
この記事の解説者

菊田あや子
一般社団法人終活協議会 理事

下関市出身、日本大学芸術学部放送学科卒業。
大学在学中にラジオ生放送の司会でデビューし、20歳からプロとして芸能活動をスタート。ワイドショーのリポーターで全国を飛び回り、90年代のグルメブーム以来、「日本一食べている女性リポーター」となりグルメ・温泉・旅番組で、持ち前の明るいキャラクターで活躍している。近年は「食育」「介護」「話法」「コミュニケーション」「おもてなし」など多岐に渡る内容で全国に講演活動を行っている。著書に「エンジョイ終活」がある。
ライフスタイルの多様化により、親戚関係が遠のき、身寄りがない一人暮らしの高齢者が増加しています。
2019年国民生活基礎調査によると、高齢者がいる世帯のうち49.5%は単独世帯で、日本の高齢者のうち約半数が一人暮らしであることがわかります。

2)2016(平成28)年の数値は、熊本県を除いたものである。
3)「親と未婚の子のみの世帯」とは、「夫婦と未婚の子のみの世帯」及び「ひとり親と未婚の子のみの世帯」をいう。
身寄りがない老後で不安になるのが、自身が病気になったり、体が不自由になったりしたときではないでしょうか。
自分でどこまで老後の準備しておけばいいのか、そもそも準備とは何をすればいいのか、具体的な想像をするのは難しいです。そこで、身寄りがなくて不安を感じている人でも安心できる、「入院」「施設入居」についてのガイドを作りました。ぜひ最後までご覧ください。
目次
身寄りがない人に訪れる不安な将来
いま現在、一人でも問題なく日常生活が送れていると「老後は大変と言うけれど、具体的に想像ができない」と思う人もいるでしょう。では実際に、身寄りがない場合どんなことで困るのか、いざ困ったときにどこに相談すればいいのかを解説します。
身寄りがないと困ること
身寄りのない人が、老後に困ることは大きく分けて3つあります。
- 身元保証人が必要なとき
- 身体が不自由になったとき
- 亡くなったとき
1.身元保証人が必要なとき
- 入院
- 施設などへの入所
- 入居(引越しなど)
病院や施設、引越しの際に提出する書類では「身元保証人」の項目が必ずと言っていいほどあります。しかし身寄りがない人にとって、身元保証を頼める人は簡単には見つかりません。そこでおすすめなのが、身元保証人になってくれる民間企業のサービスです。
身元保証サービスでは、専門の保証会社が家族や親族に代わり、身元保証人の役割を担います。身元保証サービスを利用すれば、日常生活で困ったことが発生した際のサポートや、緊急時の病院への連絡、終活に関する相談(葬儀、遺産整理など)など行ってくれます。※身元保証人のサービスを行っている民間企業については、こちらをご覧ください。
2.身体が不自由になったとき
高齢になると、身体機能が低下し足腰が弱りやすいので、今まで一人で問題なくできていた買い物や家事などが困難になることが考えられます。自宅での転倒がきっかけとなり「寝たきり」になるケースも、少なくありません。少しの転倒が、要介護状態を招く可能性も十分ありえます。元気なときに生活支援サービスを考えておく必要があるでしょう。
3.亡くなったとき
病院やご自宅で亡くなった際の遺体の引き取りや、その後の葬儀を誰が取り仕切るのかは、数あるお困りごとの中でも、より負担の大きな問題です。例えば「遠い親戚」「住んでいる家の大家さん」「となり近所の人」など、何かあったときに迷惑がかかってしまうかもしれません。周囲への影響を最小限にしたり、なるべく迷惑をかけないようにするためにも、死後の手続きなどを準備しておくのがおすすめです。
身寄りがない人の相談窓口
身寄りがない人の老後は、心配ごとが多いということがわかりました。ここでは、いざ困ったときに、どこに相談すればいいかご紹介します。
実は、老後の困りごとで相談できる場所は、意外と身近にあります。
- 行政・民生委員・お住まいの自治体
- 社会福祉協議会
- 弁護士や司法書士の士業
- 社会福祉士(ソーシャルワーカー)
この中でもまずは、お住まいの自治体(市役所など)に問い合わせてみることをおすすめします。身近なうえ、無料で相談できますし、必要なら他のサービスにつないでくれるでしょう。
