入院・手術に必要な保証人がいない場合の対処法を専門家解説

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結論から申し上げますと、たとえ保証人がいない場合でも、入院や手術は可能ですのでご安心ください。今回は入院・手術時に必要な保証人がいない場合をテーマに詳しくコラムで解説していきます。

入院・手術時の保証人がいない!病院側が求めてくる理由は?

総務省の調査(1-4)によると、病院・施設の9割以上が入院・入所時に身元保証人を求めるようです。実は入院・手術の際に保証人を頼める方がほとんど(参考:日本総研の調査)なので、病院側は保証人を用意できる前提でいます。

そのため、たとえ病院側に「入院時に保証人になってくれそうな人は周囲にいない」と伝えても「遠い親戚を頼ってはどうか」などと提案され、保証人を探すようにお願いされると思います。

そこまでして病院側が保証人を必要とする理由は何なのでしょうか?その理由は保証人が担う重要な役割にあります。

緊急連絡先が必要であるため

入院後に患者に急な容態の変化などが起きた際に、病院側は誰に連絡すれば良いのかわからないと非常に困ってしまいます。万が一の事態を想定し、常に連絡がつく緊急連絡先を求めており、保証人にはその緊急連絡先の役割があります。

入院診療計画書について説明するため

医療法第6条の4では、病院側が「入院診察計画書」を作成し、患者またはその家族に適切な説明を行う義務があると定められています。

説明相手は患者またはその家族ですが、患者の家族が保証人となることが多いため、病院側は保証人に対して入院診察計画書の説明を行うことが多いです。

入院中に必要なものを準備してもらうため

一般的には入院時に使用する衣類やタオル類、歯ブラシや歯磨き粉などは患者やその家族が準備します。必ずしも保証人が準備するわけではありませんが、家族がおらず、患者自身で用意している余裕がなければ、病院側は保証人に準備を依頼します。

入院費用を払えなくなった場合に保証してくれる人が必要であるため

患者が期日までに支払わなかった医療費のことを「未収金」といいますが、 厚生労働省が各地の病院に対して行った調査(p.17)によると、令和3年11月単月における調査対象となった病院の平均未収金額は約119万円だそうです。

こうした未収金の発生は病院の運営に影響します。そこで病院側が保証人に求める重要な役割が、入院費用の保証です。患者本人が入院費用を支払えなくなった場合に保証人が患者に代わって入院費用を支払います。

病院としてはリスクヘッジのために万が一の際に入院費用の保証をしてくれる存在が必要です。こうした未収金の発生を防ぐためにも病院は保証人を必要としています。

退院・転院支援のため

落ち着いてきたら、必ずしも「退院して自宅に帰れる」わけではありません。術後の経過を見て、リハビリや療養の継続が必要であれば、専門の病院や施設に移ることもあり、その際にまた保証人が必要となります。

病院側で退院・転院の支援を行うので、保証人が必要となります。

亡くなった際の遺体や遺品の引き取りのため

入院中に患者が亡くなった場合、遺体や遺品を引き取ってくれる方が必要です。こうした遺体や遺品の引き取りも保証人の重要な役割となっています。なお、身柄を引き受けるので保証人は「身元引受人」とも呼ばれています。

保証人がいない場合、入院できる?

保証人がいない場合、入院できるかどうか迷う人のイメージ

保証人には病院側にとってさまざまな重要な役割があり、保証人がいないと病院側は受け入れたがりません。実際に、保証人がいないことを理由に入院を断ったケースが過去に何件かあったようです。保証人がいない場合でも入院はできるのでしょうか。

保証人がいなくても入院はできる

医師法第19条第1項では「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と定められており、実は「保証人がいないこと」は「正当な事由」があると認められていません(参考:厚生労働省)。

それゆえ、保証人がいないことを理由に入院を断るようなケースはあってはならないのです。つまり、保証人がいなくても法律上、入院はできます。

ただし、入院の手続きに時間がかかりやすい

法律上「保証人がいなくても入院はできる」となっていても、病院側にとって保証人は重要な存在です。保証人がいない場合、病院によって対応は異なりますが、総務省の調査(1-4)によると以下のような対応をするようです。

