性があります。あらかじめ遺言者(被相続人)が誰に何を相続するかを決めておくことで、トラブルに陥るリスクは低くなるでしょう。

法定相続人以外に財産を譲渡したい場合

遺言が無い場合、財産は法律で定められたルールに基づき、法定相続人に分配されます。

法定相続人とは、配偶者と子供や孫などの直系卑属(第一順位)、親・祖父母などの直系尊属(第二順位)、兄弟姉妹と甥姪(第三順位)を指します。

たとえば、息子の配偶者に介護をしてもらった感謝から財産を残したいと思っても、法律上は相続の権利がありません。このような場合、遺言書に息子の配偶者に財産を残したい旨を記載することによって、息子の配偶者に財産を残せます。

法定相続人がいない場合、行方がわからない場合

法定相続人がいない場合、さまざまな清算手続きがおこなわれたあとに残った財産は国庫に帰属します(民法959条)。それを望まないのであれば、被相続人は遺言書を残しておいたほうが良いでしょう。遺産分割協議は相続人全員でおこなう必要があり、行方不明者がいると協議できないからです。
そういったケースでは、裁判所に対して失踪宣告や不在者財産管理人の選任の申し立てなどの複雑な手続きが必要になります。遺言書があれば遺産分割協議が不要なため、スムーズに遺産が相続されます。

遺言書の種類と書き方

遺言書の種類と書き方

遺言書には「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の2種類があります。ここでは、それぞれの特徴と書き方について解説します。

普通方式遺言

普通方式遺言は法定の形式にしたがって作成する一般的な遺言方式で、以下の3種類に分けられます。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

以下でひとつずつ解説します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が自筆(手書き)で作成した遺言書です。民法968条で「遺言者が、その全文、日付および氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定められています。自筆証書遺言は手軽に作成できますが、紛失・偽造などの恐れや、本人の死後、誰にも発見されない可能性も考慮しなければなりません。

自動証書遺言の書き方は以下のとおりです。

  1. 全文を手書き(代筆は無効)で書く

    ※財産目録に関してはパソコンで作成したものや預金通帳のコピーの添付でも可(ページごとに署名、押印が必要)

    1. 日付を記載し、署名する
    2. 印鑑を押す(実印でなくてもよいが、信頼性を確保するためには実印が望ましい)

遺言書を書く筆記具・用紙・封筒についての決まりはありません。しかし、現実的には鉛筆で書いたり封をしていなかったりすると偽造などの恐れがあるため、避けたほうが良いでしょう。訂正する際は訂正箇所に取り消し線を引き、そのそばに新しい文言を書いて押印します。さらに、余白にどこの部分をどのように変更したかを付記し、そこにも署名・押印しなければなりません。

また、遺言者の死亡後に遺言書が偽造されることを防止するために、検認という手続きが必要です。検認には相続人に遺言書の存在を知らせる目的もあります。遺言書の保管者や発見した相続人は、速やかに裁判所に検認の申し立てをしなければなりません。もし遺言書に封印があった場合、勝手に開封すると50,000円以下の過料(罰金)が課せられる可能性があるため、注意しましょう。

作成した遺言書を安全に保管するために「自筆証書遺言書保管制度」があります。法務局で遺言書を保管する制度で、遺言者が亡くなったあとに相続人へ遺言書の存在が通知されます。あらかじめ様式や書き方が守られているかどうかチェックされるため、検認手続きは不要です。

自筆証書遺言保管制度で使用できる用紙は以下のとおりです。

  • A4サイズ
  • 上部5ミリメートル、下部10ミリメートル、左20ミリメートル、右5ミリメートルの余白を確保
  • 片面

公正証書遺言

公正証書遺言は、2人の証人の立会いのもと口頭で話した遺言の内容を公証人に文書化してもらう遺言です。専門家に作成してもらうため、書類上の不備で無効になるリスクや、トラブルになる可能性が低くなります。公証役場で保管されるため、紛失や偽造がなくなり、検認も必要ありません。

手数料は公証人手数料令第9条別表によって定められており、相続する遺産額が増えるにしたがって加算されます。手数料のおよその金額は5,000円〜50,000円程度です。