もし通院中の病院があるのなら、病院に社会福祉士(ソーシャルワーカー)がいるかも確認してください。社会福祉士は、高齢者やハンディキャップがある人をサポートする職業です。行政や医療機関などの関連施設につなぐのが仕事なので、知識も豊富ですし、その人に合ったサービスを紹介してくれます。自治体で社会福祉士を紹介してくれる場合もあります。
他にも民間ではありますが、社会福祉協議会 は非営利団体として、全国で高齢者や障がい者の方向けのサポートを行っています。
皆様がお住まいの地域において、もっとも身近な地域で活動しているのが市区町村社会福祉協議会(市区町村社協)です。高齢者や障がい者の在宅生活を支援するために、ホームヘルプサービス(訪問介護)や配食サービスをはじめ、さまざまな福祉サービスを行っている他、多様な福祉ニーズに応えるため、それぞれの社協が地域の特性を踏まえ創意工夫を凝らした独自の事業に取り組んでいます。
一部引用 社会福祉協議会HPより
弁護士や司法書士など国家資格を持った専門家にも、生活支援、遺言、生前整理など多岐にわたって老後について相談をすることは可能です。ただし、実際に契約する場合は有料になり、また事務所ごとにサービスや料金が異なるので注意しましょう。
身寄りがない場合の入院
高齢になると、病気などで入院する可能性がどうしても高くなります。もし入院した場合、入院中は治療に専念するため、その他のことまで気を回すのは大変です。
ここでは入院時の注意点として「入院中の着替えなどについて」「入院時の手続き」「入院時の費用」「身元保証人」「支払保証」をわかりやすく説明します。
入院中に必要なもの
入院中に必要なものの準備や入院中の着替え、入院の手続きなど、家族がやってくれるのが一般的な考えでしたが、単身の高齢者・身寄りのない人が増えた現在では難しい人が多いです。
山梨大学の研究班が提唱した「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」では、
”パジャマ、衣類、タオル、洗面道具などの日用品を、レンタルや購入ができる環境がある医療機関が望ましい”としています。
※一部引用

実際「院内で過ごす衣類やタオルは、有料でレンタル可能」「院内の購買商品に、入院中に必要な商品を充実させた」といった環境を整えている病院も出てきています。
病院選びをする際は、元気なうちから身の回りのものの、準備がしやすい病院を探しておくと良いでしょう。
また、ちょっとしたお願いができる支援サービスとして「地域包括支援センター」や「民間サービス」があります。こちらの詳しい説明は後述していますので、ぜひ読み進めてください。
入院手続き
入院する際はほとんどの場合、入院前の最後の診察で入院当日の詳しい説明があります。
当日に必要なものや提出書類の説明もあるので、このときに気になることはしっかり聞いておきましょう。
一例として、入院する日に必要なものを紹介します。(必要なものを、一覧で渡してくれる病院もあります)
- 診察券
- 保険証
- 入院申込書
- 介護保険証
- 各種受給者証(特定疾患医療受給証や障害者手帳など)
- 限度額認定証
- 手術や検査の同意書
- 現在飲んでいる薬
入院中は検査や治療などのスケジュールが決まっているので、身寄りがない方の入院の場合、忘れ物をすると取りに帰るのは困難です。必要なものを一覧にして書き出し、忘れないよう準備しましょう。
入院費用について
高齢者が罹りやすい病気とその治療費
入院の費用は、退院の日に支払う病院が多いので事前に用意しておくと安心です。
病気や治療内容によって費用は大きく異なりますが、ここでは一例として、高齢者が罹りやすい病気の入院費を紹介します。なお、自己負担額は年齢と収入によって異なります。
- 70歳未満の一般所得者は3割負担
- 70歳〜74歳は所得によって3割負担(現役並み所得者)、2割負担(一般)
- 75歳〜は所得によって3割負担(現役並み所得者)、1割負担(一般)
参考:厚生労働省:参考資料

高齢者が罹りやすい主な病気の自己負担額
脳血管疾患
高齢者の脳血管疾患で多いのは、「脳梗塞」「くも膜下出血」などです。
(例:脳梗塞の入院費は1,585,249円、3割負担で自己負担額が529,238円)
心疾患
高齢者の心疾患で多いのは、「心筋症」「不明脈」「心筋梗塞」などです。
(例:急性心筋梗塞の入院費は1,587,714円、3割負担で自己負担額が529,238円)