  • 身元保証等が必要になる場面ごとに個別に対応する:77.1%
  • 入院・入所をお断りする:5.9%
  • 身元保証会社を紹介する:6.8%
  • 身寄りがないまま入院・入所させる:4.9%
  • 保証金を預かり入院・入所させる:1.7%
  • 成年後見制度の利用を促す:1.5%
  • その他の回答:6.6%

※無回答が7.0%

最も多いのは個別対応となっています。どのような対応をするかは病院によって異なりますが、病院側から自治体などに相談するケースもあるようです。

イレギュラーな対応となるので、入院に時間がかかってしまいます。命にかかわることなので、入院手続きに時間をかけることはなるべく避けたいところですね。

本当に保証人になれる人は周りにいない?入院・手術時の保証人になれる条件をチェック

保証人には以下2つの条件があります。

  • 面識があること
  • 十分な収入があること

一般的に現役世代の家族(配偶者や親、兄弟、子どもなど)を入院・手術時の保証人にしますが、面識さえあれば友人や知人など血縁関係がない方でも問題ありません。

また保証人には入院費用を保証する役割があるので、十分な収入があることが条件となります。

もう一度周囲に本当に頼れる人がいないか、探してみましょう。

なお、保証人の欄は必ずご本人に記入していただくようにしてください。本人の同意なく保証人の欄を記入すると「私文書偽造罪」(刑法159条)に問われる可能性があります。

入院・手術時の保証人をお願いする場合の注意点

保証人となる方には病院側から様々な対応を求められたり、万が一の時の金銭保証をしなければならなかったりと、ある程度の負担があります。

もともと関係が希薄な方(会社の知人)に保証人を依頼するとトラブルに発展しやすいですし、とはいえ関係性が深い方(家族や親友)に保証人を依頼するとお金が絡むので関係性が崩れる可能性もあります。

相手との関係性を見極め、どのような責任を背負うことになるのか、しっかりと病院に確認したうえで相手に伝えてから了承を得るようにしましょう。

入院・手術時の保証人がいない場合はどうすればいいのか【対処法】

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保証人になれる人が周囲にいない場合、これから紹介するような対処法があります。

保証人が不要の病院を探す

稀に手続きに保証人を不要とする病院があります。冒頭で説明したように、総務省の調査では、病院・施設の9割以上が入院・入所時に身元保証人を求めるとあるので、保証人を求めない病院は最大で1割となり、非常に少ないです。

病院に直接問い合わせて確認してみたり、口コミを確認したり、近所の方に聞いたりなどして探すと良いかもしれません。

入院保証金を支払えば入院できる病院を探す

こちらも稀ですが「入院時に入院保証金を支払えば保証人は不要」としている病院もあります。入院保証金とは入院前に病院側に支払うお金のことで、「入院費用の前払い」のようなイメージです。相場としては5~20万円となるようです。

「入院保証金だけではなく、保証人も必要」としている可能性もあるので、そうした病院を探す際は病院側に必ず「入院保証金を支払えば保証人は不要かどうか」を確認するようにしてください。

身元保証サービスを利用する

身元保証サービスとは、身元保証会社が提供する保証人を代行するサービスのことです。身元保証会社が病院側と提携していることもあり、保証人が用意できないと病院側に身元保証サービスを紹介されることもあります。

ただし、身元保証サービスは玉石混交なので紹介されてから契約するのではなく、信用できそうな身元保証会社を自分で選び、あらかじめ契約してから入院することをおすすめします。

注意!成年後見制度を利用しても、保証人の代わりにはなりません

よく「成年後見制度を利用すれば入院できる」という趣旨の内容を見かけることがありますが、成年後見制度は本来、判断能力低下時に本人の財産を守ってくれる人(後見人)を選出する制度のことです。

後見人は入院手続きの代行もしますが、本人の生活や健康の維持するという職務の一部に過ぎません。

また、あくまでも効力を発揮するのは「判断能力低下時」で、認知症などの症状がない限りは後見開始となることはないので、都合良くいつでも使えるというものではありません。

さらに、後見人を立てても後見人自身が保証人になることはできません(利益相反となり、禁止しされています)。それゆえ、入院や手術のために成年後見制度を利用するのは必ずしも適切とは言えないので、ご注意ください。

保証人がいない場合の相談先は?