公正証書遺言は、遺言者の話す内容をもとに公証人がパソコンで作成します。内容を確認して、間違いがなければ本人が署名押印して完成です。作成時には二人の証人の立会いが必要です。あらかじめ遺言の内容を書面で整理しておくと、スムーズに作成できます。

また、証人には要件があり、未成年者や相続人は証人になれません。公証役場でも紹介してくれますが、一人当たり10,000円前後の謝礼が必要になります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言書の内容を誰にも知られずに保管したい場合に利用する形式です。遺言者が署名・捺印のうえで封をし、公証人と2人以上の証人の立ち会いの下で、その存在を証明してもらいます。

ただし、公証人や証人はその内容までは確認しないため、書類に不備があった場合は無効になる可能性があります。また、公証役場では保管してくれません。遺言書の作成者本人が保管・管理する必要があり、裁判所での検認も必要です。

秘密証書遺言は、デメリットが大きいため、あまり利用されていません。公正証書遺言書が令和5年(2023年)に118,981件作成されているのに対し、秘密証書遺言書は100件程度に留まっています。

秘密証書遺言の書き方は、おおむね自筆証書遺言と同じですが、以下の2点が異なります。

  1. 手書きでなくても構わない
  2. 日付を記載しなかったとしても、公証人が封筒に日付を記載するため、無効にならない

秘密証書遺言の手数料は、財産額に関わらず定額で11,000円です。

特別方式遺言

特別方式遺言は、死の危機に瀕しているときや乗っている船が遭難しかけているとき、伝染病によって行政に交通を断たれているときなど、特殊な状況下で作成する遺言です。
遺言者本人が自筆で書き、署名と日付を必ず入れ、「特別方式遺言」と明記する必要があります。第三者が証人や作成者になれますが、危機の状況によって異なります。

また、死後に公開する場合は信頼できる第三者に預け、遺言者が亡くなる前に内容を確認しておくことが重要です。これらの手続きを遵守することで、遺言者の意志を正確に反映した遺言書を作成できます。

遺言書作成時の5つの注意点

遺言書作成時の5つの注意点

遺言書を作成する際の注意点を5つ紹介します。遺言書は、最後の意思表示としてとても重要な書類であるため、正確かつ適切に作成することが重要になります。

1.必要な要件・表現方法を守る

自筆証書遺言を作成する場合は、特に書き方に注意が必要です。遺言書の形式は、偽造や改ざんを防ぐために法律で厳密に決められています。そのため、法律に違反していると無効になるケースがあります。
たとえば、日付を“令和〇〇年三月吉日”と書くと無効になります。“三月吉日”という表現では日付が特定できないからです。

また、訂正が正しい方法に沿っていなかった場合は、元の文言が有効になります。作成中に訂正が必要になった場合は、新たに書き直すほうが賢明です。

2.相続人を明確化する

自分が亡くなった場合、誰が相続人になるのかを明確化しなければなりません。死亡して相続が発生するまでは、相続人ではなく「推定相続人」が正式な呼称です。もし推定相続人に漏れがあった場合は遺言書が無効になるケースもあります。

3.特別受益と遺留分を考慮する

「特別受益」とは、生前贈与などによって被相続人から生前に受けた利益を指します。特別受益を受けた場合、相続開始の際にその分を差し引いて相続分が決定されます。

「遺留分」とは、遺言の定めによらず相続人が最低限受け取ることのできる一定割合の財産です。そのため、配偶者や子供がいるのに「全額を慈善団体に寄付する」と遺言書に記載しても無効になります。

遺留分は誰が法定相続人になるかによって変動します。たとえば、配偶者のみが相続人の場合の遺留分は1/2、配偶者と子供が相続人の場合は配偶者1/4、子供が1/4です。

遺留分を侵害された相続人は、その分の財産を受けた人に対して遺留分侵害額を請求できます。

4.遺言書の更新・保管に留意する

遺言書を作成して年月が経過すると、財産の内容や相続人が変動する場合があります。住居を建て替えたり、銀行口座を解約した場合は、遺言書の書き換えをしなければならないケースもあります。