がん(癌・悪性腫瘍)
高齢者では、がんの発生率も上がります。中でも多いのが「食道がん」「胃がん」「前立腺がん」「肺がん」です。
例として、胃がんと肺がんの場合の入院費と自己負担額を見てみましょう。
- 胃がん(胃の悪性新生物)の入院費は927,614円、3割負担で自己負担額が309,205円
- 気管支がんおよび肺がん(気管支および肺の悪性新生物)の入院費は830,708円、3割負担で自己負担額が276,903円
参考資料 公益社団法人全日本病院協会と楽天生命のデータ
上記のように重い病気に罹ってしまうと、どうしても費用がかさんでしまいます。身寄りがなく、しかも頼れる人がいない場合、これらの費用を払えない恐れもあります。
治療費以外の費用
入院費には、治療費以外にも「個室代」「食事代」などが別途必要です。病院により費用も異なるので、入院前に概算を聞いておきましょう。
退院後に気をつけたい介護費用について
高齢者の入院では、退院後に介護が必要となるケースが多い傾向にあります。例えば脳梗塞では、後遺症として麻痺が残ったり、認知症を発症したりすることがあります。そういった場合に備え、介護保険でのサポートを考えておきましょう。
退院後のことは、病院の社会福祉士(ソーシャルワーカー)や、後述する地域包括支援センターで相談できます。
入院時に必要な身元保証人
ほとんどの病院では、入院するときに「身元保証人」が求められます。また身元保証人とは別に、入院費の支払い保証として「連帯保証人」を求められるケースもあります。
病院が身元保証人を求める理由は、以下の通りです。
- 緊急の連絡先に関すること
- 入院計画書に関すること
- 入院中に必要な物品の準備に関すること
- 入院費等に関すること
- 退院支援に関すること
- (死亡時の)遺体・遺品の引き取り・葬儀等に関すること
引用:身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン
病院にとって身元保証人が重要なのはわかりますが、そもそも身寄りがないと身元保証人を頼める人を探すのは大変です。
そんな、身寄りがなくても身元保証人を頼む方法として利用できるのが、成年後見制度です。成年後見制度を利用すれば、身寄りがなくても他の誰かに身元保証人になってもらうことが可能です。
成年後見制度を利用したい場合には、お住まいの市区町村の介護保険や高齢者を担当している部署に問い合わせをすれば、成年後見制度を頼める業者に取り次いでくれます。
※成年後見制度については、こちらをご覧ください→成年後見制度の利用の見出しにジャンプ
支払い保証を求められる場合
身元保証人とは別に、入院費の支払い保証として「連帯保証人」を求める病院があります。また、「生計を別にしている人」と指定されている場合もあります。
病院側としては、入院費の支払いを確実にしてもらうためのものですが、連帯保証人がいない高齢者が増えたことで、総務省から「入院費用等の担保についての連帯保証人以外の選択肢の設定」が出されました。
各病院は、患者自身に支払い能力がある場合には、一律に連帯保証人を求めるのではなく、クレジットカード番号登録等の他の選択肢について検討する必要がある。
引用:入院費用等の担保についての連帯保証人以外の選択肢の設定
上記のように連帯保証人に関しては、支払い能力についての判断とクレジットカード番号の登録により、その役割を代替することが可能な病院も出てきました。
身元保証人については、こちらの記事でわかりやすく説明しています。
身元引受人、連帯保証人や後見人との違いについても詳しく書いております。ぜひ参考にしてください。
身寄りがなく、生活支援が必要になった場合
身寄りがない人の老後は、頼れる人がいなくて不安に感じるシーンが少なくありません。
例えば買い物のためにスーパーへ行っても、帰りに重いものを持つのが大変だったり、通院の行き帰りが大変になったりと、普段の生活行動がつらくなって負担を感じてしまいます。
ここでは身寄りがなくても、ちょっとした支援を受けられるサービスを2つご紹介します。安心して老後を迎えるために、ぜひ覚えておきましょう。
買い物や受診時の付き添いなど、ちょっとした支援が欲しいとき
地域包括支援センターの利用
