死後事務委任契約とは「自分が亡くなった後の事務処理を第三者に委任する契約」です。
通常、葬儀や遺品整理などの死後事務は家族が行います。しかし、家族に負担をかけたくないと考える方や、おひとりさまの方が増えたことにより家族以外の第3者へ依頼する方が増加しています。
今回は、死後事務委任契約で委任することが多い内容をご紹介したうえで、死後事務委任契約を締結するメリットやデメリット、死後事務委任契約を検討するタイミングなどを解説します。
終活を始めるきっかけとして参考にしてみてください。
目次
死後事務委任契約を詳しく解説
人が亡くなると、葬儀の手配をはじめとして、役所や銀行、病院などでさまざまな手続きが必要になります。生前のうちに、これらの事務手続を第三者に依頼しておくのが死後事務委任契約です。
死後事務委任契約で、事務手続を依頼する人のことを委任者、手続を代行する人のことを受任者と言います。
自身の死後に親族へ迷惑をかけたくない方やおひとり様の方は、死後の事務手続に不安を抱えている方も多いでしょう。
死後事務委任契約は、こうした死後の不安を解消するための有効な手段の1つです。
近年は、自身が亡くなったあとのことを見越して行う活動である終活が注目を浴びています。
終活で自分が亡くなったあとのことを想像し、対策をしておくことは、今を自分らしく安心して生活するために重要なことです。
そんな中、亡くなったあとの財産の継承を遺言書で決めておけば、死後の心配がなくなり、安心して老後の生活を楽しめます。
続いて、死後事務委任契約で依頼する具体的な業務内容を4つ紹介します。
1:遺体の引き取り、親族・知人への連絡
人が亡くなって、まず初めにしなければならないことは、遺体の引き取りと親族・知人への連絡です。
おひとりさまの方や親族が遠方に住んでいる方は、自分が亡くなった事実を親族・知人に伝える手段もありません。死後事務委任契約で親族・知人への連絡を必須にしておけば、自分が亡くなった事実を伝えたい人に確実に伝えられます。
2:葬式や永代供養の手続き
葬式や永代供養の手続、遺骨の引き取りなども、身近に親族がいないと大変な作業です。
葬儀などの死後の手続きを滞りなく進めるには、葬儀業者や霊園などと密に連絡を取り合う必要があります。
亡くなる前に手続きを進める人を決めておかないと、残された親族に大きな負担を与えてしまう可能性もあるでしょう。
死後事務委任契約で手続きを依頼し、葬儀や永代供養にかかる費用も預けておけば、手続面でも費用面でも親族に迷惑をかける心配はありません。
3:費用の精算手続き
死後には、家賃や入院費などの費用の精算手続も必要です。死後事務委任契約では、費用の精算手続も依頼できます。
死後事務委任契約を締結する際には、受任者が費用を負担することがないように預託金を預けておくケースが多いです。
受託者は、預託金の中から、葬儀費用の支払いや各種費用の精算などを行います。 契約終了後に預託金が残っていた場合は、委託者の相続財産として取り扱われます。
4:居宅の清掃・家財整理
死後の居宅の清掃や家財整理などのいわゆる遺品整理も、負担が大きい作業です。
近年、遺品整理を行う負担を軽減するために生前整理が注目を浴びています。
生前整理と死後事務委任契約を併用しておけば、家族に遺品整理の負担をかける心配はなくなるでしょう。
死後事務委任契約を行うメリットとデメリット
自分の死後の心配を少なくできる死後事務委任契約ですが、メリット・デメリット共に存在します。 ここでは、死後事務委任契約のメリットとデメリットをそれぞれ説明します。
死後事務委任契約を行うメリット
自分が亡くなったときに、家族に負担をかけるのを心配している方は少なくありません。
死後事務委任契約を行うメリットとしては、次の4点を挙げられます。
死後事務委任契約を締結しておけば、死後の不安を解消し老後の生活を楽しめるようになります。それぞれのメリットの内容を詳しく見ていきましょう。
1:死後の不安を解消できる
年を重ねると、自分の死後に思うような身辺整理ができるか、家族に余計な迷惑をかけないかなど、不安に感じることが多くなります。
死後事務委任契約を締結しておくことで、自分の意思に沿った形で死後の身辺整理ができるため、今考えることでこの先の心配をせずに暮らせるようになります。
多くの不安を抱えていると老後の生活を楽しめなくなってしまうでしょう。死後事務委任契約の不安を1つでも解消しておくことは、老後生活を楽しむうえで必要なこととも言えます。
2:家族や親族に負担や迷惑をかけずに済む
死後事務委任契約では、家族や親族が行うことの多い死後の事務手続を第三者に依頼できます。
そのため、自分が亡くなっても家族や親族に負担や迷惑をかけずに済みます。
自分が亡くなったときに、ご家族に負担をかけるのを心配している方は少なくありません。
第三者へ死後の手続きを依頼していくことで、余計な心配をせずに生活できます。
3:おひとりさまの方でも死後の手続きを依頼できる
おひとりさまの方は、ご家族がいる方にも増して死後の手続きに不安を抱えている方が多いでしょう。死後事務委任契約は、おひとりさまの方にも有益な契約です。
死後事務委任契約で、死後に必要な手続きを1つ1つ決めておけば、おひとりさまの方でもご自身の意思を反映した死後の身辺整理ができます。
4:死後に必要な手続きの漏れがなくなる
人が亡くなったときに必要な手続きは非常に多いです。そのため、ご家族や親族が死後の事務手続きの対応をしても、対応漏れが生じるケースが多いです。
例えば 、本人しか把握していない銀行口座や有料の会員登録があると、対応の遅れにより口座を凍結されたり、会費が発生し続けたりしてしまいます。
死後事務委任契約で死後に必要な手続きを網羅しておくと、受任者が業務が手続きの対応を行うため、手続き漏れの心配はありません。
死後事務委任契約を行うデメリット
死後事務委任契約のデメリットは、委任内容によっては契約の有効性が問題になってしまう点です。
たとえば、遺品整理を委託した場合、遺品整理にともなう財産の処分を遺言ではなく死後事務委任契約で定めることの有効性が問題になります。
また、委任者より先に受任者が亡くなると、その時点で契約が終了してしまうケースもあります。
いずれのデメリットも、契約内容を精査すれば回避できるため、弁護士の助言を受けておくと安心です。
死後事務委任契約は、いつから検討し始めるべきか?