また、遺産の分配方法について考えが変わることもあるため、一度作成して終わりではなく定期的な見直しを検討しましょう。

自筆証書遺言の場合は、保管方法も重要です。せっかく作成しても死後発見されないことや、偽造、紛失などの可能性もあります。自筆証書遺言は費用がかからずいつでも書き直せるのがメリットですが、保管方法が難しいという問題があります。

5.遺言執行者を指定する

「遺言執行者」とは、財産が遺言書どおりに分配されるように必要な手続きをする人です。財産を調査することや、預貯金口座の解約、相続登記をおこなう権限があります。

遺言執行者が必要なケースは、推定相続人を廃除する場合や、生前に認知できなかった子を認知する場合などです。
「推定相続人の廃除」とは、相続する権利を有する人間から虐待を受けている場合などにその人間の相続権を剝奪することです。婚外子がいても生前は家族に秘密にしていて死後に遺言で認知する場合、その手続きは遺言執行者がおこないます。

遺言書の作成に関するよくある質問

遺言書の作成に関するよくある質問

ここでは、遺言書を作成する際によくある質問を3つ紹介します。

1.パソコンで作成した遺言書は有効?

自筆証書遺言の場合は、民法968条により自筆で記載しなければならない旨が定められており、パソコンで作成した遺言書は法的効力がありません。ただし、2019年の法改正により、財産目録についてはパソコンで作成し、各頁に署名・押印する対応が認められました。

公正証書遺言、秘密証書遺言については、パソコンでの作成が認められています。

2.遺言書の種類によって効力の違いはある?

遺言書の種類による法的効力の違いはありません。しかし、効力を発揮するまでの期間には違いはあります。たとえば、公正証書遺言は検認不要で即時に効力を発揮しますが、自筆証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必要です(法務局保管の場合を除く)。

公正証書遺言は公証人が作成し、公証役場で保管する特性上、偽造や変造のリスクが低く、紛失の心配も少ないため、より確実性が高いとされています。

3.遺言書を作成する際の費用はどの程度かかる?

遺言書の作成にかかる費用は、以下の表のように、種類により異なります。

種類費用
自筆証書遺言作成は無料
自筆証書遺言保管制度を利用する場合は手数料(3,900円)がかかる
公正証書遺言一般的に5,000円から50,000円程度
遺言の内容や財産額により異なる
秘密証書遺言公証人手数料として11,000円

なお、弁護士や司法書士に相談や作成を依頼する場合は、別途料金がかかります。料金は専門家によって異なるため、事前確認が必要です。

遺言書について学ぶことは遺族のために大切なこと

遺言書に関する知識や注意点について学ぶことは、遺志を正確に伝えることができるため、残された遺族への負担を軽減できます。また、遺言書の作成は、人生における大事な決断のひとつです。正しい知識のもと遺言書作成に取り組むことで、遺族の未来に安心感をもたらすことができるでしょう。

遺言書を作成していくなかで、専門家の協力が必要な場合は、一般社団法人終活協議会へご相談ください。司法書士・弁護士が在籍しており、公正証書遺言の作成も可能です。

遺言書の作成以外でも、終活に関するさまざまな内容の相談に対応しています。詳しいことをお聞きになりたい方は、お気軽にお電話でお問合せください。専門のスタッフがサービスについて丁寧にご説明します。

終活を本格的に進めていくと、遺言書の作成だけでなく、終活のほかにもやらなければいけないことが次々と出てくるため、疲弊してしまう恐れがあります。

老後の時間に余裕を持ち、穏やかに過ごしていきたい方は終活サービスのご利用も検討してみてはいかがでしょうか。

一般社団法人終活協議会の終活サービスについて

監修

落合康人
落合康人所属:東京司法書士会 一般社団法人 終活協議会理事 
1997年 東洋大学法学部卒業
大学在学中から司法書士試験の勉強をしつつ、1999年株式会社サイゼリヤに入社
7年間勤務した後、再度司法書士を目指すため2006年退社
2007年 司法書士試験合格
2008年 司法書士登録
試験合格後は、都内の司法書士事務所や法律事務所にて勤務
2021年 「落合司法書士事務所」開設
2021年 一般社団法人終活協議会理事就任

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