地域包括支援センターとは、高齢者の暮らしをサポートする施設のことです。主に各自治体に設置されていて、以下の専門家が在籍しています。
- 主任ケアマネジャー
- 社会福祉士
- 保健師
地域包括支援センターは、高齢者サポートの拠点として「介護サービス」「医療サービス」「成年後見制度の対応」など幅広い相談や、必要なサービスを紹介してくれます。各地域によって呼び名は様々であり、「高齢者支援センター」や「高齢者相談センター」などの名称で呼ばれることもあります。
例えば地域包括支援センターでは、要介護と認定されている場合、介護保険を使って介護ヘルパーさんに日用品の買い物や病院の付き添いをお願いできます。※お願いできる外出支援は細かく分かれており、「日用品の買い物はOKだが、散髪はNG」「病院まではタクシー送迎するが、院内にはついていけない」などがあるので注意が必要です。
また、地域包括支援センターを利用するには「65歳以上の要介護者」「身体機能や認知機能の低下により公共交通機関の利用が困難な方」などの基準があります。
「介護保険を使ってどこまでの支援が受けられるのか」「ヘルパーさんはどこまでサポートしてくれるのか」などは、自治体によって制度が異なるので注意しましょう。
もちろん「介護保険以外でのサポートを依頼できるところを探す」といった相談も可能です。地域包括支援センターでは、住民の相談を幅広く聞き、制度を横断して多面的な支援を行っています。※地域包括支援センターは、令和3年4月末時点で、全国で5351か所設置されています。
参照:厚生労働省地域包括支援センター参考資料 より
民間サービスの利用
介護保険で外出の支援を受けられるのは、要介護認定が前提の場合がほとんどです。しかし要介護でなくても、ちょっとした外出の困難を感じている高齢者は少なくありません。
そこで選択肢に入れたいのが、民間サービスの利用です。すべて自費にはなりますが、高齢者へのサービスとして、外出や通院、旅行などに付き添うサービスを行っている民間企業があります。
病院の付き添いサービスでは、自宅から病院の往復だけでなく、待ち時間の付き添いや診察時に医師から言われたことを家族に伝えることも可能です。介護保険が適用されない、買い物の付き添いや代行、掃除洗濯なども気楽に依頼できるので便利です。
不安を抱えながら過ごすよりも、民間サービスを利用して快適に暮らすことも検討してみましょう。※企業やサービス内容によって料金は異なります。
身寄りがない人が、判断能力を失った場合
高齢になるにつれ、判断能力は落ちる傾向にあります。自分もいつか認知症になってしまうのではないかと、心配する人もいるのではないでしょうか。
平成26年の厚生労働省「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、65歳以上の高齢者のうち認知症を発症しているのは約15%、2025年には約20%に上り、認知症になる高齢者は増加していくと推計されています。
年 | 平成24年 (2012) | 平成27年 (2015) | 令和2年 (2020) | 令和7年 (2025) | 令和12年 (2030) | 令和22年 (2040) | 令和32年 (2050) | 令和42年 (2060) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
各年齢の認知症有病率が一定の場合の将来推計/( 率) | 462万人 15.0% | 512万人 15.7% | 602万人 17.2% | 675万人 19.0% | 744万人 20.8% | 802万人 21.4% | 797万人 21.8% | 850万人 25.3% |
各年齢の認知症有病率が上昇する場合の将来設計人数/率 | 462万人 15.0% | 525万人 15.7% | 631万人 18.0% | 730万人 20.6% | 830万人 23.2% | 953万人 25.4% | 1016万人 27.8% | 1154万人 34.3% |
(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)による速報値
認知症になる高齢者も一人暮らしの高齢者も増加傾向にあるので、身寄りがなく、誰かに頼れない人は今後も増加するでしょう。
そこで活用したいのが「成年後見制度」です。