死後事務委任契約はいつから始めるのがベストなのかと、お悩みの方は少なくないでしょう。結論から言うと、考え始めたその時です。20代であろうと30代であろうと関係ありません。検討するのが遅すぎることはあっても、早すぎることはありません。
死後事務委任契約を締結しておくことで、自分が亡くなったときの整理の方法を決めておけるので、死後の心配をせずに安心して生活できるようになります。
残された家族にとっても、不慮の事態が起こったときに死後の手続きを行うのは精神的に負担が大きいです。死後の手続きをする人が決まっていれば、負担なく安心して手続きを進められます。
高齢者の方はもちろんのこと、若い方でも不慮の事態に備えて死後事務委任契約を締結しておくことをおすすめします。
死後事務委任契約の内容は、状況の変化に応じて変更することもできます。若い方でも、最初の契約から内容を完全に固める必要はないので、契約を検討してみてください。
死後事務委任契約の活動内容を紹介
ここでは、死後事務委任契約を締結し業務を終えるまでの活動内容を紹介します。活動内容の流れは、次のとおりです。
- 1:受託者と委任する業務の内容を決める
- 2:契約書を作成する
- 3:委託者の死後に受託者が業務を行う
- 4:相続人への報告・精算を行う
1:受託者と委任する業務の内容を決める
死後事務委任契約を締結するには、まずは業務を依頼する受託者を決めなければなりません。信頼できる知人がいない方は、専門家に報酬を支払って業務の依頼ができます。
受託者を決めたら、次に委任する業務の内容を決めます。死後事務委任契約を締結し、死後の身辺整理の不安を解消するには、死後に必要な事務手続きを漏れなく把握しておくことが重要です。
2:契約書を作成する
死後事務委任契約は口頭でも成立しますが、契約書がなければ適切に死後事務を行うことが難しくなります。
そのため、死後事務委任契約を締結する際には、契約書を必ず作成してください。
死後の業務をスムーズに行うには、契約書を公正証書で作成しておくことをおすすめします。契約内容の不安を解消したい場合、契約書作成時に専門家の助言を受けてください。契約書を作成する際に弁護士や司法書士など専門家の助言を受けることをおすすめします。
3:委託者の死後に受託者が業務を行う
委託者が亡くなった際には、受託者が死後事務委任契約にて定められた内容を誠実に行います。
委託者の意思に従って、漏れなく手続きを進めることが重要です。
4:相続人への報告・精算を行う
委任事務の終了時には、相続人や相続財産管理人に業務内容の報告を行い、預託金の余りがあれば返還します。
委託者の死後に受託者が行う業務は、複雑なものもあるため、専門家のサポートを受けられるようにしておくと安心です。
死後事務委任契約をトラブルなく円滑に行うために重要なこと
死後事務委任契約をしておくと、将来の心配なく安心して生活できるようになります。
本人の問題だけでなく、家族の負担も解消できるのは死後事務委任契約の大きなメリットです。
死後事務委任契約をトラブルなく円滑に行うには、有効な内容の契約書を公正証書の形で作成しておくことが重要です。内容の有効性を疑われるような契約書を作成してしまうと、せっかくの死後事務委任契約が無駄になってしまう可能性すらあります。
有効な契約書を作成するためには、終活事業を展開している会社のサポートを受けると良いでしょう。終活に関する悩みは、幅広いため、まとめて任せることができる会社であれば窓口を1つに集約させることができます。
当社では、死後事務委任契約を含む終活全般のサポートを行っています。死後事務委任契約を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
監修
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1997年 東洋大学法学部卒業
大学在学中から司法書士試験の勉強をしつつ、1999年株式会社サイゼリヤに入社
7年間勤務した後、再度司法書士を目指すため2006年退社
2007年 司法書士試験合格
2008年 司法書士登録
試験合格後は、都内の司法書士事務所や法律事務所にて勤務
2021年 「落合司法書士事務所」開設
2021年 一般社団法人終活協議会理事就任
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