保証人がいなくても身元保証サービスを利用するなど対処することで入院・手術はできます。ただ、個々人でそれぞれお悩みがあると思いますので、ここまで説明した内容だけでは完全に不安を拭い去れないかもしれません。

ぜひ次に紹介するような相談先に相談してみてください。

身元保証会社

身元保証会社では「入院・手術時の保証人の代行」の相談から対応までを一貫して対応しています。

また身元保証会社は高齢者向けのサービスを展開しているシニア支援の専門家なので、日常生活の不安や病気などのことでお困りならば気兼ねなく相談できますし、支援までしてくれます。

一般社団法人終活協議会では20年以上の運営実績をもとに『心託』として、身元保証サービスから日常生活サポートまでさまざまなシニアのお悩みを解決するお手伝いをしています。

最初の入会金のみ(月額会費・年会費不要)で、適正価格でサービスをご提供することをお約束しています。詳細は一般社団法人終活協議会『心託』サービスについてをご覧ください。

医療ソーシャルワーカー

医療ソーシャルワーカーとは、怪我をしたり、病気になったりしたときに必要な情報を提供をしたり、支援をしたりする職業のことで、病院などに在籍しています。

治療を受ける際の不安や退院後の不安など、主に治療に関する不安があれば相談することができます。入院・手術時に保証人が準備できないことも相談することができます。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは市区町村が設置した高齢者のお悩みの総合相談窓口であり、病気のことや保証人のことも相談できます。

公的な機関に相談できるという安心感はありますが、一次対応(相談の受付)のみで関係機関と連携して支援という形になります。なお、地域包括支援センターに相談できるのは65歳以上の方のみです。

生活保護を受けているが保証人がいない場合

生活保護者の場合、「医療扶助」により、医療費の全額が公費による負担となります。まずは病院側から保証人を求められたことを行政に相談してみてください。保証人の用意を免除してもらえることもあるようです。

保証人とよく似た言葉との違い

保証人とよく似た言葉との違いについて迷う人

保証人とよく似た言葉に「身元保証人」「連帯保証人」「身元引受人」「後見人」があり、病院によってはうまく言葉を使い分けできていないケースも散見されます。どのような役割が求められているのかは病院側に確認しておきましょう。

身元保証人

身元保証人とは、本人の身元(素性)や資力を保証する人のことです。緊急連絡先、金銭保証の役割、亡くなった際の身柄の引き受けなどの役割があります、本記事における保証人とはこの「身元保証人」のことを指します。

連帯保証人

本人が病院の費用の支払いをしない(債務を履行しない)ときに、本人の代わりにその債務を保証する人のことです。金銭保証の意味合いが強く、緊急連絡先などの役割はない可能性があります。

身元引受人

病院における身元引受人とは、亡くなった際の身柄の引き受けをする人のことです。身柄の引き受けだけではなく、身元保証人のような緊急連絡先や金銭保証の役割も担うケースが多いです。

後見人

後見人は、成年後見制度によって選任された本人の財産を守ってくれる人のことです。必要であれば病院への入院も手配してくれます。

入院・手術時の保証人がいないときは「一般社団法人終活協議会」にご相談

一般社団法人終活協議会は20年以上の運営実績があり、病院への入院、介護施設利用時に必要となる保証人代行サービス(身元保証)や日常生活のサポートなど、今までは家族が担ってきたすべてのことをお引き受けできるサービス、『心託』を全国で提供しています。

会員数は2万名以上、入会金のみで年会費はかからない、あなたの一生涯をお手伝いするサービスとなっています。ご相談無料、ぜひお気軽にご相談ください。

一般社団法人終活協議会の身元保証サービスについて

監修

竹内義彦
竹内義彦一般社団法人 終活協議会 理事
1969年生まれ、大阪出身。
2012年にテレビで放送された特集番組を見て、興味本位で終活をスタート。終活に必要な知識やお役立ち情報を終活専門ブログで発信するが、全国から寄せられる相談の対応に個人での限界を感じ、自分以外にも終活の専門家(終活スペシャリスト)を増やすことを決意。現在は、終活ガイドという資格を通じて、終活スペシャリストを育成すると同時に、終活ガイドの皆さんが活動する基盤づくりを全国展開中。著書に「終活スペシャリストになろう」がある。

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