成年後見制度とは、身寄りのない人が入院や施設に入所する際、保証人をお願いできるなど、判断能力が無くなったときのための制度です。もしものときのことを考えてこの制度を利用しておくと安心できます。
成年後見制度の利用
銀行や財産管理、病院や病気になった際など、さまざまな場面で手続きが必要になります。また、判断力が落ちているところに、高額な契約を結んでしまい大きな被害に遭うケースも少なくありません。以上のような手続きや契約の際、法律に基づき成年後見人を選んでおくことで、本人に代わる手続き、悪徳な契約を解約することが可能になります。
法定後見制度3つの制度
成年後見制度は大きく分けて3つあります。
- 法定後見制度
- 任意後見制度
- 日常生活自立支援事業
以下、それぞれについて説明します。
法定後見制度
法定後見制度とは、認知症、知的障がい、精神障がいなどによって判断能力が不十分な方に対して、本人の権利を法律的に支援、保護するための制度です。
法定後見制度は、本人の判断能力に応じて「補助」「保佐」「後見」の3種類の後見類型に分けられます。
- 後見・・・判断能力が常に欠けている状態
- 保佐・・・判断能力が著しく不十分な状態
- 補助・・・判断能力が不十分な状態
参考:厚生労働省 成年後見はやわかり 法定後見制度
法定後見手続きの流れ
❶後見(保佐・補助)開始の審判の申立て
↓
❷審理
- 申立書類の調査
- 申立人、本人、後見人等候補者の調査
- 親族の意向照会
- 家庭裁判所の予備審問
- 鑑定の実施(必要時)
↓
❸審判
- 後見(保佐・補助)開始の審判(申立て却下の審判)
- 後見人(保佐・補助)選任の審判
- 成年後見(保佐・補助)監督人の選任(※必要時)
↓
❹審判確定
- 審判書受領後、約2週間で確定
↓
❺後見登記
- 家庭裁判所から東京法務局に嘱託登記
このように法定後見制度を利用するには、大きく分けて4つの流れがあります。詳しくは法定後見制度の記事をご覧ください。
任意後見制度
任意後見制度とは、本人に十分な判断能力があるうちに、将来の認知症や障がいなどのもしもに備えて、あらかじめ自ら任意後見人を選んでおく制度です。任意後見人に、本人の代わりにしてほしいことを契約(任意後見契約)によって決めておきます。任意後見契約は、公証人の作成する公正証書によって結びます。※公正証書とは公証人が作成する公文書のことです。
公証人は、判事・検事・法務事務官などを長く務めた法律実務の経験豊かな者の中から法務大臣に任免された法律の専門家であり、準公務員です。
公正証書は証明力や執行力があり、信頼性と安全性を兼ね揃えた書類ですので、遺言書や契約書などの作成に用いられます。国民の私的な法律紛争を未然に防ぎ、私的法律関係の明確化や安定化を図ることを目的として利用されています。公正証書は公正役場で保管され、紛失や第三者による改ざんの心配がありません。
ただし、公正証書の作成には手数料がかかります。目的によって費用が異なりますので、詳しくは日本公証人連合会のホームページでご確認ください。
参照:法務省 公証制度について
いざ本人が、一人で物事を決めるのが心配になったとき、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されて、はじめて任意後見契約の効力が生じます。
参考:厚生労働省 成年後見はやわかり 任意後見制度
詳しくは任意後見制度の記事をあわせてご覧ください。
日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業とは、以下に該当する判断能力の不十分な人が、地域で自立した生活を送れるような支援や援助を行う事業です。
- 認知症高齢者
- 知的障がい者
- 精神障がい者など
日常生活自立支援事業の窓口は、各市区町村の社会福祉協議会です。費用は各市区町村によって異なりますが、参考として1回の訪問に対し平均1,200円となっています。
厚生労働省によると、日常生活自立支援の内容は、以下を基準としています。
本事業に基づく援助の内容は、次に掲げるものを基準とします。
引用:厚生労働省 日常生活自立支援事業 より
- 福祉サービスの利用援助
- 苦情解決制度の利用援助
- 住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等
- 上記に伴う援助の内容は、次に掲げるものを基準とします。
- 預金の払い戻し、預金の解約、預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理)
- 定期的な訪問による生活変化の察知
利用したい場合、相談窓口(各市区町村の社会福祉協議会)にて相談や申請を行います。
生活の状況や希望する援助内容の聞き取りや希望を確認し、援助内容の具体的な「支援計画」を立ててくれます。支援計画は利用者の判断能力の変化などで、定期的な見直しも行なっているので、まずは各市区町村の窓口で相談してみましょう。契約前の相談は無料です。
身寄りがない人に介護が必要になった場合
身寄りのない高齢者が増え、老後に頼れる親族もいないと、介護施設へ入所を考える人の増加につながります。身寄りのない人が介護施設などに入所することはもちろん可能です。
一方で気をつけたいのは、身元保証人や身元引受人を準備する必要がある点です。
ほとんどの介護施設では、以下の場合に身元保証人が必要になります。
- 入院が必要な怪我や病気になったときの判断
- 亡くなった際の荷物の引き取りや対処手続き
- 施設費の支払いの連帯保証人
しかし身寄りのない人が、身元保証人を探すことは簡単ではありません。身寄りがなくても入所しやすい施設や、保証人になってくれる成年後見制度、保証人代行サービスを行っているところを見つけるためにも、お近くの行政、地域包括支援センターなどに早めに相談することをおすすめします。今すぐ支援が必要でなくても、将来のための相談でもかまいません。気軽に問い合わせてみましょう。
身寄りがないまま、死亡した場合の手続き
単身の高齢者世帯が増えるなか、身寄りがないまま亡くなってしまう人は年々増加することが予想されます。
亡くなった後は、さまざまな事務手続きがあります。
- 葬儀、火葬、納骨の手続き
- 死亡届や社会保険(保険証)の手続き
- 電気・ガス・水道の解約や精算、支払い
- クレジットカードの停止・解約・精算
- インターネットなどで契約していたサービスの解約・精算
- 賃貸物件の解約
- 金融機関の手続き
- 家財や遺品の保管や処分
上記は一例で、これ以上に事務手続きが多く存在します。
また一口に手続きと言っても、何度も市役所などの行政機関に通ったり、手続きに必要な書類を何枚も準備したりとやることは膨大です。さらに書類発行にはお金もかかります。
身寄りがない人の多くは、上記のような死後の手続きをしてくれる人がいないので、元気なうちに準備をしておく必要があります。
もし身寄りがなく親戚もいない人が何も準備せずに亡くなると、自治体の担当者が事務手続きを行います。その場合、本当に親戚がいないかの確認から始まり、仮に連絡が取れた親戚でも「縁遠いから事務手続きはできない」「許可などは判断できない」など、なかなか進まないケースが多いようです。また、病院で亡くなった場合と施設で亡くなった場合、自宅で亡くなった場合それぞれで違いもあります。
■病院で亡くなった場合
身寄りのない人が病院で亡くなった場合、死亡診断書はその病院で作成されます。遺体は亡くなった地域の自治体(市役所など)に連絡され、引き取りと安置が行われます。自治体の担当者は、病院に残っている情報から遠縁でも親族がいるかを確認したうえで、事務手続きをします。遺体の引き取り手がいない場合、自治体で火葬や埋葬が行われます。
■施設で亡くなった場合
施設で亡くなったほとんどの場合は、施設のスタッフが提携病院へ連絡し、医師が死亡確認や死亡診断書の作成をします。施設への入所は保証人が必要なので、死後の事務処理は保証人が行います。「成年後見制度」の後見人か、死後委任契約で契約した保証人に連絡されます。
■孤独死の場合
一人暮らしの家で亡くなった場合、すぐに発見される確率が低く、死後ずいぶん時間が経ってから発見されるケースも少なくありません。
家賃の支払いが滞ったことが原因で大家さんや管理人によって発見されるケースや、連絡が取れないと心配した友人知人によって発見されるケースもありますが、発見されたときには、すでに腐敗が進んでいる場合があります。
身寄りのない人が自宅で亡くなっていた場合、遺体は病院のときと同じく自治体が引き取り、火葬や埋葬が行われます。ただし、自宅で亡くなった場合、死因・死亡時刻・死亡場所の特定のため検案と検視が必要となります。
死後事務委任契約のおすすめ
死亡後は、さまざまな手続きが必要です。身寄りのない人が亡くなった際、生活状況や預貯金などを知らずに事務手続きをしてしまうケースが多く、より煩雑な手続きが増えていきます。しかし、死後事務委任契約を行えば、もしもの時でもしっかりと備えられます。
死後事務委任契約とは、本人の死亡後に以下の事務手続きを行う契約です。
- 死亡届の提出
- 葬儀の手配
- 医療費の支払い
- 公共料金の支払いや停止手続き
委任する内容は自由に取り決めできるので、他にも以下のようなお願いもできます。
- お墓の手配
- 賃貸物件の後処理
- 遺品の整理
契約書は自身で作成可能ですが、法的効力がある「公正証書」として残すのが安心です。
契約書では法律用語を書く場合があり、間違えると後々トラブルになる可能性があるので、公正証書は法的なチェックをしてくれる「行政書士」や「弁護士」に依頼すると良いでしょう。費用はかかりますが、法律に基づいた契約書が残せます。
また死後事務委任契約は、誰にお願いするか決まりはなく、本人が希望する人に委任することが可能です。中には、仲の良い友人や信頼している人に依頼するケースもあります。死後事務委任契約をサービスとしている民間企業もあるので、そういった会社に依頼するのも良いでしょう。
詳しくは死後事務委任契約とは?という記事でわかりやすく説明しています。
身寄りがない方におすすめの身元保証サービス
身寄りがなくても安心して生活するために、身元保証サービスがおすすめです。
当社では、心託という身元保証サービスを提供しております。「生涯笑顔で過ごせるお手伝い」を掲げ、身寄りがないおひとりさま、家族に迷惑をかけたくない人に寄り添ったサービスを行っています。
また、終活の総合相談窓口として「医療」「介護」「相続」「葬儀」まで幅広くサポートしています。財産開示が必要ないので、プライバシーを守りながら終活の不安を解決できます。老後に起こりうる、さまざまな心配ごとにも対応できるプランを用意しており、心託を利用されている会員は、全国で20,000名以上いらっしゃいます。(2022年10月現在)
「心託」では、月額や年会費不要、入会金たった1万円で、以下のサービスが受けられ、非常に喜ばれています。
- 見守りサービス
- 健康相談
- セカンドオピニオン
- 生前&遺品整理見積
- 日常生活サービス
さらにお客様の要望によって、充実した身元保証のプランを3つ用意しています。
- 入院、介護施設入居に伴う身元保証(身元引受け)連帯保証を中心とした「安心プラン」
- 葬儀、連絡、お墓、手続き、遺品整理、遺言、相談、公正証書の作成を中心とした「万全プラン」
- 「安心プラン」と「安全プラン」どちらも備えた「完璧プラン」
どのようなお悩みでも相談窓口は一本化されており、一人ひとりにコンシェルジュがついています。
また、24時間365日対応なので、万が一のときでも安心です。全国には「東京支部」「北海道支部」「東北支部」「横浜支部」「中部支部」「関西支部」「四国支部」「九州支部」の8支部があり、広い範囲で身寄りがない方々や高齢者の方々の老後をサポートします。(エリア拡大中)
専門家のネットワークも全国にあり、2021年12月現在「弁護士」「司法書士」「行政書士」「税理士」「社会保険労務士」「不動産鑑定士」など、1,497名が登録しています。
心託への資料請求は無料です。無料相談会を随時行っているので、不安なことやお悩みごとがある方は、ぜひご相談ください。
まとめ
高齢者の一人暮らし世帯が増え、老後も身寄りのない人が年々増加しています。
親戚はいてもほとんど連絡を取り合っていなかったり、兄弟姉妹がいてもお互い高齢だったり、もしものときのことを考えると心配になってしまいます。入院や通院、普段の買い物、さらには、認知症になって介護施設へ入所する必要が出てくるなど、私たちの将来にどんなことが起こるかわかりません。
そのような不安を感じているのであれば、まずは自治体の地域包括センターや社会福祉協議会などに相談してみましょう。また当社では、自治体や行政では対応できない、身寄りがない人でも安心できる、充実した身元保証サービス(心託)をご提供しています。無料資料請求やお問い合わせなど、お気軽にご相談ください。